ヤマトタケルの夢 

―三代目市川猿之助丈の創る世界との邂逅―
★歌舞伎・スーパー歌舞伎・その他の舞台★

中日劇場のヤマトタケル観劇記2

2005-06-30 13:57:30 | ヤマトタケル
●6月25日昼の部

段治郎タケル楽でもあり、ヤマトタケル公演前楽ということで
猿★征ファンも更に増えていた客席でした。
一幕目は、意外と?いつもどおりの芝居といった感じで、
なんだか、明日も明後日も、まだまだ段ちゃんもタケル演っているんじゃない?
と思うような・・・
ただ、熊襲新宮での立ち廻りのふっきれた感じというか、なんだか瞬間
ニヤっと相手を威嚇しているように見せながら微笑んでいる?(とも見えた)
あたりが、共にこの殺陣を作り上げた絡みの役者さんたちへの労いにも思え…
(勝手な思い入れ的解釈かしらん^^;)

この立ち廻りに限らず、古典歌舞伎のように堂々と?
黒衣さんが前面に出るワケにはいかないので、
演者にそれぞれ役割分担があり、戦いながらも
樽を片付けに入る熊襲の兵士・民衆や―この日、中央の樽を片付けに
入ろうとした兵士に、
いきなりタケルの蹴った樽がややズレた方角に向かって飛び、
凄い勢いで押さえにかかってました~
最後に蹴り上げた樽も、下手の兵士さんがバレーのブロックよろしく
両手を挙げハイジャンプで止めてましたね―

タケル・熊襲弟もガンガン樽を当てて、動く道具方として(?)
板羽目はずしてるし。灯を落とす操作をしているのも、
実は大和の密使の?(~o~)フルーツ娘・・・
タケルの見現しも熊襲の民がお手伝い。
自然に無駄なく、効率よく出演者の仕事が決められているあたりも
素晴らしいなぁ~と、いつ観ても感心してしまいます。

今回、ヤマトタケルの何度目かの再演を観て、澤瀉ファンの友人らと
「ホント、タケルって良く出来ている作品だよねー。」と
(リピーターも、この2005年版が初見の子でも)
舞台面の美しさ、演出、転換・展開、上記のような細々した色々を含め
以後の、スーパー歌舞伎の作品は、この応用に過ぎなかったんだな~と。
このオリジナルを超えていかなければいけないのだから
色々付加したり、アレンジしたりはあったかもしれないけど。
産みの苦しみのタケルも大変だったとは思いますが、
これを超える事を目指し作品を創り続けなければならなかった
<タケル後>も非常にご苦労だったでしょうね・・・

再演を重ね、洗い上がった、「今」のこの作品だからそう思うのかな?
初演はもっと混沌だったかもしれないけど。
でも、この三幕のコンセプト自体は、当然、変わっていないのだから
19年前、このお芝居が誕生したことは、すばらしく画期的な事だった
と、改めて思います。

深手を負った熊襲弟タケルに何者かと問われ
「纒向の~」から始まる一連の台詞、ここのところは、私は段治郎タケルの
言い廻しの方が、哀切が強く感じられ好みなのですが、
(疎まれているのでは?と寂寥を抱えながらも、なお、偉大なる父の形容、
そして、その皇子であることの名乗りを誇らしげにあげるそのいじらしさが…)
ここも、いつもは涙が零れてしまう処のひとつですが、
この日の段ちゃんはあまりにも清々しいので、私も明るい気持ちで聞き入りました。

二幕からは一転、疾走感のある演技で、この四ヶ月を駆け抜けてきた
ラストスパートを切っているかのような。
走水の船上では、やっぱりトランス状態っぽい?こんなに、ありったけの
エネルギーを放出するような演技で、あと2回タケヒコも残っているのだけど
大丈夫かな~?なんて、余計な心配をするほど。(ホント余計ですね・・・)
(ここの、「行ってはならぬー」と言いつつ、弟姫の入水ルックへの
ぶっかえりの後見をするタケルもツボなのですが(~o~)←いい場面で、
そんな事考えているのか~>自分)
(スーパーでは、前述のようになかなか後見出せないので、
出演者同士補い合う法則?がよく活かされているな・・・という事で^^;)

三幕に入り、いつもならこの終幕は、タケルの悲嘆にハラハラと涙してしまう
事が多いのですが、この日は、嘆きというよりは、
「全てが終わっていく」事へのある種、諦観のような感情を強く感じました。

段治郎タケル最期の宙乗りでは、大きな拍手を浴びてキラキラと輝き
なんだか、「良かったねー!!」と気持ちは明るいのですが、
ここでどっと、涙、涙になってしまいました(T_T)(T_T)

エピローグの後に、カーテンコールが一度。段治郎タケルは
まず舞台中央で、笑顔で客席に礼をした後、下手仮花道まで駆け下り、
一階後方、そして二階席のお客様にアピール。
再度、中央に戻り、客席・出演者から拍手を受けながら、
そして彼自身は客席に手を振りながら、幕が下りました。

中日劇場のヤマトタケル観劇記

2005-06-27 23:51:07 | ヤマトタケル
●6月24日昼の部

中日劇場では最初で最後の二階席観劇。
宙乗りが「やってくる」事だけを楽しみに購入した席ですが、
舞台全体がここまでよく見渡せ、その構成の素晴らしさ、照明の美しさが
これほど堪能できるとは予想外で、あと何度か二階席も買っておけば良かった!!
と思わせる程でした。
特に幕開けのライトカーテンの美しさ。初演時の猿之助さんの製作秘話などで
「我ながら美しい(演出)と思った。」
「(スーパー歌舞伎は)二階席からの観劇がお勧め。」
と仰られた言葉が過ぎったりもして・・・
何度も何度も観た舞台ですが、改めて、なんて素晴らしいんだろう!!と
まるで、初見のような新鮮な感動を味わいました。
周囲の方々も「おおーっ」と思わず感嘆の声をあげていましたね。

右近さんは、もともと所作のキビキビとした、形の綺麗な動きをされる方ですが、
こうして俯瞰して観ると、更にそのキレの良さやキマリの形が本当に「決まって」いて、
熊襲での殺陣も、見惚れてしまいました。
また、猿弥さんと右近さんの、この拮抗する二人のバランスの良さが、
この席だからこそ、より明確に視野に入ってくる感じ。
(熊襲弟の台詞で泣けたのは猿弥さんが初めてのような気がする・・・)
演技、台詞術ともこなれていて猿弥さんも、梨園の出自ではなくても
本当に稀有な持ち味と技量のある役者さんですよね。

とにかく、この日は、周囲のお客様に恵まれ
その素直な感動、舞台に魅了されている事がストレートに伝わってきて
「勝手に身内」感覚で澤瀉の芝居を観ている私には、幸せ気分倍増でした。
冒頭の聖宮の照明・廻り盆・セリ上がりの演出もそうですし、
兄殺しのあと一転してまた元の聖宮戻るところも
「お~一瞬で変わった~!!」と、思わず声に出される方もいて
ふだん、観劇中の私語ってどうしても不快に思ってしまうこともあるのですが、
こうして、舞台に反応して「思わず」といった感じのつぶやきは全然不快ではなく
むしろ、嬉しくなってしまうくらいでした。
熊襲の館の賑々しさ、女装タケルからの見現し、殺陣や屋台崩しの迫力にも
大感激で驚嘆の声を漏らされたり、沢山の拍手をされたり。
二幕の浪布が捌けていくスピードにも感激されてました!
(黒衣さん、一生懸命舞台を支える“甲斐”ありますよね!)

三幕のタケルの苦境には、シーンとされ涙をこぼし鼻をすする音も(/_;)
そして、宙乗りでは大拍手と歓声が。
猿之助さんの道節の宙乗りの際二階最前列で、<走行路>に当たり
大迫力でお出迎えの経験はありましたが、
今回は多少それにはずれた席でしたが、やはりどこの劇場よりも
近さを感じ、また距離の長いたっぷりの宙乗りも、二階だからこその
楽しみを味わいました。

前列に座るとどうしても役者さんの顔ばかり眺めてしまう私ですが、
この日は舞台全体の構成の見事さを改めて堪能すると共に、
観客の波動を体感しながら、また、違った高揚感で私も舞台を楽しみました。

そして、笑也さんのみやず姫700回という記録も素晴らしいですね。
幹部さんでしたら、たとえば弁慶○○○回記念とか、耳目を集めるのでしょうが
今回は、特に何かしら謳われる事もなく過ぎて行ってしまいました。
猿之助さんが不在ということもあるかもしれません。
猿之助さんは結構、何かしら記念の数字や、偶然の符合にしてもキリの良い数値に
敏感な方ですから、思いがけずの抜擢となり、そしてそれがまた劇界の大きな
話題となった笑也さんのみやず姫の700回記念、
お元気でしたら、ヤマトタケル700回同様、何かしらお祝いとなるようなプランを
労いを込めて考えられたかもしれません。
下記に記したように猿之助さんご自身のタケルの回数を凌駕するのですから。

そういうあれこれがなかったにしても
一人の役者さんが、特定の役を演じる回数として、大きな記録ですよね。
千秋楽で703回!こちらも本当におめでとうございます





中日劇場ヤマトタケル千秋楽 

2005-06-26 22:22:45 | ヤマトタケル
<カーテンコールに再度猿之助さんご出演!!>

24日から二泊三日の猿★征でしたが、
取り急ぎ本日、四ヶ月間に及ぶヤマトタケル公演の大!千秋楽、
カーテンコールの様子をお伝えします。
演舞場バージョン等と同様、通常のエピローグの後、
再度幕が上がり、白猪が下手花道より登場。
右近タケルとの立ち廻りの後、被り物を脱ぎ、素顔を見せてご挨拶。
沢山の拍手と、数名の方の「好、好(ハオ)」という
中国語のアピールが投げかけられていました。
京劇院の皆さんも本当にお疲れ様でした←猪のアイコンないので(^_^.)

その後、メインキャストが一人づつ右近タケルに促されご挨拶。
笑也さんは、演舞場、松竹座に続き、
ワカタケルにカニピース(^-^)をさせていました。
可愛らしくて場内爆笑。(今回は兄姫自身もカニピースしてましたが)
一番シンミリした場面での登場の二人ですから、そのギャップも楽しくて。
そして、前例通り、陵墓から扮装替えした段治郎タケル登場。
エレベーターを降りると、右近さんと握手し、お互いを労い合いながら
ハグとまではいかないけれど?軽くお互いの身体に手をポンポンと当てる感じで
慰労(?)しあっていました(笑)
やっぱりタケルを演じた者同士にしか分からない共有感もあるのでしょうね~。
師匠不在のこの舞台で。

本日は梅原先生はいらっしゃらなくて、
まずは、舞台下手より加藤和彦氏登場。
そして、ダブルタケルが下手袖に駆け寄り、猿之助さんを出迎えに行ったのでした。
名古屋に松竹座で出た猿之助さんのご挨拶の看板がなかった段階で
名古屋の楽はお出になる!!と確信していましたが、嬉しかった~!!!
演舞場では涙涙になってしまったので、今回は精一杯の拍手と
笑顔でお迎えしよう!と
(でも、幕が下りた後、やっぱり膝が震えていました。)

演舞場同様、両の手をそれぞれのタケルが取り、
エピローグに帝にするのと同じ所作で、深く頭を垂れていました。
猿之助さんも、「ありがとう」とか「良くやってくれたね」というような
言葉を投げかけておられ(あやふやな読唇術ですが(^_^.)でも、
ハッキリ口が動くのが分かりました)、表情も演舞場のときより更に穏やかで
素敵な笑顔でした。タケルは猿之助さんのもの、という気持ちのほかに
こうして、猿之助さんの作り上げたものが継承されていくのを目撃し
猿之助さんの想い、情熱、夢が続いていくのだな~とも思ったり・・・
猿之助さんの夢の帰る場所を、是非、一門皆で守っていただけたらとも思います。

【祝】みやず姫700回 performed by 市川笑也

2005-06-24 21:00:16 | ヤマトタケル
本日2005年6月24日昼の部は、1986年2月4日のヤマトタケル初演より
笑也さんがみやず姫を演じられてから700回目の記念となる日でした。
今回の出演者の中では、この演目の初演より、
同じ役を演じ続けていらっしゃるのは笑也さんのみ。
皆勤賞でもありますね。

多くの役者さんに、それぞれ持ち役といいますか、
上演○○回記念を謳うような大切なお役がありますが
(たとえば高麗屋さんの弁慶など)
笑也さんにとっては、三階さんの大抜擢という、当時の歌舞伎界を騒然と
(大げさでなく、多くのメディアで取り上げられた事を鑑みても)
させた事も含め、口幅ったい言い方で恐縮ですが
ターニングポイントとなられたお役ではないでしょうか?

この辺りについては、またいつか改めたいと思いますが
取り急ぎ、本日は、みやず姫700回おめでとうございました

追伸:中日劇場の二階席、久々に座りましたが、舞台全体の美しさが
素晴らしいです!!まだ、明日、明後日ありますので、追加の方は是非。
普段、やっぱりなるべく間近で観たい!と一階を買うことが多いですが
今回、2階席も、もう何度か買っておくべきだった、と後悔。
特にオープニングのライトカーテンの美しさは格別です~!!

【追記】ヤマトタケル興行700回記念と、みやず姫700回記念との日数のズレは
    『特別マチネ』の上演に由ります。 
    1988年再演の際、3月23日、30日、4月13日(笑也さん実バースデー)
    4月27日@新橋演舞場、6月15日@京都南座で特別マチネがあり、
    信二郎さんがタケル、笑也さんが兄姫・弟姫を演じられ、
    みやず姫を児太郎(現:福助)さん、帝を猿之助さんがなさいました。
    
    初演時高校生だった猿弥さんはまだヤマトタケルには出演しておらず、
    88年の再演でも本興行の筋書に名前がありませんが(まだ大学生)―実は
    日大生当時の猿弥さんにお会いしたことあるんですよ~(初告白・笑)―
    このマチネで、熊襲弟タケルとクロマル(←タケルの従者、
    当時は“小米”さんの現:門之助さんの本興行での持役)をされています。
    そして、本興行では、信二郎さんがされていた志貴の里の「帝の使者」を
    小米さんがなさっています。筋書を引っ張りだし確認~
 

【祝】ヤマトタケル上演700回記念!!

2005-06-21 23:42:49 | ヤマトタケル
本日6月21日昼の部、名古屋中日劇場にて、上演700回達成となりました。

観劇だった名古屋の友人から、携帯に報告メールを貰いましたので
ご本人の了承を得て転載します。(匿名希望・笑)
劇場を包んだ、その拍手の暖かさや、役者さん達と客席、スタッフの方々の感慨が
短い文面からも凄く伝わってきて嬉しかったです。


いつもどおりアンコールがおわったあとも鳴り止まぬ拍手…すると
『700回を記念して、中日劇場から市川段治郎さんにお祝いの花束贈呈をいたします』
とのアナウンス。
幕が開き満面笑顔の段治郎さんを、一杯の拍手で迎えました。
そのあと中日劇場のおねえさんが花束を持って登場。
緊張しきったおねえさん・・・
制服のスカートのポケットにボールペンさしたままでした(笑)

―yaya(注)担当のおねえさん!微笑ましくて、目撃談そのまま掲載させて
頂きました~。お役目ご苦労様でした~(^o^)/記念の花束贈呈羨ましいです―

段治郎さんは、にこやかに受け取り
「私は、ただいまヤマトタケルを演じさせていただきました市川段治郎です」と。
そのあとのコメントは感激でうろ覚えなのですが、
「師匠で〇回、中村信二郎さんで〇回、
今回ダブルキャストでタケルを演じています兄弟子の市川右近で〇回、
そして今回の私のタケルで〇回で700回を迎えたという事、
ほんとうならば師匠の猿之助がご挨拶するところですが、
巡り会わせでわたしがこの場でご挨拶することになりました。」とのコメント。

そのあとの挨拶は感激してよく覚えてないけど、
感謝や御礼とこれからも猿之助劇団をよろしくと挨拶されたと思います。
終始笑顔で明るくさわやかな段治郎さんにわれんばかりの拍手でした。

追記:中日新聞のHPに記事と写真が掲載されています。 


中日劇場のヤマトタケル

2005-06-07 00:24:57 | ヤマトタケル
ヤマトタケルDVD


5日日帰りで猿★征してきました。(厳密には0泊2日!?)

往路では線路に人が立ち入ったとの事で、一時間のぞみが止まり、
欣弥さんの朝礼(笑)に間に合わないかと焦りました(^_^.)
まあ、ある程度余裕を持っていたので開演には間に合いましたが・・・
節約のため、ぷらっとこだまで行こうかな~とも考えていたのですが
のぞみにしておいて良かったです。
その代わり帰路は大節約モードで、ムーンライトながらで帰京。
23時55分名古屋発、翌朝4時42分東京着。指定でも6600円!
青春18切符のシーズンだと更にリーズナブルな猿★征が可能です。

さて、名古屋公演ですが、客層や劇場のキャパに合わせてか、
大阪での濃厚感は軽減されていましたが、
もし舞台が客席と演者とのキャッチボールとするなら、
適切な投球だったとも言えるでしょう。

久々の中日劇場ですが、着席してまずビックリしたのが、
舞台と客席がメチャクチャ近いこと!昼夜とも最前列で観劇したのですが、
とにかく、ほぼ自分も出演者?って思うくらい(←かなり妄想)
舞台と客席の距離感がないです。こんなに近かったかしら?と驚きました。
熊襲の宴会では舞台上の館と同様震度3から4を体感?
他の場面でも微震が起こっていました。客席側にも!(^^)!

そして、背もたれの角度が深くて、ちゃんと背をつけて座っているとなにか、
仰け反って観ているような感じです。 上手にも仮花道があったり、
斜め宙乗りであったりと、演出は演舞場バージョンを基本としたら、
松竹座より更に異なるだろう、とは思っていましたが、
それらがまた新鮮で、演舞場・松竹座を観た方も、
是非名古屋へもどうぞ!とお誘い申し上げます。

まず、大きな変化は、帝が金田さんから安井さんへ替わられたこと。
初日に友人からメールが来て、とっても優しい良いお父様に見える、と。
確かにそう。眼差しが非常に優しい父性愛に満ちた感じで、
兄殺しを問う時も、言い分を良く聞いてやろう~という雰囲気が漂います。
征伐に行けと命じながらも、父性が勝つようにも見え、
特に二幕、蝦夷へやる時にタケヒコを同道させると告げる時も、
「お前一人では心配だからな~」とやっぱり止めさてもいいかな・・・
とか実は内心思っていそう!?(いないって(ーー;))
(↑兄姫とめでたしめでたしで、そこで芝居終わる…)
とても穏やかな父帝という印象です。

そのせいか、逆にエピローグでタケルの手を取るときが、
無表情に見えてしまいました。無表情、というのはちょっと語弊があるかな?
最初からそんなに突き放しているようには見えないので、エピローグ、
タケルを承認した、というような心の変化は薄かった。

中日劇場は、いつも掲示板への投稿などでも書いていたのですが、
重低音が良く響き、もしかしたらバランスの良い音響、
という意味では満点ではないのかもしれませんが、私は好きなのです。
演舞場がちょっとキンキンする音なので、この中日劇場で聞くテーマ曲は
私の耳には、とても心地良いものとなります。
あと、照明プランも多少異なるようで、一幕切に昇る赤月を照射するライトや、
宙乗りの虹色が綺麗です。宙乗り前の台詞を云う間タケルに(というか衣装に)
射す青や紫が濃く深く映るし、宙乗りの間中、舞台正面下手から中央辺りまでに、
半分の虹橋が架かり、死して生きるタケルへの鎮魂と祝福を与えるような感じ。
(常の宙乗りでは舞台正面を観る事などないのですが、
この日本最長の!?宙乗りが、もう実にたっぷりで、
ふと、正面を振り返ると、美しい虹が舞台に架かるのを発見。
演舞場などでは左袖辺りに映っていましたが。天井に射す虹色も綺麗です。)

上手仮花道を使うのは、熊襲でのフルーツ娘(?)の出と、
能煩野のタケルとタケヒコの出。石が下手の花道付け際に置かれます。
松竹座と同様この場面で、次の陵墓の準備の関係上盆廻しが使えないため。
そして出現した瞬間驚いたのが、陵に階段が設置されていないこと。
以前から中日劇場の上演では、舞台の構造上の都合で外されていたそうですが、
初演当時は、私はまだ、猿★征なんて考えもしなかったので
(演舞場や明治座での昼夜通狂言、歌舞伎座公演で十分満足していた。)
86年の中日劇場版は観ていませんし、88年前後は海外在住だったため
ヤマトタケル再演全公演未見。95年も中日は観ていないので、
今回初めて目撃しビックリしました。一体どうやって降りてくるんだろう~?と。
(まだ、始まったばかりで未見の方も多いと思うので、観てのお楽しみ!
にしておきましょう~。まあ、そんなに特異な降り方ではありませんが(^_^))
そして、この斜め宙乗り、飛行距離が長いのに加え、
最初にぐーっと上がっていく時のスピード感と相反し、
吊り上げられた後は、かなりたっぷりめにゆったりと進んで行きます。

ちょっと不思議だったのが、中日劇場の舞台は、
松竹座より更に狭いのかもしれませんが、
間口はそんなに大きくは変わらないような気もするのです。
両花道ある分逆に、左右に大きく使える?とも思いましたが、
なぜか、舞台の中央だけを使って演じている、と見えたこと。
これは、同日一緒の舞台を観た友人らも
「なんでみんな(舞台の)真ん中だけで芝居してるのかね~」
と言っていたので、微妙にみな、中央に寄り気味の立ち位置だったような・・・

もう一つ、これは演舞場公演からずっと不思議に思っているのが
伊勢の大宮での倭姫の椅子!一階の客席センターから観ている時は、
結構下手に置いてあるように見えるのに下手側に席を取っているときは、
舞台の中央に置いてあるように見える。
上手寄りから観るとやはり中央よりすごく下手にあるように見え・・・
この中日では、自分の席がセンターでも“中央”に見えたのですが。
絵画でもよく、絵に向かって左右どちらに立っても、
作中の人物の視線や身体の向きが自分の方に向いているように見える、
というものがありますが、そんな感じで(ちょっと違うか?(^_^.))
置いてある位置は(当然)日々変わらないのでしょうけれど
自分の視座によって位置が変わって見える、目の錯覚??
個人的にとってもツボで、毎回、今日は椅子はどの位置に見えるだろう~
と眺めています。騙し絵みたい!(ってこの書き方でご理解頂けるかしらん・・・)

七月国立劇場歌舞伎鑑賞教室『義経千本桜』

2005-06-06 18:33:14 | 歌舞伎

チケットの売れ行きが好評のようです。4日あぜくら先行販売、
6日一般販売の始まった本日、午後16時55分段階で、土日祝は完売、
平日も午前の部はほとんど残席なく、午後の部で多少残っている日もあるとの事。
完売日には補助席が当日一階の最後列(一等席扱)に、
30席程度出る可能性はあるとの事でした。

詳細は、日本芸術文化振興会の公演情報でご確認下さい。
義経千本桜のDVDはAmazon、またはNHKエンタープライズへ。

松竹座ヤマトタケル千秋楽2

2005-06-01 23:52:49 | ヤマトタケル
前楽の25日は、午前中で仕事を切り上げ、
12時台の新幹線で大阪へ向かいました。
ビジネス客、旅行客共に、移動に利用するには中途半端な時間帯なせいか、
車内はかなり空いており、ふだんなら働いている時刻に、
車窓の景色を眺めている・・・というのは、
ささやかな幸福~♪と言ってよいものでした。

目の端を過ぎる街々が、横浜座やグランシップ、中日劇場、御園座、春秋座と
(巡業で訪れた街も含めたら、もっともっとですが!)
様々な舞台の想い出や、その時々の高揚感を呼び覚まし、
懐かしかったり、切なかったり・・・。いつか、いろんなすべての事が
「想い出」になってしまうのかな~なんて、感傷的な気分も。
早朝の新幹線だと眠ってしまうことも多いですが、
自分的にも珍しい時間帯での車中のせいか、ふっといろんな事を考えました。

そんな気持ちも、新大阪で地下鉄に乗り換え、難波の出口に到達する頃には
すっかり、ワクワク感に染まっていきましたが・・・
松竹座の三階袖席に座ったのは初めて(←のはず)です。
一階の左の1番というのは、過去ありましたが。
こちらは、花道の役者さんと視点が同じような感じで
(実際は、もちろん花道上の役者さんの方が視点は高いでしょうけれど)
なかなか面白い、観劇ポジションです。

そして、この三階の左袖!
かねてより、「そこまで乗り出さんでも・・・」と、落下するのではないか?
と心配になる程半身乗り出して舞台を観ている観客を目撃していましたが
実際座ってみて納得!きちんと、座席に背をつけ着席していたら
舞台の下手が多少見切れる、というレベルではなく、
舞台の中央から下手が完全に見切れます。もちろん花道は全く見えません。
う~ん、いくらなんでも舞台の<半分>見えないのはキビシイ・・・
“浅く腰掛けて”でも無理なんですね。
手すりに身体を傾ける―でやっと舞台の下手が、完全ではないけど見え、
傍からは“乗り出している”と見える状態で、
花道を歩く役者さんの頭上(~o~)が見えるのです。
この日、私も含め、両隣の皆様は、殆ど「半身乗り出し観劇」でした。
なかなか、この姿勢苦しいのですよ。
何かのトレーニングをしているかのようでした^^;

段治郎さんは声がかなり辛そうでしたが、このひと月も、
タケルの人生を日々生きた達成感からか、
演技はなんの衒いもない清々しいものでした。
そして、今日も樽落下・・・(段ちゃんが落としたものではないですが(^_^.))
大碓のトーンは更に低く、女形の声はちょっと使えない感じでハスキー
「弟姫ー!」など絶叫系は、声が使い難いのを逆手にとり、
あえて音声に出さず、口だけをその言葉の形に動かすということで
声に出せない叫びという印象で、演劇的効果を上げていました。

ビッグバードお出迎え席は、ホント迫力でしたー!!
この場だけが、”乗り出す”こともなく、
一等席以上な気分(?)を味わいながら、
手を伸ばせば届きそうな距離に舞う『天翔るタケル』を堪能致しました。
鳥屋に入るとき、小さく羽を畳む感じがキュート

先にカーテンコールについて書きましたが、
やはり、段治郎タケル楽、を踏まえている観客が多かった為か
エピローグの後に、もう一度幕が上がることは折込ずみで?
拍手がずっと鳴り続け、カーテンコールに至った次第です。
平日にも関わらず補助席も出ていました。

翌日、千秋楽もほぼ満場の中、開幕致しました。
東京楽と同様、梅原先生のお姿もロビー、そして客席でお見掛けしました。
猿之助さんのメッセージボードが出た、と連絡を貰ったあたりから、
今回、松竹座の楽に猿之助さんのご出演はないのだろうな~とは
予見しておりましたが、梅原先生が来場して下さり嬉しかったです。

お芝居的には、楽だからといって何か大振りな演技になるとか
特別なノリみたいなものはなく、きっちりと、常の右近さんタケルの舞台同様
細かく組み立てられたものでした。着席した瞬間は、“ひとつの終わり”的な
感傷的な気持ちにも多少なりましたが、いざ観終わってみると、
「ああ、終わった。。。」という淋しさよりは、
「―名古屋へ続く―」との期待感の方が勝りました。
しかし、何度も書いてますが、右近さんのタケルは演舞場開幕頃と
まったくと言って良い程芝居が異なりますね~。
台詞の緩急や、所作(特に走水)、ひとつひとつ場面に合せ論理立てて
動いている感じ。段治郎さんタケルが、感情に肉体が付いてくる、
といった趣きなのとは対象的です。

1ヶ月近く我慢!のハズだった舞台との再会は、いつの間にやら?短縮されました

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