ヤマトタケルの夢 

―三代目市川猿之助丈の創る世界との邂逅―
★歌舞伎・スーパー歌舞伎・その他の舞台★

ヤマトタケル 東京公演短感想

2008-04-06 22:14:53 | ヤマトタケル
そうそう、ヤマタケの感想を書いていないのだった。

幕開け、過去も都度力説(笑)したような気がするけど、本当に素晴らしい。
初演時、初めて観てびっくり仰天したであろう客席の衝撃と驚愕。
数年ごとに何度観ても新鮮な驚きを持って迫ってくる。
そして、そのそれぞれの時、初めてこの舞台と邂逅するであろう観客の心を
捉えて離さない(よね?)

廻り盆も、大ゼリも、既知の何度も使われてきた手法。
このシンプルな組み合わせが、何故、こんなにもインパクトを与えるのか。

そして、場面展開が、ホント、巧みでスムース。
この聖宮から、大碓命の館、そして、兄殺しの慟哭から
一瞬の間で、元の聖宮になるところなど、嘆く小碓命に気持ちと視線が
集中しているところ、ぱっと転換するので、やはり、観る都度軽く驚嘆。
花道を使ってる間や幕前芝居の間にセット変えしてるとかは、
まだある程度、素人の理解の範疇だけど、こういうあたりが本当に凄い。
特に、一幕は非常に良く出来てると思います。
あと、三幕の尾張の国造の家(みやず姫宅)から捌けて、伊吹山になる場面。
華やかな婚礼の祝いの背景に山神達の姿が浮かび上がり、凶兆を示す。
でも、私はこれ以前に、みやずの父がタケルに帝からの命として
伊吹山征伐を伝えるところが、真の凶兆、不穏への導入と感じているので
その後の婚礼ダンス(?)の音楽も、いつも歪な響きに聴こえてしまう。

大詰め、タケルの陵墓の場面(三幕四場:志貴の里)も
多くの色彩の氾濫の後、静謐で清浄な雰囲気が際立ち美しいですよね。
豪華で美しく温かみがあり、そして、寂寥感も含むような白。
紗幕が上がり、後ろ向きの時には兄姫の袖で隠されていたワカタケルの出現、
同時に照度も上がり、視覚的な美しさに息を呑むと共に胸も打たれ
非常にドラマティカルな一瞬。

もう、この感動・衝撃を、一人でも多くの人に伝えたいが
言葉やDVDでは、やはり限界が。
実際に、生のライブの舞台を観て頂きたいです。

キャストについては、まず、大きく変わったのが段治郎さんかな~と思ってます。
MY初日かつ段治郎タケル初日に観たとき、前回のような「トランス状態」(笑)
な部分が無くなったな、初日だからまだ押さえている感じなのかな~と
思ったけれど(中間観てませんが)楽でも、そんな印象だったので、
少し、俯瞰して芝居出来るようになったのかな?と。
右近さんも「ミニ猿之助」から乖離して、
右近さんのタケルになってきたような気がする。
観てる自分の心の持ちようもあると思うけれど、二人のタケルを観ていて
あまり、猿之助さんを投影しなくなった。
もちろん、記憶として場面ごと、猿之助さんはこうだったな~と
蘇るものはあるけれど、それぞれの演技の質として、
重ねて観る感覚が私の中で減少したかな。

右近タケヒコは、凄く包容力のある感じ。
段治郎タケヒコは、ともすれば、窮地に陥ると一緒に困ってしまう(笑)
ようなイメージもあるのだけど(スミマセン、私の勝手なイメージです)
それぞれ、違いが面白いです。

今回、個人的に、印象的だったのは猿紫さんのヘタルベ。
最初にスッポンからせり上がって来たのを目撃した時、
あ~綺麗な拵えだな~と思った。目ハリの入れ方が上手い!!
蝦夷の子だけど、品があって宮廷の子みたい(笑)
いえ、お芝居も良かったです。大仰なことはしないけれど、
心がよく伝わってきて。
他からも、猿紫さんのヘタルベいいね~って声、結構、聞きます。

猿弥さんの帝は、前回もチラっと記した通り。
冒頭、あまりにも違和感なかったので(居住まいや台詞廻しなど)
6日夜幕が開いても、昼と代わって夜は猿弥さんの帝だわ~というのを
すっかり忘れていたくらい。で、二言くらい台詞聞いて、あ、そうだ
夜は猿弥さんだ~とあわてて双眼鏡で覗いた次第。
そしたら、さすがに、顔が若かった~!!(笑)

喜猿さんの熊襲弟タケルは健闘しているけれど
名譲りから落入りまで、スケール感に乏しいのは否めない。
まあ、猿弥さんが良すぎたからね~。タケル喰っちゃう勢いでしたから。
まだまだ、これからですから頑張って下さい!!
衣装も重いが、役(責任)も重い?

何度読んでも面白い&興味深いので、初演時の制作秘話、
翔の『ヤマトタケル報告書』貼っておきます。

◆ヤマトタケル報告書 №1
◆ヤマトタケル報告書 №2



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2 コメント

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東京公演にて (むすび)
2008-04-14 22:52:07
今思い出しても、なぜか涙があふれてしまったシーンが
東京公演時にありました。それは

「焼津の炎」のシーンです。
本来なら感動的な所でも、泣けるシーンでもない、どちらかというと、躍動感に胸躍る・・・というようなシーンだと思うのです。が、涙が流れまくってました。
(ちょっと恥ずかしかった・・)

千秋楽だという、気分の高揚もあったのだろうとは思っていますが、いまだによく分かりません。

博多、大阪は残念ながら行けませんが、名古屋の前楽と楽を取りました。
その時、また焼津のシーンで自分がどうなるか見ものです。(笑)また、泣いちゃうかな?。

あと・・ヤマタケネタではないのですが、勘三郎さんが今歌舞伎座で「浮かれ心中」を上演中ですが、ちょっと泣かせるセリフを言われていました。
初演時、「ちゅう乗り」の時
「いい眺めだねぇ。おもだかやさんの気持ち分かるわぁ」
との、セリフが今回
「おもだかやさんも早く元気になるといいねぇ」
となってました。
おもわず、「勘三郎さん、ありがとう」と頭を下げてしまった私です。


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おはようございます (yaya)
2008-04-19 07:45:15
>むすびさん

すでに博多も終盤ですね~!
そう、よ~く台詞を聞いていると、熊襲タケル兄弟や
ヤイラム・ヤイレポ兄弟の方が、まっとうなことを
云っているような・・・
猿之助さんも製作過程で、タケル役が悪い!
もたればっかり!と
本書き直してもらったとのことでしたし。

私も、名古屋大楽まで、ヤマトタケルの舞台は
お預けです。

勘三郎さん、アドリブで言って下さっているのかと
思ったら、別々の日で、それぞれ観劇の子から
同様なメール頂くので、今月、毎日
言ってくださっているのかしら!
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