東南アジア・ヴァーチャル・トラヴェル

空想旅行、つまり、旅行記や探検記、フィールド・ワーカーの本、歴史本、その他いろいろの感想・紹介・書評です。

蛭子能収,『くにとのつきあいかた』,思想の科学社,1991

2007-05-21 10:14:16 | 旅行記100冊レヴュー(予定)
月刊『思想の科学』1988年6月号からの連載、それに隔月刊『Soto』連載「コロッケパンいかがですか」を追加。
『思想の科学』のほうの連載は、終刊号まで続いたと記憶している。
当時、つまり1990年代終刊まぎわの『思想の科学』は、ポップ・カルチャーとフェミニズム、それに海外旅行の話が満載、アート・ディレクターが南伸坊だったんだから、すごい雑誌だった。

そんななか、雑誌の雰囲気にぴったりの蛭子さんの連載であった。
当時、わたしは知らなかったが、俳優、TVタレントとしての仕事も多く、そのテレビの仕事がらみの旅行も多かったようだ。
それに、ごぞんじのようにギャンブルの話。
それに、家族・親戚との旅行、シンガポールやチェジュ島への旅行、温泉地やカプセルホテルなど旅の話が続く。

やっと海外旅行ができる身分(というか、状況というか、収入というか)になった中年旅行者の感激にあふれる素直な旅行話が読めたコラムでありました。

『宝島スーパーガイド・アジア 4 シンガポール/マレーシア』改訂版,1987

2007-05-21 10:10:27 | 実用ガイド・虚用ガイド
1982年ごろ初版がでたガイドの第2版。
執筆者は、長井和雄・斉藤夏実・須賀晶子・樋口育子・末吉美栄子・萩島早苗・大住昭。他にコラム執筆者多数。編集は株式会社ヌーベル・フロンティア。
発行はJICC(ジック)出版局。定価1500円。

ほんとは初版を見られればいいのだが、手元にたまたまあるのが、この版。
汚い古本を必死で探す気はない。
1987という年代は、一応バブル期にあたるのだろうか。
しかし、海外旅行に関しては、この時代は、まだまだ団体旅行の時代(と、一応みなす。深くつっこまないでくれ。)、このガイドもパック旅行者が購買層だと思われる。

以下、本書発行当時一度も海外旅行をしたことがない、現在もまだマレーシアへ行ったことがない者による感想である。

まず、高い!
東京・シンガポールのユナイテッド11日間航空券が96000円!
パックのマレー半島6日間113000円より!!
という広告が載っている。
JALパックや近畿日本ならもっと高かったはずだ。

紹介されているホテルも高級ホテルが大部分。
レストランで食事、タクシーで移動という感じ。
つまり、大多数の者にとって、近くて安い東南アジアといえども、短期間の旅行しかできないのであって、学生の長期休暇旅行などはまだ一般的ではなかった、ということだ。
しかし、当時、自由に金が使えた独身者であったわたしのような男からみても、高すぎる。
たった1週間の旅行に、一年分の本代、一年分の飲み代、一年分の映画・音楽関係費を出せますか!

そして、ガイドをみると、都市と買い物ガイドが中心なのだ、やっぱり。
この宝島のスーパーガイドは、文化的・歴史的背景に強いという印象があったが、今読んでみると、ほんとスカスカですね。
つまり、執筆者が参考にできる書籍・事典類がまだ出版されていなかった、ということなのだ。
そういう不利な条件の中では健闘している、といっていいかもしれないが、ガイドとして読むと、マレーシアもシンガポールもゴミゴミした都会ばっかり、という印象だ。
ああ、ことわっておくが、東南アジア旅行の楽しみの大部分は大都市にある!というのは正しい。しかし、東南アジアが都市ばっかりだというイメージもやっぱりおかしい。
ともかく情報を得る手段、書籍、言語学習、地図、そのほか旅行に必要なものの入手がむずかしく、高価な時代であったのだ。
だからこそ、一見ムダなような高価にホテルに宿泊したり、どうでもいいようなショッピングモールに出かけたのだろう。

*****

このころ(つまり1980年代)の旅行ガイドを読んでいて、よくわからないこと。

まず外貨両替。
東南アジアのここいらなら、日本円をもって行って、空港で両替するのがベストだと思うが。短期間の旅行でトラベラーズ・チェックもなにも必要ないはずだが……。
それから、ATMは無かったのか?あっても日本国内発行のVISAやマスターカードは使えなかったのか?

あと、クレジット・カードをつくるのが、資格審査でむずかしかった、という話をきく。
しかし、この当時、わたしは、銀行からすすめられて、必要でもないクレジット・カードを(資格審査のための申請書なんかテキトーに書いて)取得している。
VISAのカードである。(つまり、海外でまったく役に立たないJCBカードではない。)
必要でもないカードを作った、という人が多いように記憶しているが、わたしの周辺の特殊な例か?
なお、後に海外旅行が多少なりとも可能になると、役にたった。
空港内のATMで現地通貨が引き出せるのだ。

*****
本書にも、パスポートの取り方から査証の取り方まで案内されているが、具体的な問題点は不十分だ。
第一、シンガポールとマレーシアじゃ短期旅行者は、査証は必要ないはずだ。
ここいらへんの書き方はあいまいだ。
法律の条文のようにむずかしく書いたものがあったり、特殊な例を一般向けに書いたものがあったり、海外旅行入門者を悩ます問題だ。
まあ、もはや、問題はないのだが、最初の時はびくびくするもんだ。

それから、飛行機のリコンファームの問題。
これも、最初まったくわからん。
手続きがわからないのではなく、なぜ、こんな面倒なことが必要なのかわからないのだ。(今でも謎の部分がある)
結局、航空会社も、リコンファームに必要な人員を配置する経費より、オーバーブックしたら弁償金はらってしまえ、というやりかたのほうが安上がりであることがわかり、リコンファームは次々と廃止されていった。

空港税、出入国カード(解説するまでもないが、ちょっと前まで、日本人が日本を出国する時にカードに記入して出国手続きをする必要があった。)など、むずかしげがことが書いてかるが、これも一度国際空港を使えばわかることだ。
しかし、団体旅行では、すべて旅行会社の人間がやってくれる場合があり、何度も海外旅行をしているのに、出入国カードを書いたこともないし、査証とパスポートの区別がつかない、という人もいる、という笑い話もあった。
ともかく、一度やってみればわかることを、恐ろしげに解説している部分があり、これは、旅行会社のインボーではないかとさえ思える。
別に書類の書き方を間違えたからって、即刻退去命令が出るわけでもないし、飛行機に乗り遅れるわけでもない。(成田空港に行けばわかるように、航空会社も空港職員も、親切に誘導してくれて、迷子の乗客をトイレまで捜し回ってくれるのだ。)