中爺通信

酒と音楽をこよなく愛します。

ご冥福を

2020-04-22 22:45:55 | 音楽
 コロナ関連の話ではありませんので、念のため。


 大学時代の音楽の教授であった音楽学者の皆川達夫先生が逝去されました。92歳で老衰ということなので、ご立派と言えるかもしれません。

 NHKラジオの「音楽の泉」で声を聞くたびに「いつまでも元気な人は元気なんだな…」と感心しつつ、懐かしく思っていました。

 何しろ、すでに亡くなった私の母も、芸大生の時に先生の講義を受講していたのを知っていたので。


 講義は面白かった。夜道で悪漢に襲われそうになっているご婦人を、得意の空手で救った話とか、音楽と無関係な武勇伝(やや眉つばの大盛り)を入れてくるので、普通大学の一般教養の音楽ながら誰も飽きない。なかなかの人気講座でした。


 大学のオーケストラの顧問でもありました。ちょうど、私の在学中に65歳の退官を迎えたので、記念演奏会もありました。お得意の駄洒落なのかもしれませんが、プログラムはモーツァルト の「戴冠ミサ」。先生の指揮で、私がコンサートマスターを務めさせていただきました。

 学者なので指揮はお上手とは言えない。しかしソリストに招いた一流の声楽家たちに対して、私たちアマチュアの学生と同じように厳しく発音の指導をするのを見て「こんなにすごい人だったのか」と、失礼ですが、姿勢を正しました。

 東京芸術劇場の楽屋で終演後にご挨拶をした時、「君にはずいぶん世話になったね」と握手を求められた時にはジーンときました。昔の年輩の男の人は、みんな骨が太かったのか、温かくて分厚い手をしてましたね。


 先生とはその後お会いする機会はありませんでしたが、山形でもラジオでお声を聞く度に、その時の掌の感触を思い出していました。


 ご冥福をお祈りします。ありがとうございました。
コメント (4)
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