我が家の狭い庭に生きる木々や草花の春を呼ぶ声が、ホンのかすかに耳に届き始める中で、期待に反して上手に実りの冬を迎え得なかったものもある。
背丈50㎝ばかりの「鉢植えピラカンサス」
5月の花の時期に、小さいながら樹体を隠すほどまっ白い花を無数に付けた。
まるで純白の花嫁衣装をまとった様な艶姿は、自慢できるほどの見事さであった。
あれだけ花を付け、目を楽しませてくれたのだから、正月を迎える頃には、熟した小粒の実が木も葉っぱも覆い隠すほどに実ってくれるものと期待した。
実際、花が終わってしばらくは間違いなく、青い小さな実が密集していた。
しかし、秋の気配がたつころから虫にやられたのか、実の数が多すぎて風通しが悪く窒息でもしたのか、大半が真っ黒いかたまりになって枯れ落ちてしまった。すでに消毒も効かなかった。
花の数に安心しすぎて、格別注意を払わなくても成長するだろう…という甘い見通しが仇になった。
何もかも全てがうまくいくほど世の中甘くないよ…ってことも充分承知してはいるはずなのに、つい油断した。
そう言えば、今日はセンター試験が行われていたことを何故かふと思い出した。
試験に合格、順調に志望校に入学。ここまでが花の時期か。
いくら見事に綺麗な花を咲かせても、最後に実となって熟すまでには色んな障害や関門があることを、ピラカンサスが教えてくれた。
せっかく見事に咲いた花、雨にも負けず風にも負けず、しっかり熟してみたいもの。
静かに春を待つ景色の中に、受験生の必死な姿と、黄色の実が少し残った我が家のピラカンサスが重なった。
( 写真: 左側、今の状態。右側、5月の花に覆われたピラカンサス )