
著者 冲方丁<o:p></o:p>
生年 岐阜県 <o:p></o:p>
初版 2009年<o:p></o:p>
出版社 角川書店<o:p></o:p>
本作の受賞歴 第31回吉川英治文学新人賞<o:p></o:p>
第7回本屋大賞<o:p></o:p>
第7回北東文藝賞<o:p></o:p>
第4回船橋聖一文学賞<o:p></o:p>
2011年大学読書人大賞<o:p></o:p>
映画化 2012年9月15日封切り<o:p></o:p>
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気ままに評価(5点満点)<o:p></o:p>
読みやすさ : ☆☆☆<o:p></o:p>
お勉強度 : ☆☆☆☆<o:p></o:p>
わくわく度 : ☆☆☆☆<o:p></o:p>
ドキドキ度 : ☆☆ <o:p></o:p>
ページ数の多さ度 : ☆☆☆☆ <o:p></o:p>
臨場度 : ☆☆☆<o:p></o:p>
登場人物の魅力度 : ☆☆☆☆<o:p></o:p>
ハッピーエンド度 : ☆☆☆☆ <o:p></o:p>
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感想<o:p></o:p>
江戸時代前期に天文観測に基いた大和暦を作り、中国から800年前に導入し実態とのずれが生じていた宣明暦からの改暦を行った渋川春海の物語である。<o:p></o:p>
江戸時代に身分や職種を越えた同好の人々が集まる趣味に囲碁や算術、天文があった。そうした知的な熱気が中国の暦ではなく、日本の経度に合わせた正確な大和暦を生み出す土台になっている。知的な熱気を表す場面は算術(数学)の問題を書いた絵馬がおびただしく奉納されているところに見られる。腕に覚えのある者は答えを絵馬につけ、それが正しければ出題者から一筆絵馬に明察と記入される。互いに切磋琢磨して算術の問題を考え答えを求めていく。ただ好きだから算術に熱中しているのである。<o:p></o:p>
また江戸時代の将軍の中でも家光と綱吉というド派手な将軍に挟まれて、影の薄い4代将軍徳川家綱の時代が名宰相保科正之を通してくっきり輪郭を持ってくる。軍事都市江戸から民政都市江戸へ、戦時体制から平時体制への転換である。明暦の大火で焼けた江戸城の天守閣を戦国の世は終わったとして再建せず、街づくりも敵の侵入に備えるよりも、火事の延焼を防ぐための広小路や逃げやすい道を整備した。そして江戸の水不足解消のために玉川上水を羽村から四谷、京橋、麻布と江戸中に水路を引いたのである。<o:p></o:p>
この本の中では保科正之を革新の人と評価している。将軍を補佐したというだけで保守の人と思いがちだったが、新しいことを始めてはそれに相応しい能力のある人を探し出して登用している。改暦も保科正之から出た案であった。<o:p></o:p>
関孝和も登場し算術の天才ぶりを発揮する。江戸時代初期の理系のスターが活躍する楽しい物語である。<o:p></o:p>