東南アジア・ヴァーチャル・トラヴェル

空想旅行、つまり、旅行記や探検記、フィールド・ワーカーの本、歴史本、その他いろいろの感想・紹介・書評です。

金井重,『シゲさんの地球ほいほい見聞録』,山と渓谷社,1991

2010-09-14 20:46:40 | 旅行記100冊レヴュー(予定)
改題して
『年金風来坊シゲさんの地球ほいほい見聞録』,中公文庫,2000

年くってから長期海外旅行をしたいと思っている方は必読。
蔵前仁一さんや下川裕治さんのバックパッカー旅行記も楽しいが、彼らは若いときから出かけたベテランだから、あまり真剣に参考にしないほうがいいように思う。

さて、著者のようなひとり旅の長期海外歩きが誰でもできるか?著者はドジで他人の世話になりっぱなしの旅行のように書いているが、行間を読むとかなりむずかしいのがわかる。

1927年生まれで1980年で退職。世間の人間関係から逃れ自分のすきなことをやるためにまずアメリカに向かう。そこから、メキシコへ向かい、スペイン語を勉強し、南下してブラジルまで足をのばす。だいたい、スペイン語を勉強しようという意欲自体ない人も多いのである。著者は外国語がダメなどと書いているが、字面どおりに受けとらないように。
バックパッカーにとって難関の南米をすいすい歩いてしまったように書いてあるが、そうとうに体力もスキルもある人である。

この1920年代生まれの人たちというのは、丈夫な人とひ弱な人の差が激しいように思う。健康な人は30代40代に負けないくらいに丈夫。人生の辛酸をなめ、社会の荒波にもまれているので、ひ弱な若者には耐えられないことも耐えられる。

一方、日本社会に順応しすぎたひとは、海外旅行などまったくダメである。上下の身分、職種、学歴、男女の別、世間体などに凝り固まっている人は、海外の人にコミュニケートできないし、日本人の若い人とも話ができない。自分のスキルが低いのに要求だけ大きいので周りからきらわれる。

著者・シゲさんの場合は組織の中でまじめに労働する一方で、組織以外の場で行きぬく力も養っていたように思える。
それになんといっても丈夫で体力がある人だ。アンナプルナ・ベースキャンプまで行ってしまうのである。

というわけで、くれぐれも本書のような旅がかんたんにできると誤解しないように。情報収集もしっかりやっているし、怪我や病気の対策もちゃんとやっている。ネパールで骨折したり、タイでパスポート・TC・航空券を盗まれたエピソードがあるが、こういう事態にも対処できる人なのである。

見習うべきところは、飽くなき好奇心と、日本の堅苦しい世間からはなれたいという強固な意志である。それに、この方、独身だ……。世話すべき家族はいないようだし、旅行に反対する家族もいないようだし。


1 コメント

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お世話になりました (TIKTIK)
2017-10-23 13:25:22
期待して読んだが、結局旅の話より人間関係の顛末がが多かったような。旅本というよりこの年だから他人にお世話になってなんとか旅ができましたというオハナシです。
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