「真山水之雲气、四時不同:春融冶、夏蓊郁、秋疏薄,冬黯淡。」
(張瓊元編「林泉高致」, p36, 黄山書社, 2016)
真の山水の雲気は、四時(四季)同じからず。春は融冶(ゆうや;穏やかで和やかなさま)、夏は蓊鬱(おううつ;草木が盛んに繁るさま)、秋は疏薄(そはく;淡々と稀薄なさま)、冬は黯淡(あんたん;薄暗いさま)。
「真山水之烟嵐,四時不同:春山澹冶而如笑,夏山蒼翠而如滴,秋山明浄而如粧,冬山惨淡而如睡。」(同, p36)
真の山水の烟嵐(えんらん;山中にかかる靄)は、四時同じからず。春山は澹冶(たんや;simple and elegant)にして笑うが如く、夏山は蒼翠(そうすい;blue-green、verdant)にして滴るが如く、秋山は明浄(めいじょう;pure)にして粧うが如く、冬山は惨淡(さんたん;gloomy)として眠るが如く。
目に青葉の麗しい季節になった。上記は中国北宋の郭熙の山水画論集『林泉高致』の一節である。季語の「山笑う」(春)、「山滴る」(夏)、「山粧ふ」(秋)、「山眠る」(冬)の語源となる表現を見出すことができる。郭熙は「山有三遠」で始まる山水画の構図法「三遠(高遠、深遠、平遠)」を提唱した山水画家である。
万緑や狐狸の山浅く 鈴木真砂女
(平成十年│「句集 紫木蓮」,p233, 角川書店, 1998)