中爺通信

酒と音楽をこよなく愛します。

空き時間に

2012-04-22 13:31:31 | ヴァイオリン
 ゲネプロから夜の本番までは、だいたい2~3時間の空き時間がありますから、楽団員は思い思いの過ごし方をしています。ゆっくりと食事をする人、楽屋でごろ寝をする人、ステージでひたすら練習を続ける人・・・それぞれの「スタイル」があるものです。かつて私はよくパチンコに行っていました・・・不謹慎で申し訳ない。今では耳と腰が疲れてしまうのでやめました。ということで最近はもっぱら、静かなところで本を読んでいます。


 昨日も、ホールが入っている建物の、別のフロアのベンチで読書していると、若い兄ちゃんがこちらをチラチラと見ながら前を通り過ぎて行きました。
 少し経つとまた戻ってきて、またジロジロと見ながら通り過ぎて行きました。

・・・失礼な。大体いい若者がこんな所で暇を持て余してブラブラしてるんじゃないっ。

 振り返ってこっちから睨んでやろうと思ったとたんに、後ろから声をかけられました。
「すみません・・・あの、中島先生ですよね?」
・・・へっ?こんな二十歳前ぐらいの、生きのいい感じの兄ちゃんに「先生」呼ばれるような知り合いがいたかな?

と思った瞬間に思い出しました。
「もしかして・・・K君!?」


 むかし、小学2年生ぐらいから中学1年生までのあいだ、私がヴァイオリンを教えていた子でした。ただの「はなたれ小僧」だった子が、見違えるようにカッコいい、立派な若者になっていて本当に驚きました。聞けば、この4月に山形大学に入学したとか。

「まだヴァイオリン続けてる?もうやめちゃったかな。」
熱心なお母さんでしたが、本人はそれほどヴァイオリンが好きでなさそうな印象だったので、半ばあきらめて「話題として」訊いてみたのでした。すると、
「いえ、大学のサークルのオーケストラに入りました。」

 ・・・なんと。この子のフルサイズの楽器を選んだのは私でしたが、その時「一生の趣味としてヴァイオリンを続けた場合、どこかのオーケストラに入ったりしても恥ずかしくないように、このぐらいのレベルの楽器は持っておいた方が・・・」と奨めはしましたが、内心では「たぶん続けないだろうな。でもこの楽器なら転売できるから、家としては損害にならないだろう」と思って選んだものです。それが一生の趣味として、やはりヴァイオリンを選んだということが、意外でしたが、嬉しかった。

「お母さん元気?妹は?」「今度飲みに行こうよ・・・あっ、まだ一応未成年か」など、しばらく懐かしくいろいろな話をしました。


 「ところで、今日はなんでこんな所をウロウロしてるの
?」
 「・・・えっ、・・・コンサートを聴きに来たんですよ。(当たり前じゃないすか)」
そ・・・そうだよね。ありがとう。(あまり客層にいないタイプなので、その可能性をまったく考えていなかった。良い若者が、コンサートを聴きにこんなところをブラブラするとは・・・まったく素晴らしい)

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