小倉貞男 訳,石澤良昭 監訳。
原書 Milton Osborne,"Sihanouk Price of light, Prince of Darkness",1994
うーん。
著者はカンボジア現代史の第一人者であるようだ。それで一般読者にとって困るのは、著者自身の知識が豊富すぎて、こまかい事実をどんどん羅列していくことである。あまりにも細かく、ついていけない。
もともと政治史をめざした著作であるから、文句をつけるのがおかしいが、もう少し、経済や文化、世界の状況など説明してもらいたい。
それから、一番気になるのは、やはり、そこかしこに漂うバカにした筆致。もちろん、シハヌーク殿下を批判したりバカにするのはけっこうであるが、それが政治や外交とどう関わるのか、いまひとつ納得できない。たんに人格的にバカにしているみたいなところが多い。その人格批判やゴシップがこの著作の目的なら、それはそれでいいんですが。
監訳者の石澤良昭が「カンボジア人からみたシハヌーク国王」という小文でフォローしている。しかし、この文も本書のテーマとはずれているような気がする。フォローになっていない。
登場人物が多すぎるので、一覧表か簡単な解説がほしいところだが、なし。索引もなし。だから、ええと、この人物は……と前の部分をめくらなくてはならない。
政府機関や政党、政治団体の名称もこんがらがる。
あと、頻出する〈左派〉〈右派〉、〈左翼〉〈右翼〉という表現がどっち側なのか、何を意味するのかとまどう。これも一覧表が欲しかった。
というわけで、興味深い事実が山ほどあるにもかかわらず、前後関係がわからず欲求不満になった。
******
細かいことだが、へんな部分。(p195)
1966年前後、カンボジアから南ベトナムの共産勢力へ、米が密輸されていた。農民の余剰米はすべて政府が買い取ることになっていたが、政府買取価格が低いので、華人の穀物商人がどうどうと買い集めて、国境まで輸送していた。(政府は黙認)
それで、プノンペンからの米の運搬のための賄賂の相場があった。
トラック一台で国境までの買収金が1500USドルだというのだ。
ちょっとおかしいぞ。
1500USドル=54万円。
当時の日本の標準価格米小売価格の4.8トン分である。
米価の高い日本での4.8トン分も賄賂を払う?なんて考えられないのだが。
桁間違いではないか。150ドルでも高すぎると思うが。
なお、ほかにも数字がおかしいところがあり、訳者が訂正している部分あり。
原書 Milton Osborne,"Sihanouk Price of light, Prince of Darkness",1994
うーん。
著者はカンボジア現代史の第一人者であるようだ。それで一般読者にとって困るのは、著者自身の知識が豊富すぎて、こまかい事実をどんどん羅列していくことである。あまりにも細かく、ついていけない。
もともと政治史をめざした著作であるから、文句をつけるのがおかしいが、もう少し、経済や文化、世界の状況など説明してもらいたい。
それから、一番気になるのは、やはり、そこかしこに漂うバカにした筆致。もちろん、シハヌーク殿下を批判したりバカにするのはけっこうであるが、それが政治や外交とどう関わるのか、いまひとつ納得できない。たんに人格的にバカにしているみたいなところが多い。その人格批判やゴシップがこの著作の目的なら、それはそれでいいんですが。
監訳者の石澤良昭が「カンボジア人からみたシハヌーク国王」という小文でフォローしている。しかし、この文も本書のテーマとはずれているような気がする。フォローになっていない。
登場人物が多すぎるので、一覧表か簡単な解説がほしいところだが、なし。索引もなし。だから、ええと、この人物は……と前の部分をめくらなくてはならない。
政府機関や政党、政治団体の名称もこんがらがる。
あと、頻出する〈左派〉〈右派〉、〈左翼〉〈右翼〉という表現がどっち側なのか、何を意味するのかとまどう。これも一覧表が欲しかった。
というわけで、興味深い事実が山ほどあるにもかかわらず、前後関係がわからず欲求不満になった。
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細かいことだが、へんな部分。(p195)
1966年前後、カンボジアから南ベトナムの共産勢力へ、米が密輸されていた。農民の余剰米はすべて政府が買い取ることになっていたが、政府買取価格が低いので、華人の穀物商人がどうどうと買い集めて、国境まで輸送していた。(政府は黙認)
それで、プノンペンからの米の運搬のための賄賂の相場があった。
トラック一台で国境までの買収金が1500USドルだというのだ。
ちょっとおかしいぞ。
1500USドル=54万円。
当時の日本の標準価格米小売価格の4.8トン分である。
米価の高い日本での4.8トン分も賄賂を払う?なんて考えられないのだが。
桁間違いではないか。150ドルでも高すぎると思うが。
なお、ほかにも数字がおかしいところがあり、訳者が訂正している部分あり。