東南アジア・ヴァーチャル・トラヴェル

空想旅行、つまり、旅行記や探検記、フィールド・ワーカーの本、歴史本、その他いろいろの感想・紹介・書評です。

能登路雅子,『ディズニーランドという聖地』,岩波新書,1990

2009-12-06 23:36:06 | コスモポリス
この分野に興味があるなら、まず最初の一冊。
この分野というのは、宗教人類学・観光・巡礼・聖地・ユートピア思想・ポップカルチャーと国民統合、などなどについて。

ディズニーランド関係書は、信者のための巡礼案内か、サクセス・ストーリーみたいなビジネス書ばかりで、まともに読めるものが少ない。
また、妙に批判的というか、大衆文化をわかっていない本も多い。

本書は浅く広くであるが、万遍なく扱っている。ビジネスとしても建築としても基本的なところはわかるし、ウォルト・ディズニーの生涯や映画制作についても、さらりと概観できる。

著者は東京ディズニーランド開設の仕事にもタッチした方で、内部の事情に通じているとともに、学者的な目もそなえ、(いや、ほんとに学者だ、東京大学大学院の教授なんだ)冷静な分析である。ディズニー・カルチャーを、いわゆるオンナコドモ無知な大衆を騙す低俗なもの、と捉える古臭い見方はない。

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東京ディズニーランドには数回行ったことがあるが(なんで、あんな金のかかるところに数回行かにゃならんのだ、とほほ……)、あの広さであの収容人員であるにもかかわらず、拡声器やラウドスピーカーを全く使用しない、という理念に驚いた。東京ディズニーランドは、日本で一番静かな観光地ではないだろうか。あの方針を貫いた設計思想はすごい。
食い物のマズさもすごいけど、あれも基本理念なのだろうか。


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