花紅柳緑~院長のブログ

京都府京田辺市、谷村医院の院長です。 日常診療を通じて感じたこと、四季折々の健康情報、趣味の活動を御報告いたします。

秋の苦瓜(ゴーヤ)

2018-09-20 | 日記・エッセイ


今年は家庭菜園でゴーヤを栽培した。旬の野菜とは申せ、昨年の胡瓜と同様に毎日せっせと食べていると家族全員がもはや食傷気味である。先日の台風21号の襲来にも吹き飛ばされることなく、いまだに四方八方に蔓を伸ばし続けて小さな黄色い花を咲かせている。それでもさすがに九月も半ばをすぎると、最盛期よりも遥かに小さいままで実は成長を止める。大きな実を結ぶ勢いを失ったものはきっぱりと取り払い、新たな収穫に向けて別の種を植えるべきである。と思う一方、小さいながらもゴーヤの基本型を外さない実が寄る辺なく風に揺れるのを眺めていると、なんとも哀れになり片付けようという気が失せる。野菜の種類が異なる今年もまた、伐採するかしないかと、代り映えのしない恒例行事の葛藤を始めている。

ゴーヤは苦瓜(ku3gua1)、性は寒、味は苦、帰経は心、脾、肺経である。効能は祛暑滌熱,明目,解毒とされ、対象となる病気や病態は暑熱煩渇、消渇、赤眼疼痛,痢疾,瘡瘍腫毒である。すなわち暑熱を取り除き咽喉の渇きを改善し、眼の充血やかすみ、疼痛などの不調を取り除き、下痢を止め、熱毒のある腫れ物を消退させるなどの働きがある。なお寒性とともに、能泄の作用がある苦味で、旬の野菜であっても脾胃虚寒の方は注意が必要である。外界の暑熱に加えて冷飲食の機会が増える夏は、元来、消化機能が低下する季節であり、多食によりさらに胃腸の陽気を損なって下痢や腹痛などのトラブルを来たす恐れがあるからである。

ところで冒頭に家族全員と書いたが、その内の一人ならぬ一匹だけは相も変わらずゴーヤが大好物である。この春に十歳を迎えた当家の柴犬まるは、厳しい酷暑のこの夏から冷房の効いた奧の居間、食堂で暮らしている。彼がこれまで近寄ることが出来なかった食卓にゴーヤの一品が載れば、高鼻を使い俺にもくれとばかりにその横でちんとお座りする。人生(犬生)における苦き思い出を勲章として弛まず怯まず勇往邁進せん。彼もまた年を重ねてそういう苦味を知る漢(おとこ)になったのかと感慨に浸っていたら、豈図らんや。今年初めて知ったが、犬は何故かゴーヤが好きらしい。





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