読書感想129 インディアナ、インディアナ
著者 レアード・ハント
生年 1968年
国籍 アメリカ合衆国
初出版年 2005年
邦訳出版年 2006年
訳者 柴田元幸
感想
ノアという男がインディアナ州の農場に住んでいる。これはノアの現在の生活と、亡き父母や昔の回想、そして妻だったオーバルからの手紙で構成されている。先祖代々の農場でノアは自然や動物と触れ合っている。いろいろな先祖の逸話や隠されたものも伝えられている。ノアはいわゆる超能力の持ち主で警察の犯罪捜査に協力したりしていたが、放火した妻のオーバルを精神病院から解放してくれないので、警察への捜査協力もやめてしまう。自分も自宅の納屋に放火してオーバルの精神病院に送られたいと願うが、無視され保険金が支払われる。大事な人々がノアの心の中だけに存在する日常が語られて行く。
ただ寂しい物語。過去と現在が渾然とした世界を作り出している。
本書のあとがきによれば、著者はシンガポールで生まれて、インディアナやソルボンヌで学び、国連の報道官として日本、フランス、イギリスなど各国を転々とし、現在はデンヴァー大学で教えながら創作しているという。
エトランゼとしての体験がノアの心理に反映されているような印象を受ける。楽しくもわくわくもしないが、自然の癒しを感じる小説である。肉親が亡くなった後に読めば共感するかもしれない。