花紅柳緑~院長のブログ

京都府京田辺市、谷村医院の院長です。 日常診療を通じて感じたこと、四季折々の健康情報、趣味の活動を御報告いたします。

瞿麦(クバク)│撫子(ナデシコ)

2022-05-24 | 漢方の世界

瞿麦ノ一首│幸野楳嶺, 幸野西湖画:「草花百種」三, 芸艸堂, 明治34年

「瞿麦」はナデシコ科、ナデシコ属の多年草、カワラナデシコ(河原撫子)、学名Dianthus superbus L. var. longicalycinus (Maxim.)Kitam.、エゾカワラナデシコ(蝦夷河原撫子)、学名D. superbus L. var. superbus の全草から得られる生薬である。利水滲湿薬に属し、薬性は苦、寒、帰経は心経、肝経、小腸経、膀胱経で、効能は利小便、清湿熱、活血通経(利尿を促進し湿熱を除き、瘀血を散じて経絡を通じさせる。)である。下焦虚寒、妊婦は服用禁である。方剤例には、瞿麦散、栝楼瞿麦丸、八正散などがある。
 カワラナデシコの花期は6~9月で、枝分かれした茎の頂端に淡紅色の花を咲かせる。7~9月に結実する黒色種子から得られる生薬は「瞿麦子」である。
  
   庭中の花を見て作る歌一首 幷せて短歌
大君の 遠の朝廷(みかど)と 任(ま)きたまふ 官(つかさ)のまにま み雪降る 越(こし)に下り来 あらたまの 年の五年 敷𣑥(しきたへ)の 手枕まかず 紐解かず 丸寝をすれば いぶせみと 心なぐさに なでしこを やどに蒔き生ほし 夏の野に さ百合引き植ゑて 咲く花を 出で見るごとに なでしこが その花妻に さ百合花 ゆりも逢はむと 慰むる 心しなくは 天離る 鄙に一日(ひとひ)も あるべくもあれや

   反歌二首(一首略)
なでしこが 花見るごとに 娘子らが 笑まひのにほひ 思ほゆるかも
     万葉集・巻十八   大伴家持




最新の画像もっと見る