ヤマトタケルの夢 

―三代目市川猿之助丈の創る世界との邂逅―
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九月博多座大歌舞伎観劇記【2】『義経千本桜』       序幕:吉野山

2005-09-24 14:31:12 | 歌舞伎
序幕、大内の場を観たのは今回初めてですが、
なんでも発端をつければ、物語が分かりやすくて良い、
というものでもないのかな~と思ってしまいました(~_~;)

いや、よくよく登場人物の台詞を聴いていれば、ちゃんと
義経が落ちてゆかねばならない意味や、初音の鼓とはなんぞや、が
分かる(はず)で、適切な導入なのでしょうが、
堀川御所にしても、以前観たときより(98年7月歌舞伎座の千本桜通し)
舞台面がとっても地味で、というか、
大内の場からずっと「説明」が続くので、やや退屈でした。
普段出ないのも分かるような気もする~
(いや、出し方によるかな。歌舞伎座の時は、通しゆえ時間の制約があり
刈り込んだ結果、テンポのある分かり易い構成となった。)

友人があの場って難しいこと(台詞の文言が)言ってるから
分かり難いよね~と言っていたのですが、その「難しいこと」
を聞き逃していた私^_^;A ふっと意識が舞台から離れ、
(あまり予習してなかった為、堀川御所は歌舞伎座で観た通り
が出ることを勝手に想定していたので、もの足りず…)
春猿さんが卿の君で、笑也さんが静御前だった華やかバージョンを
ふっと思い浮かべたりしてました・・・

笑也さんの義経ってどんな感じかしら?との興味はあったのですが、
(81年国立小劇場、第4回歌舞伎会で鳥居前の義経、
85年明治座第1回待春会(←澤瀉一門の勉強会)でも鳥居前の義経を
されています―ちなみにこの時道行では静御前、が、本興行では初役。
それぞれの勉強会は、私は未見。)
拵えは、なかなか似合っていて、寂しげな風情も彼の置かれた境遇と
相まっている感じはしたけれど、ほぼ門之助さんとの二人芝居(?)
での台詞の応酬が単調で、ぐっと物語に引き込まれていく、
という気分にはなれなかったかなぁ~。

門之助さんも、なかなか微妙な役どころですよね。
頼朝の名代としての義経に対峙しなければいけない立場であることと
義経の心境をも理解する、彼もまた忠義の狭間で揺れるひとり。

塀外の場―芋洗いをつけたのは、視覚的に地味な場面が続いた後
趣向を見せるという意味では面白かったし、気も変わりますが、
物語を分かりやすく見せるという意味では、
「忠信篇」の常套、鳥居前―吉野山―四の切、で良かったのでは?とも。
(大内・堀川御所出すにしても)
六月に松禄さんが鳥居前出したばかり、という事情もあって
今回鳥居前を出さなかった、という話も伺ってはおりますが。

部屋をオークラにとっていたので休憩時間に戻っていたら、
吉野山に、ちょっと遅刻してしまいましたm(__)m失礼。
常に見慣れた静の出と異なっていたようで見逃してしまい残念・・・
戦物語に入る少し前、静の舞からの観劇となりました。
ここのところ猿之助さんも清元地で出すことが多かったので
義太夫地の吉野山を久々に観ることができ嬉しかったです。

清元の方が華やか~との見解もあるようですが
私は、どっしりとした、より物語的な義太夫地、好きなんですよね~。
というか、私が猿之助さんの舞台を観始めの頃は
児太郎(現:福助)さんと、頻繁に義太夫地で踊ってらした頃で、
刷り込みが強いのかな~。
(ま、生まれたての小動物が始めて目にしたものを
母と慕う、原初的なインプリンティング同様?)

今にして思うと、初見の吉野山、文楽座出演、人形遣いも出て
滝車廻してと、とっても豪華な舞台でした。
猿之助さんの出手で扇を飛ばす所作がありましたが、
博多の舞台では、玉三郎さん(静)の出手で、これは本行(文楽)通り
のようです。ちょっとスリリングで視覚的に楽しいでしょう?
忠信の赤の襦袢も、合戦の海に映る血の色、昼のぎらつく太陽、
そして戦い暮れた後の夕日の色とかイメージが広がって好きなんです。
(猿之助さんの場合というか、宗家藤間流の場合、清元地だと
浅葱の襦袢を用いることがある、との事で猿之助さんもここ数年浅葱が
多かった。)静が片袖脱いだときの着物の色とも合っているし。

う~ん、舞踊の素養がない私が言うのもおこがましいですが
玉三郎さんは、余裕の余裕、サラサラっと踊っているように見えた。
踊っている・いない、を超越して、動いている時もそうでない時も
同じ空気感でそこ存在しているというか・・・(我ながら意味不明な文章^_^;)
しかし、戦物語に入ってから獅童さんを見つめるというか
ほとんど監視するような目が怖かったです(>_<)
もう、獅童さんが可哀相なくらい(逆に日々勉強で良いのでしょうが)
よく、この厳しい視線の中で、身体が動くな~と。

精神的にも肉体的にも失礼ながら、いっぱいいっぱいという感じが
見て取れて、最後の花道のぶっかえりのあたりでは
かなり消耗されてましたね。

猿四郎さんの藤太は、もうこのお役を振られたこと自体が
大抜擢で偉業(←ちょっと大げさ!?)です。
反面、ある意味順当という感じもしますが。
澤瀉屋の芸を、次世代が継承していくという点では。
踊れる方なので、振り事などは安定して見せていましたが、
台詞に丸みが乏しいのと、これは、今回の出演者三人三様すぎのせいか、
三人で描く楕円形の調和した舞台でなく
何か、トライアングルの先端にそれぞれがいる印象を受けました。

【追記】

静御前の常盤衣は、白地と、橙色ベースのものがほとんどのような気がします。
私は白地ベースが好きなのですが(これらは、常の花道からの出の方が
お衣装チェック楽しいですね♪)
今回、玉三郎さんは、筋書のグラビア写真と、実際の舞台写真で常盤衣が
異なってますね。当然、舞台写真のものを実際着用されてますが
もしかして日替わりとか、何日かおきで替えてるとかなのかしら!?
複数回ご覧になった方いかがでしょうか?

舞台を観る前に筋書の写真を観たのですが、実際着用されているものは
写真だと、ちょっと柄が込み入り過ぎてるかな~もっと
すっきりした白地ベースがいいな~なんて勝手に思っていたのですが
実際生で観ると、古風さも出てなかなか素敵!!でした。

猿之助さんと踊られた時(91年12月歌舞伎座)は、
白地にシンプルな柄のものでした。

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