ヤマトタケルの夢 

―三代目市川猿之助丈の創る世界との邂逅―
★歌舞伎・スーパー歌舞伎・その他の舞台★

本日のヤマトタケル6

2005-05-01 23:11:14 | ヤマトタケル

千秋楽で猿之助さんの姿を拝見して以来、いろいろな想いが去来し、
また反面、ただひとつの強い感情に支配され、言葉がなかなか出てこないのですが
今期のヤマトタケル東京公演の前楽・千秋楽の観劇記を留めておきたいと思います。
 
4月23日昼の部は、段治郎タケル楽ということで、出演者も彼を労うために(?)
多少台詞のアドリブがあったりしました。
まあ、ほとんどがリピーターしか気づかないだろう、というようなものでしたが…
いつもは、いっぱいいっぱいでギリギリの感情を吐露する、
切ないまでのタケルの造形でしたが、
この二ヶ月で何かしら手ごたえを摑み、ある程度の満足感となったのか
この日の段ちゃんは、明るく溌剌と、そしてびのびと解放された演技でした。
周囲もよく彼を支えたと思います。

通常のカーテンコールの後、一度だけ幕が上がり、
場内皆で彼の奮闘を称えました。

夜の部は右近タケル。
今回三階を取った中では、一番鳥屋に近い席で、
文字通り「鳥屋」に帰ってくる鳥を間近に堪能。
本当にゴージャスで美しい宙乗りだな~としみじみ。
猿之助さんの美意識の大いなる発露ですね。
右近さんは、3月の初日ではあっさりした造形だったんですよね。
右近さんの演技はいつも、力の入った「大熱演」の印象ですから、結構意外でした。
でも、この二ヶ月で、非常に演技が細やかになったと思います。
例のひとつで言えば、冒頭の場面の「こもに包んで川に捨てました。」の台詞も
わりと一息にさらさらと言っていたのが「こもに・包んで・川に・捨てました」と
間を使い、声を震わせ、動揺した感じをより明確にしていたり。

一見の印象では、右近さんの芝居の方がたっぷりに見えますが
実際には段治郎タケルの方が、時間的に延びる事が多かったように思います。
それは、直情的にタケルに入っていく段ちゃんと
演技を組み立てていく右近さんとの芝居の違いかな~と感じます。

そして、24日千秋楽。正直、この日の舞台の詳細が思い出せません。
まだ、前楽の23日の方が三階席だったし、俯瞰して観ている部分もあったので
なんとなく記憶にあるのですが…
普段の千秋楽だと「あ~もう終わってしまう~」と寂しさが勝ち、
想い入れで観ていたりするけれど、今回は、初日からの松竹座への猿★征も
決めていたので、またすぐこの舞台と会える!と、常の楽に比べると、
そう寂寥感もなく、リラックスして着席してはいたのだけど…
う~ん、本当に舞台の様子が描けません(ーー;)

カーテンコールについても、他の方の投稿などを読んだりして、
ああ、そういえば、そうだった~という部分も多く、
いづれにしても、カーテンコールからの記憶しかないので、その辺り
記しておきたいと思います。

前日の段ちゃんタケル楽で、プチアンコールがあったので、
今日の本楽では、何かあるだろうな~と期待はしていました。
(例年のスーパーの千秋楽もそうだし)
3月頃から、千秋楽には、音楽の加藤さんや脚本の梅原先生が紹介されたあと
演出家として、猿之助さんも舞台に出てくれないかな~と、言ったりしては
いましたが、あまり、それについては実現すると思っていませんでした。

いつもの、エピローグを含むカーテンコールが終わった後、幕は再度上がり、
花道から白猪が本舞台目がけて駆け上がって来ました。
右近さん(タケル)との絡みの後、着ぐるみを脱いで、中に入っていた
京劇院演員の方が姿を現し、大喝采を浴びました。
日ごと、歌舞伎の見得的な部分が決まってきて、
京劇員ならではのダイナミックな動きと、タケルたちと絡む時の、
ツケに合わせた所作がいい感じに混ざりあってましたね。
再度、着ぐるみを被ると、花横のお客さんに噛みつくような仕草をしたり
愛想を振りまきながら花道揚幕へと戻って行きました。

舞台上では、メインの役者さんが、上手・下手とひとりづつ一歩前へ出て挨拶をし、 
最後に舞台中央の陵墓から、タケルの衣装に着替えた段ちゃんが登場。
 (常のカーテンコールの後、再度幕が上がった際、着替えの為(笑)
 タケヒコは舞台上には不在だったようですが、私は、その事にはまったく
 気づいておらず、勘の良い友人らなどは、その時点で段ちゃんタケルで再登場?
 ~と予測していたそうです。)
陵墓の階段から降りてきた段ちゃんは、右近さんに飛びつき、二人でハグ。
「客席に深々と再礼」をイメージしていた私には、予測外の光景でしたが
なんか、その飛びつき具合の中に(飛び跳ねたように見えた!)
この二ヶ月間の、二人のタケルの想いが凝縮されているようで、
なんとか無事終えることの出来た喜びや安堵感が伝わってきました。

梅原先生が来場されているのを知っていたので(私の席のお近くでしたので)
たぶん、梅原先生はカーテンコールに出られるだろうと、これは予測内でした。
猿之助さんが舞台に不在の現状、猿之助さんと交流の深い、そして
この素晴らしい作品の原作者である梅原先生が、19年前と変わることなく
お元気でいらっしゃることが嬉しかった。

…で、ここまでは、こうしてまあまあ具体的に反芻出来るのですが。
澤瀉ファンの友人らは、「右近さんと段ちゃんが上手袖に引っ込んだので
これは猿之助さんを迎えに行ったのでは!」とその段階で思ったそう。
(梅原先生より“後に”紹介されるのは、猿之助さんしかいない!という意味で)
私は、右近さんと段ちゃんが引っ込んだことにもあまり気づいておらず
梅原先生のお顔をぼ~っと眺めていたんですね。
あ~なんか嬉しいな~と思いながら…

そして、突然の悲鳴というか大歓声が上がり、
何?と思う間もなく、舞台上手袖から両タケルに左右の手を取られた
猿之助さんの姿が。いつもの猿之助さんらしい、マオカラーのシャツに
ジャケットスーツ。私は、ネクタイ姿の猿之助さんより
この、マオカラーのシャツブラウス姿が大好きなのです。
白も顔が映えていいけれど、一時よく着てらしたピンクのシャツに
黒のジャケットの組み合わせも凄く好き。まあ、それはさておき、
前日くらいに、猿之助さんとの再会はじっくり待とう、このタケルの舞台が
淋しさよりは希望を持って観ることが出来た、たぶん、いつか絶対再会出来る!
と、ふと思ったりしていたので、私にとっては全く予期せぬ出来事でした。

両タケルは、舞台のエピローグで帝にするように、跪き猿之助さんの手を握りしめた、
というのも、もちろん私も目前で見てはいたのですが、
しばらくは、そういう具体的なことがまったく想い出せず、他人の書き込みを見て
そういえばそうだった、誰があの演出?を考えたのだろう…
もしかして、猿之助さん!?と思ったり。こと舞台に関しては茶目っ気も
多分に持ち合わせている猿之助さんですから…

猪の登場あたりで、半分くらいの観客はスタンディングしていたようですが
私は前列だったこともあり、立ったら後ろの方が見難いかな~と躊躇していました。
が、猪が花道を引っ込むあたりで、振り返ると、
すでに、ほぼ8割くらいの方が立っていたので、私も立ち上がりました。
やっぱり、お疲れ様~や、ありがとう~!を、心から伝える行為かなと思うので。
スタンディングオベイション。

しかし、猿之助さんの姿を認めて以降、膝が震えてしまい…
今まで舞台から沢山の感動を受け取りましたが、
こうして、ただ、猿之助さんが目の前にいるだけで、
何故こんなに嬉しいのか、幸せなのか、涙が零れるのか…
猿之助さんは、私に、私たちにとってどんな存在なのか…
それを言葉にするのは、とても困難です。
この「心の震え」を伝えることの出来る語彙が見つかりません。

※画像は猿之助さんのヤマトタケル。DVDのケースにあるものです。
販売元の許諾を得て掲載しております。
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