椿土鈴・東大寺
邵伯梵行寺山茶 蘇軾
山茶相對阿誰栽、細雨無人我獨來。説似與君君不會、爛紅如火雪中開。
(巻二十四│「蘇軾詩集合注 三」, p.1229)
山茶相対阿誰か栽うる 細雨人無く我獨り來る
説似して君に與ふるも君會ず 爛紅火の如く雪中に開く
山茶花が二樹相對して在るが是は阿誰が栽ゑたのである。細雨霏霏たる中人は居らない我獨り訪來する、説示して君に與ふるも君は恐らくは會(え)せぬであろう。山茶花が爛紅火の如く燃えて而も雪中に開くの實相を。
(巻二十四 古今禮詩│「蘇東坡全詩集」第三巻, p.697)
つばきはもと冬の花なり。爛紅火の如く雪中に開く、と東坡の云ひけんはまことの風情なるべし。はやくより咲くもあれど、春に至りて美しく咲きこぼるゝを多しとす。(後略)
(幸田露伴著「花のいろいろ」山茶花│「日本の名随筆1」, p.228)
参考資料:
蘇軾著, 馮応瑠輯注, 黄任軻・朱懐春校點:「蘇軾詩集合注 三」, 上海古籍, 2009
蘇軾著, 岩垂憲徳・久保 天随・釈清潭註解:「蘇東坡全詩集 第三巻」, 日本図書, 1978
宇野千代編:「日本の名随筆1」, 作品社, 2001