半夏生は、この時期の茶花の花材として用いられることが多い、涼しげな風情の草花である。遥か昔に瓢亭での夜の懐石で、雨に濡れた路地で白く揺れていた半夏生の名前を初めて知った。夏至から11日目の半夏生の頃(平成27年は7月2日)、下部の葉は緑色のままで上部の葉が2、3枚白く変わり、別名「片白草(かたしろくさ)」、また半分だけ化粧したかのようであるので「半化粧」とも呼ばれる。
どくだみ科ハンゲショウ属の多年草で、学名はSaururus chinensis (Lour.) Baill.である。半夏生の中国名は「三白草」で、地上部分の全草が生薬「三白草(さんぱくそう)」となる。薬性は寒、薬味は甘、辛、帰経は脾、腎、胆、膀胱経である。「十薬(じゅうやく)」や「魚腥草(ぎょせいそう)」の名前で知られる、どくだみ科ドクダミ属のドクダミと効能は似ていて、清熱利尿、解毒消腫(熱毒を冷まして利尿し、熱毒による腫れ除き排膿する)の働きを持ち、尿路感染や皮膚湿疹に有効とされている。
いつまでも明るき野山半夏生 草間時彦