花紅柳緑~院長のブログ

京都府京田辺市、谷村医院の院長です。 日常診療を通じて感じたこと、四季折々の健康情報、趣味の活動を御報告いたします。

芍薬(シャクヤク)

2024-04-26 | 漢方の世界

廿一 芍薬 瑠紅草│「四季の花」夏之部・壱, 芸艸堂, 明治41年

「芍薬」(シャクヤク)は、同名のボタン科、ボタン属多年草の芍薬、学名 Paeonia lactiflora Pall.の根から得られる生薬である。「赤芍」(セキシャク)と「白芍」(ビヤクシャク)に中国では区別され、日本市場品は「白芍」である。「赤芍」の基原植物は芍薬(P. lactiflora Pall)の他、川赤芍(P. veitchii Lynch.)などがあり、根の外皮を付けたまま乾燥するのに対し、「白芍」は外皮を取り去り蒸乾する。
 清熱薬に分類される「赤芍」の薬性は苦、微寒、帰経は肝経、効能は清熱涼血、散瘀止痛である。「白芍」は養血薬に分類され、薬性は苦、酸、微寒、帰経は肝・脾経、効能は養血斂陰、柔肝止痛、平抑肝陽、止汗である。効能の違いは白補赤瀉、白收赤散(「白芍」は補益に働き、陰血・陰液を保ち収める。「赤芍」は通瀉に働き、血熱・血瘀・肝火を冷まし散じる。)と称される。配合される方剤には、四物湯、四逆散、桂枝湯、芍薬甘草湯、小建中湯など多数がある。
 芍薬の花期は5~6月で一重咲や八重咲、花色も濃紅、紅から白色など多様である。「芍薬」は夏(初夏)の季語で、異名は貎佳草(かほよぐさ)、花の宰相である。ちなみに顔佳花(かほよばな)は燕子花・杜若(カキツバタ)の別名である。

 芍薬に帋魚(しみ)うち払ふ窓の前   新花摘 与謝蕪村

参考資料:
三橋博監修:原色牧野和漢薬草大圖鑑, 北隆館, 1988
南京中医薬大学編著:「中薬大辞典 上(第二版)」, 上海科学技術出版社, 2006
御影雅幸, 小野直美:赤芍と白芍に関する史的考察, 日東医誌:60(4), p419-428, 2009





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