東南アジア・ヴァーチャル・トラヴェル

空想旅行、つまり、旅行記や探検記、フィールド・ワーカーの本、歴史本、その他いろいろの感想・紹介・書評です。

五十嵐太郎,『新宗教と巨大建築』,講談社現代新書,2001

2009-12-06 23:34:34 | コスモポリス
ちくま文庫から改訂版がだされているが未見。

明治神宮や靖国神社は日本的かつ近代的なデザインとして評価されていた。戦後は、アヴァンギャルドと日本的寺社建築が評価される一方、新宗教の建築群は、目を背けたいもの、キッチュなもの、アナクロなものとして、ほとんど顧みられなかった。

そうした、無視され見えないものとされた近代の新宗教建築をしっかり論じた一冊。

博士号論文を基にしているので、きわめて実直で堅実な書き方である。

内容は、天理教が一番多く全体の三分の一。金光教と大本教で三分の一。この三つの分析は教義の紹介、教団の歴史、現在の姿、建築的な分析など文句ない力作である。

ただ、読者としては、少々不満になる。この三つの教団は、見物人にも取材にもオープンで、内部に学者と話が通じる人材も多い。教義はともかく、社会に開かれた知的な教団である。
建築も、それほど奇妙ではないしグロテスクでもない。

書名と表紙から読者が期待するのは、もっとキテレツでオマヌケな建築ではないだろうか。
その方面は、さらりと流されている。後半、各教団数ページづつ扱われているが、概略程度。この方面は教団側の協力ななければ詳しい分析はできないだろうし、新書の性格としてもあまり話を大きくするわけないはいかないだろうから。

著者は意外と(失礼)著作が多いことがわかった。ヤンキーとか結婚式教会とかおもしろい分野に挑んでいる。


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