『そぞろ歩き韓国』から『四季折々』に 

東京近郊を散歩した折々の写真とたまに俳句。

読書感想337  ①琥珀の夏 ②自白 ③磯田道史と日本史を語ろう ④黒幕の日本史

2024-02-24 00:00:58 | 小説(日本)

黒幕の日本史の画像磯田道史と日本史を語ろうの画像自白 刑事・土門功太朗の画像Amazon.co.jp: 琥珀の夏 (文春文庫 つ 18-7) : 辻村 深月: 本の画像

①琥珀の夏                

 面白さ:☆☆☆☆

 著者: 辻村深月   生年: 1980年   出身地: 山梨県  

   出版年: 2021年  出版社: (株)文藝春秋

 コメント:40歳になる弁護士の近藤法子は「ミライの学校」の跡地から発見された女児の白骨死体が自分の孫ではないかと心配する吉住夫妻の依頼をうけて、東京にある「ミライの学校」の事務所に安否確認に訪れる。「ミライの学校」は子供の自主性とコミュニケーション能力を育てることを目的にして、子供を親から離して集団で生活している施設だった。静岡県の山の中にあった「ミライの学校」は外部の小学生を夏休みの1週間だけ招待した。法子も4年生から6年生まで3年間参加し、そこで幼児の時から集団生活しているミカに会い、友達になった。法子とミカが1章ずつ交互に語って「ミライの学校」と事件の真相があかされていく展開になっている。理想を掲げながら子供の心を無視する異常な雰囲気が立ち込める「ミライの学校」、親はいなくても子供は育つということなのか。疑似宗教団体のような組織なので、現実の宗教団体の子供達を思い浮かべてしまう。

②自白 ー刑事・土門功太朗

 面白さ:☆☆☆☆

 著者: 乃南アサ     生年: 1960年  出身地: 東京都

 出版年: 2010年     出版社: (株)文藝春秋

 コメント:4つの短編からなっている。土門刑事が解決する事件。犯人の異常性が際立つのが「渋うちわ」。

 1.アメリカ淵

  桧原村の秋川渓谷で発見された女性の死体。横田基地の米軍の兵士もよくキャンプに来る所なので、アメリカ淵と呼ばれている。

 2.渋うちわ

  歌舞伎町で60歳ぐらいのちんちくりんの小母さんに儲け話を持ち掛けられた風俗店に勤める若い男。

 3.また逢う日まで

  窃盗容疑者の男女を追う警察。二人は子供を産んで連れて歩いていることがわかる。

 4.どんぶり捜査

  タクシー強盗が連続して起こる。

③磯田道史と日本史を語ろう

 面白さ: ☆☆☆☆

 著者: 磯田道史   生年: 1970年    出身地: 岡山県

 出版年: 2024年         出版社: (株)文藝春秋  文春新書

 コメント:様々なテーマについて14人との対談になっている。

 1.阿川佐和子   「磯田道史」ができるまで

 2.半藤一利    日本史のリーダーを採点する

 3.篠田謙一/斎藤成也  日本人の不思議な起源

 4.堺屋太一/小和田哲男/本郷和人 信長はなぜ時代を変えられたのか?

     5.  酒井シズ   戦国武将の養生訓

 6.徳川家広  徳川家康を暴く

 7.浅田次郎  幕末最強の刺客を語る

 8.杏  歴女もはまる! 幕末のヒーローたち

 9.中村彰彦  「竜馬斬殺」の謎を解く

 10.養老孟司  脳化社会は江戸から始まった

 11.出口治明  鎖国か開国か? グローバリズムと日本の選択

 12.半藤一利  幕末からたどる昭和史のすすめ

 どれも面白いが、「3.日本人の不思議な起源」の中で骨で徳川の正室、側室25人ぐらいを調べた時に、側室の骨格が頑丈ですごく立派なのに対して、正室は華奢で顎も細いという部分、美人かどうかではなく、丈夫さや健康かどうかを基準にして選ばれているとの記述だった。母系をたどることのできるミトコンドリア遺伝子は日本ではアジアにある20以上の系統が存在している。ヨーロッパでは10系統ぐらいなので、日本の多様性がわかるという。また男系の遺伝子をたどることのできるY染色体も多様に残っている。だから騎馬民族のような征服王朝は来なかったと結論付けている。チンギス・ハーン系のY染色体を持つ人が世界中に1600万人いるという研究や、南米ではスペインや西ユーラシア由来のY染色体がほとんどだという研究がある。このように征服者の遺伝子が浸透するのに対して、日本は純血主義で身内、いとこ結婚が多く多様性が保持されてきたそうだ。古代史は推測につぐ推測で科学的な推論がほとんどできない分野だが、ここでは遺伝子を使って科学的に解明されていく爽快さを感じる。

④黒幕の日本史

 面白さ: ☆☆☆☆

 著者: 本郷和人   生年: 1960年    出身地: 東京都

 出版年: 2023年     出版社: (株)文藝春秋  文春新書

 コメント:「ポスト(地位)と実権が必ずしも一致しない。」これは日本の歴史の大きな特徴で、地位と実権が別々である状態は黒幕的な存在を生みやすいと著者は述べている。ここでは「ウラの存在でありながらオモテを動かした人物」だけでなく、「地位と実権、実績に大きなズレのある人」、「重要な役割を果たしたが目立たない存在」を取り上げている。

1.宇多天皇  オモテがウラになる時代

2.信西  世襲の壁が生んだ黒幕

3.北条政子  女人入眼の日本国

4.中原親能  下級貴族、鎌倉へ行く

5.極楽寺重時  京都に学んだ幕府のご意見番

6.海住山長房  後鳥羽挙兵に反対した実務貴族

7.平頼綱  肥大化した側近エリートの末路

8.北畠親房  正統を追求した「黒幕」

9.三宝院賢俊  「錦の御旗」を持ち帰った尊氏の密使

10.細川頼之  室町王権の設計者

11.三宝院満済  将軍への意見を突き返した「黒衣の宰相」

12.黒田官兵衛  「軍師官兵衛」といわれるが・・・

13.千利休  茶の湯と政治

14.高山右近  前田家を救った「意外な黒幕」

15.伊奈忠次  家康から過小評価された民政家

終章。西郷隆盛  「維新の英雄」のウラの顔

知らなかったことが多く面白かった。「5.極楽寺重時」北条泰時の弟で7年間京都の六波羅探題を務めた重時は、法然の浄土宗に帰依し撫民の思想を持つに至った。東国の武士たちは在地地主であり、領民は視野に入っていなかった。もとより貴族たちにとっても地方は収奪の対象でしかなかった。承久の乱ののち朝廷は統治の基を「徳」、人々へのサービスに見出した。裁判を盛んにおこなって、人々のトラブルを解決することに努めた。その京都の影響を受け、撫民の思想を鎌倉幕府に持ち込んだのが重時だ。子供たちに残した家訓の一つ。「百姓をいたわれ。徳もあり、罪もあさし」「15.伊奈忠次」は家康の命で江戸湾に注いでいた利根川を鹿島灘に流れ込む大工事をした人。そして農民に対して様々な勧業政策を行った。蚕を飼うこと、炭を焼くこと、塩を作ることを奨励し、方法を教えた。麻、楮の種なども与えた。農民の暮らしを豊かに楽なものにしようとした。撫民の思想を実現した最初の民政家だという。


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