第2回・通天閣西上社長に聞く
紘一郎雑記帳
昨日より続き・・不振の中救世主が現れた!
西上社長
「ふたりっ子」効果もありにぎわい戻る
しかし、平成になり、願っても無いチャンスが訪れる。
NHKの朝の連続テレビ小説「ふたりっ子」
(1996年10月~97年3月放送)
の放送で新世界にスポットが当たり、
さらに1997年には遊園地と温泉施設(現在も営業中)が
開業したため、世間が新世界に注目し、
年間来塔者が80万人を超えたのである。
そして、昨今、新世界が串カツの街となり、
多くの若者や家族連れが訪れるようになった。
また、新世界やあいりん地区の安いホテルに宿泊する
海外からのバックパッカーが増加した。遊園地こそ閉園したものの、
温泉施設はなかなかの盛況で、さらに近隣の日本橋が
オタク文化の聖地となったこともあり、
街が活性化されると共に、危ない、汚い、怖いというイメージが
払しょくされ、「若い女性が一人で歩ける街」に変化したのである。
エンターテイメント性の高い塔にする
もちろん、通天閣もじっと幸運を待っていたのではない。
西上氏は経営者として(1995年から副社長、2003年から社長)
ソフト面、ハード面共に塔の改革を行った。
大阪らしいエンターテイメント性の高い塔にするという思いから、
できることを何でもやったのである。ま
ずはトイレがひどい状態だったため、そこから手を付けた。
また、遠くを見るだけだった展望台を
ビリケンさん(アメリカ生まれの神様)の神殿にして訪れる客に
御利益を授けたり、大阪土産のスペースや100年前のジオラマ展示、
喫茶スペースもリニューアルし、長時間過ごせる楽しい塔に
変化させていったのである。
特に3階部分は初代通天閣建設当時のジオラマや写真を展示し、
昔の大阪を知ることができるようにしている。
最近では、昨年末に94.5メートルの最上部に貸切りのできる
(プロポーズなどにも使える)特別展望台(別料金が必要)を設けた。
イベント面でも、「干支の引き継ぎ式」、「節分の芸能人福豆まき」の
他に2月14日のバレンタインデーにカップルで来てキスをすると
入場料が半額になる「チュー天閣」やアイドルライブなどを企画するなど、
若者やカップルを呼び込む策を講じていった。
坂田三吉ゆかりの地である新世界を囲碁将棋の街として
再び盛り上げようともしている。
また、外国人客対応のために英語、中国語、韓国語、タイ語の
パンフレットも作製。現在、外国人観光客が25万~30万人を
占めるまでになった。
さらに、元々震度7まで耐えられる内藤多仲の設計に、
姿形を変えずに更なる安全性を加味するために、
塔脚を切ってゴムを入れる免震工事を一昨年から昨年にかけて行い、
大地震が来ても展望台部分に居る人が転んでケガをしない
通天閣に進化させた。同時に、初代通天閣にあった
「エントランス吹き抜け大天井」の天井画を復刻した。
このような諸々の改革や時代の後押しの効果もあって、
最近の来塔者は平均110万人にまで回復したのである。
(最高は2012年の132万人)
こうなれば、再建当時の150万人を上回る新記録を打ち立てて
欲しいと筆者は願う。
日本一おもろい塔にしたる!
今年、2代目の通天閣は建設60周年を迎えるため、
様々な還暦イベントを計画していると言う。
最後に、西上氏に通天閣の今後について尋ねた。
すると、
「おしゃれな塔はスカイツリーや東京タワーに任せます。
通天閣は日本一おもろい塔を目指します。
大阪の文化を発信する塔にならんとアカンのですわ。」
と熱く語ってくれた。まだまだ楽しい企画が登場しそうだ。
700円で楽しめる大阪展望、通天閣。
真田丸と大阪城の歴史ロマンに思いをはせながら
大阪の街並みを眺める心の贅沢を、
読者諸氏にも是非味わっていただきたい。
(先見経済2016年5月号より)