切花延命剤を用いた生け花の推移を述べた《紅葉と楓をたずねて│其の九・花の命を見つめる》(2017/9/17)に続く、花の”望診“第二段である。この秋、鳥兜(とりかぶと)、竜胆(りんどう)、紫苑(しおん)と紫色の花々を徹底的に生ける機会を得た。家でも流派の華展においても必ず切花延命剤を用いてきたが、花の姿かたちは衰えないまま、花弁の色が次第に深紫から薄紫に褪せてくることに気付いた。後から咲いた蕾の花弁は、当初から花開いていたものよりさらに一段と淡い紫色を見せている。もっとも切花延命剤を用いたからこそ1週間以上も後の花を見届けることが出来た訳だが、紫色以外の花においては左程退色が見られない。
紫は古来、高貴な色である。そして人の内なる紫なるものも移ろいやすく、何時しかあるかなしかの色合いに変わりゆく。