東南アジア・ヴァーチャル・トラヴェル

空想旅行、つまり、旅行記や探検記、フィールド・ワーカーの本、歴史本、その他いろいろの感想・紹介・書評です。

泉田英雄,『海域アジアの華人街(チャイナタウン)』,学芸出版社,2006

2006-08-03 22:56:38 | コスモポリス
著者(いずみだ・ひでお)は、1954年生まれ。青年海外協力隊でマレーシアの工業高校で教職、その後、インドからギリシャまで陸路旅行。
帰国後は「建築探偵」で有名な藤森照信教授に師事。
学生仲間に村松伸、佐藤浩司(現国立民族学博物館)など。
1990年代は加藤剛、深見純生など東南アジア研究者と共同研究。

という人物が興味をもったのは、伝統的住居でもなく宗教建築・現代建築でもない、もっとも東南アジアらしい街の風景、華人街である。

以下、出版社のサイト(www.gakugei-pub.jp)から第2章の目次をコピー

1 自然発生的な漁村・港町──珠江河口の島々
西貢天后古廟
長洲天后廟
その他の居住地の天后廟
2 現地王国の外港──広南阮朝ヴェトナム
ホイアン
フエ
ロンスエン、ミトー
3 内陸都市から交易都市へ──チャオプラヤー川沿い
アユタヤ
バンコク
4 交易指向の都市──マレイ半島沿岸
パタニ
ソンクラー
プーケット
コタバル
マラッカ
ペナン
シンガポール
5 独立した交易居住地──ボルネオ島
クチン
西カリマンタン─ポンティアナック、ムンパワ、スンガイ・プニュ
6 閉鎖的な居住地──ジャワ島
バンテン
スマラン
ラサム 
トゥバン
レンバン
7 消失してしまった華人街──フィリピン諸島
マニラ
サン・フェルナンデスとヴィガン
8 都城外の河岸に拓かれた居住地──福建省沿岸
泉州
福州
台湾─鹿港と澎湖島

というように、華人街のルーツである福建省沿岸まで含め、それぞれの都市の中で華人街の位置を論じる。
特に参考になったのは、ジャワ島。普通、華人街を話題にするとき無視される地域だからである。
マレー半島とボルネオの華人街も、いかにもそれらしくて、楽しい風景であります。

第4章、第5章では、建築物(住居と商店)の構造、近代植民地下の衛生問題、景観整備の話題が論じられる。

いずれも地図・写真・建築図面を多数収録。
東南アジアの都市ってのは、結局チャイナ・タウンなんだ!と納得させる内容だ。
華人的(というより、正確にいえば、福建沿岸や珠江河口の漁村・港町)要素が東南アジアの環境と植民地権力の政策のなかで変型・進化していったようすがわかる。

え~と、一番すごいと思ったのは、福建や広東の町屋にも、便所がないんですね。
それが、東南アジアに移ると、便所(WC)や浴室が必ずといっていいほど設置されているんですよ。


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