花紅柳緑~院長のブログ

京都府京田辺市、谷村医院の院長です。 日常診療を通じて感じたこと、四季折々の健康情報、趣味の活動を御報告いたします。

野生は乱調にあり

2015-04-15 | 日記・エッセイ


またもや飼い犬まるである。4月15日、お蔭様で無事に7歳の誕生日を迎えることができた。人間であれば44歳で男盛りである。昨年の事であるが、散歩の途中で道の脇の草むらを鼻でごそごそやっていたかと思うと、鳥のから揚げがささった串を咥えていたことがあった。駄目と厳命しても、頑として口に咥えたまま離さない。とりあえず家族にリードを預けたまま、大好きなジャーキーを急いで家に取りに帰った。それで気を引いて口を開けさせようという算段である。ところがジャーキーを見せても何のその、咥えたままでこちらを睨んでいる。誤魔化して俺から取り上げる腹かという抗議である。

元々、外で遊んだ後に家の中の寝床に入りたいと思った時も、閉まっている勝手口のドアの外で誰かが気づいてくれるまでじっと待っているという、今の世には珍しく、自己主張というものをしない犬である。食にも淡白で、食べている最中に食器に手をいれてかき回そうが全く平気である。普段は口に咥えたジャーキーを取り上げても何ら抵抗なく、どうかしましたか、また僕に戻してくれますかと言わんばかりに、座り直してこちらの顔を伺っている。受け身で与えられたものよりも、自らの才覚でゲットしたものの方がはるかに大事なのだろう。柴犬は昔は猟犬であったと聞いたが、日本の野山を駆け巡った先祖の血が騒ぐのであろうか。しかし猟場で主人の命令を無視して、獲物を僕のものだと咥えて離さないというのであれば、少なくとも猟犬としての適性は乏しいと見た。

道端でしばらく睨み合っていたのだが、結局、咥えたままリードを引いて家に連れて帰るはめになった。さてどうしたものかと思案していると、うまい具合にぽろりと落っことしてくれた。すかさずこの機を逃さずリードを引いて引き離し、落ちたから揚げを無事に回収した。何処へ行っちゃったのかと、彼はしばらくうろうろと地面を嗅ぎ回っている。改めてジャーキーを差し出すと、今度は喜んで食べだした。その後は憑き物が落ちた様に、すっかり落ち着いて元の穏やかなまるに戻った。何時までもぐじぐじと後を引かないところも、お互い性が合っている主従なのである。