東南アジア・ヴァーチャル・トラヴェル

空想旅行、つまり、旅行記や探検記、フィールド・ワーカーの本、歴史本、その他いろいろの感想・紹介・書評です。

松岡環,『アジア・映画の都』,めこん,1997

2008-06-10 20:33:55 | コスモポリス
同姓同名の方がネット上を賑わしているようだが、インドの大衆映画・インドポップの研究者、紹介者の(まつおか・たまき)さんです。インド亜大陸の言語はひとつだけでもマスターするのは大変なのに、複数の言語に堪能で、さらに広東語方面にも手をのばす異常な才媛です。女性です。
失礼な話だが、映画評やCD解説でしかお名前を知らなかった頃、てっきり男性だと思っていた。まあ、「たまき」なんて名は、当然女性と考えるべきだが、むさくるしい男しかファンがいないようなインドのポップ・カルチャーを紹介しているのだから、なんとなく男性だと思っていた。

ファンとして、ボランティアとしてインド映画を紹介していた松岡さんであるが、本業は大学の事務で、研究者のため助成金を申請するのが本業であったらしい。
その助成金申請を、自分のために申請するぞ、と決心し、書き上げたのが本書。

インド、香港、そして西と東が交差するマレー半島の映画を紹介したもの。
こんな本でさえ、こんな本という意味は、地味でもなく結構ファンがいるような分野でさえ、出版を引き受けるのは、めこんか……。おかげで、レイアウトも造本もしゃれたすっきりしたものになってありがたいが。

ありがたいが、しかし、本書を買った当時は、わたしにとって宝の持ち腐れだった。
カセットやCDぐらいなら入手できるとして、映画本体は、なかなか実物が見られない。
本書も長らく単なる歴史の本、単なる歴史の本というには、力作すぎるが、そんな位置にある本だった。

さて、現在、本書は実用書となりつつあります。
例のtoutube で、検索すると、ざくざく出てきますから。本書の索引(ローマ字スペル付き)を利用して飛び回っていると、時間がいくらあっても足りない。
もちろん、一本の映画として見ないのは邪道でありますが。まあ、そのうち、いくらでも長い映像が見られるようになる気がする。
そのときこそ、本書の内容の凄さが身にしみてわかるだろう。


コメントを投稿