オーディオとクラシック

昔からのクラシックファンが最近のオーディオに取り組んでみます。

心に残るレコード Ⅱ

2018-08-25 21:22:55 | オーディオと音楽
 心に残る一枚のレコード (Ⅱ)

 6、ベートーヴェン: 弦楽四重奏曲 第15番 作品132
            ヴェーグ弦楽四重奏団  LPステレオ
 室内楽曲では、またベートーヴェンになってしまうが、ヴェーグ弦楽四重奏団の演奏による、中期、後期の弦楽四重奏曲をあげる。ここでは第15番をあげたが、後期のどの曲でも良く、また中期のラズモスキー第一番や第二番でも良い。大学時代にNHKの放送で聴いた、ヴェーグ四重奏団の、これらの曲がとても良かったと印象に残っている。そのモノーラルのレコードを買いたいと思っていて果たせず、ステレオになって再録音されたので、ようやく手に入れることが出来た。昔の演奏とは、少し変わっているようにも思うが止むを得ないことだろう。
 ヴァイオリニストのヴェーグが主宰する、この四重奏団の演奏の良さは、旋律を歌い過ぎないことにあるといえよう。厳しいが美しい演奏であると思う。人によっては、いささか物足りないと思うであろう程、たんたんと曲が流れていく。第15番の第三楽章、病癒えたる人の神への感謝と副題のある、この楽章も、旋律を確実に示すが、決して歌い過ぎず、厳しいが心にしみいってくる。
 今、ヴェーグは、モーツァルトの生地、ザルツブルグの音楽院の教授をつとめ、同時に合奏団の指揮をしている。先日、名古屋へ来演したので、懐かしく思い聴きに行ったら、ヴェーグは小柄で腰の曲がった、おじいさんになっていた。しかし、指揮を始めると、さぅそうとしたモーツァルトの音楽になっているのに驚いた。最近録音したモーツァルトのセレナードなどを、CDで聴いても、虚飾を廃した、すっきりした演奏で好ましい。

 7、ヘンデル: メサイア(救世主)  
             キャスリーン・バトル(ソプラノ) A・デーヴィス指揮
             トロント交響楽団  CD
 宗教音楽では、メサイアを選ぶ。この曲は今では古楽器と小人数の合唱で演奏されることが多くなっているようで、それも確かに良いけれど、大編成での演奏も聞き慣れた感じで、私には好ましく思える。長いメサイア全曲の中で、私が好きなのは、有名なハレルヤコーラスの後、第三部の初めに歌われるソプラノのアリア、「我れ知る我をあがなうものは生く」である。この曲は、昔、イギリス映画「育ち行く年、(ザ・グリーンイアーズ)」のテーマとして使われていた。丁度「オーケストラの少女」でのモーツァルトのアレルヤのように。よほどの映画通でも、もう覚えていないのではないかと思うが、これは医学を志す青年と声楽を学ぶ少女との恋物語りで、少女が抜擢されて歌うのが、このアリアである。
 このCDで歌っているのは、テレビでニッカのコマーシャルに使われた、ヘンデルのオンブラ・マイ・フで有名になった、キャスリーン・バトルで、可憐な面を残しつつ、美しく歌っている。
 オンブラ・マイ・フという曲にも思い出があって、SP時代にチェロの独奏曲としてよく聴いていた、ラールゴと同じ曲であった。このSPレコードは、まだ何処かにしまってある筈である。

 8、プッチーニ: ボエーム
        レナータ・テバルディ(ソプラノ) セラフィン指揮 
             ローマ聖チェチーリア音学院オーケストラ  LPステレオ 
オペラで最も印象深く思い出すのが、イタリア歌劇団来日公演の、ヴェルディ作曲「オテロ」である。開幕の嵐の場面と、それに続くデル・モナコの歌うオテロのアリアは凄かった。そのデル・モナコの歌っているレコードもあるが、あの壮絶な響きを家庭で再現するのは、とうてい無理なことである。
 レコードではもっとしっとりと聴きたいので、プッチーニ作曲のボエームを選んだ。それも主役のミミを、レナータ・テバルディが歌っているレコードである。テバルディは当時マリア・カラスと並んで、ソプラノの人気を二分した名歌手だが、舞台上ではカラスの方に軍配が上がっているかに聞いている。しかし舞台を見たことの無い私は、どちらかといえば、テバルディの方が好きだ。また最近世評の高いミラノ・スカラ座の来日公演、クライバー指揮の舞台も見たが、私には今一つしっくり来なかった。テバルディで聴く、第四幕のミミが死ぬ場面など、しんみりと聴いていると、センチメンタルかもしれないが、涙が出てくるほど素敵だと思う。

 9、プロコフィエフ: ヴァイオリン協奏曲第1番
   シゲッティ(ヴァイオリン) メンゲス指揮 ロンドン交響楽団  LP
 ヴァイオリン協奏曲では、メニューインの弾いたベートーヴェンと、シゲッティの弾いたプロコフィエフの第一番の実演が思い出される。どちらもレコードが出ているが、一枚となるとシゲッティを選ぼうか。演奏会の直前に亡くなった、プロコフィエフをしのんで演奏された、第二楽章は鋭く激しく、かつ美しく、今でも語り草になっている。ステレオになって録音された、このレコードではシゲッティのテクニックはやや衰えをみせ、音もやせてきているが、その情熱は年齢を感じさせない。
 プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲は二曲あるが、シゲッティが弾いているのは、この1番だけで、2番は弾かなかったという。第2番はもう一人の名ヴァイオリニスト、ハイフェッツが弾いていて、ハイフェッツの方は1番は弾かなかったという。なにか面白い話である。
 最近、若い人達のレコードが次々に出てきたが、この曲を何の苦もなく美しく演奏している。もう古典になったのだなあと感じながら、新しいレコードも楽しんでいる。
 
 10、ラヴェル: クープランの墓
         ピエール・ブーレーズ指揮  ニューヨーク・フィルハーモニック
                       LPステレオ
 数多い管弦楽曲の中からラヴェルのこの曲を選んだ理由は何だろうか。好きなモーツァルトのセレナードの数曲は室内楽に近いし、バルトークの「管弦楽のための協奏曲」は現代音楽に入るだろう。ワーグナーはあまり好きでないし、ヨハン・シュトラウスでは軽すぎる。そうこうしているうちに、ふっと思い出したのがこの曲。本来ピアノ独奏曲としてかかれた曲であるが、作曲家自身によりオーケストラ曲に編曲されていて、そのオーケストラ版の方である。指揮者のブーレーズは現代作曲家として有名で、理知的に、むしろ冷たい位にきちんと演奏する。ラヴェルのこの曲も、細かい音の動きが微妙に表現されていて美しいと思う。特に第三曲のメヌエットの出だしなど何とも言えず美しい。最新のデュトワ指揮のCDでは聴えて来ない、絶妙のニュアンスを聴くことが出来る。
 以上で十枚になってしまった。番外として現代音楽の一枚を付け加えたい。

 番外、オリヴィエ・メシアン: アッシジの聖フランチェスコ
                小沢征爾 指揮  パリオペラ  CD
 それはフランスの現代作曲家の長老、メシアンの大作のオペラ、「アッシジの聖フランチェスカ」である。この曲はオペラとは言うものの、殆どキリスト教の宗教音楽である。歌詞は訳を読んでいても殆ど分からないが、ところどころにとても綺麗な旋律が出てくる。とくに第二幕、第五景の「音楽を奏でる天使」の中頃に、オンド・マルトォノという電子楽器のような音の出る楽器で奏される旋律が美しい。天使の奏でる美しい音を聴いて、フランチェスコが失神するという場面で聞こえてくる。まるでヒューウと宇宙から聞こえてくるような感じがして、私は大好きだ。続く第六景「鳥たちへの説教」ではメシアンが全世界をあるいて、採譜した鳥の声を基にした、小鳥たちが歌う。この採譜した鳥たちの声は、彼の全ての音楽の基礎として使われているという。
 このオペラはCDで四枚にもなる長い曲で、とても全部は聴き通せないが、時々取り出して、所々を聴いてみている。メシアンの他の曲も同様で、綺麗な旋律を探しては聴いてみると、なかなか面白いと思う。
 音楽は、絵と違って、ちょっと見てみるというわけにはいかず、どなたにもその良さをお示しするということが出来ないのが誠に残念である。
 長く聴いていると、いろいろな音楽に出会って楽しかったし、良い経験をさせてもらったと思う。まだまだ長くこの楽しみは続けられることと思っている。    





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