東南アジア・ヴァーチャル・トラヴェル

空想旅行、つまり、旅行記や探検記、フィールド・ワーカーの本、歴史本、その他いろいろの感想・紹介・書評です。

ダンドゥットの謎にせまる その7 Koplo

2014-11-30 16:59:50 | 音楽 / ミュージック

ずっと前の記事で、リンク先が消えたり、内容が古くなっています。

ダンドゥットの記事なら以下のブログへどうぞ(怪しいサイトではございません)

 https://hap-pya-ku-bikini.hatenablog.com/

 

 いよいよ dangdut koplo というものを考察する。Koplo というのは、祝い事やショーのライブを示すことばらしい。Dangdut Koplo といえば、ライブのダンドゥットという意味になるわけだが、特有のバンド・スタイルでもある。では、いつものように、クッキーやキャッシュを消してよyoutubeを見ていこう。

 次のビデオをみてください。五分もあるが、がまんして見てくれ。コプロでは短いほうだ。わたしの個人的好みは排除して冷静に論をすすめていくけれど、実はこの映像、大好きである。何度見ても飽きない。

PANTURA ngamen lagi 

bersih desa tegalwero つまり村のお祭か祝い事の際の録画である。2012月11月。前後のビデオには運動会や会場設営の映像もはいっている。だから、このステージは入場料をとってみせるショーではなく、村の人誰でも見られるステージだろう。だから、小中学生のこどもも見ている。小さいな村らしいのに、こんなきれいな歌手を五人も呼べるとはすごい。出演料はかなり安いのだろうか? 歌手はバンド(オルケス・ムラユー O.S.)の専属ではない。事実上専属のような場合もあるようだが、バンドのほうが名前が大きく宣伝される。

 これは村の主催だが、野外ライブ・ショーではイヴェント主催者がいて、警備や会場設営を受け持つらしい。PAシステムはさらに別の会社、ビデオ撮影も別の会社である。ちなみに、この映像が例外的に画質がよい。音はライン録音なので、会場でどれくらいでかい音がするのかビデオからは判らない。

 ここでは、ステージ上にバンドと歌手と男性のMCだけ上がっているが、正体不明の人物がステージにいることが多い。主催者の関係者、その筋の人間、警察や軍隊の警備係もいる。こどもがいることが多いが歌手の子で、職場保育みたいなもんだろうか?

 ステージ上の三人の歌手兼ダンサーは、ユーチューブ上では、かなりアップロードが多い人気者であるが、全国的なテレビには出ていないようだ。キャバレーのおねえちゃんみたいだが、koplo の歌手のなかでは、スタイルがいいし、身長が高い。コスチュームも、日本人の感覚からみて許容内ではないだろうか。赤いドレスのnormaさんが裸足(最初ブーツをはいていたのだが)、青いドレスのlilin ちゃんと 黄色の Rezaちゃんはショートブーツ。

 三人ともレパートリーが広く、最近のヒット曲、lagu pop つまりポップ・ソングのヒット曲やスタンダード・ナンバーから、ロックやレゲエといわれるグループの曲でも、なんでも歌う。みんな歌がヘタだと思った方もおられようが、わたしはその意見に与しない。三人とも、あんまり情感をこめたり気張った歌い方をする歌手ではない。こういった歌い方は、必要とされて選ばれたのではないだろうか。ねっとりとしたヴィブラートを効かせたり小節をふるわせる歌い方ではないのだ。

 ダンスといえるかどうか、ステップや仕草も、垢抜けないと思うかもしれない。ボリウッド・ムービーのようなプロの芸ではない。でも、これが誰でも踊れるステップなのだ。それに、ジャワの伝統芸能のような下半身がどっしりしたリズム感ではありませんか。観衆は、ンチャンチャンチャンチャ…という速いリズムに合わせて踊ってもいいし、その半分のゆったりしたリズムに合わせて上半身を揺らしてもいい。別の映像見てみよう。

CITRA MARCELINA - JANDA 7 KALI  (with Monata Matahari Pekalongan)

 画質は夜の撮影としては、良好。観客の反応がおもしろい。気が短い方も2.20, 4.00, 5.00, 5.50 あたり見て欲しい。ちなみにこの歌オリジナルNaya Revina - Janda Tujuh Kali 。

 もうたくさんだという方も我慢して次のも見てくれ。4.20から観客の反応とダンスがみられる。

Cik Hwa (with OM Bahtera) - Iming Iming 無名の歌手、OMも無名だと思う。「バッテラ寿司バンド」ではなく、「方舟バンド」。オリジナルはRita Sugiartoの熱唱。結婚祝いのステージで、一連の出し物がみられます。

 歌がトホホです。でも、いい体してますね、わたしの好みだ。吾妻ひでおが描く女の子みたいな脚ではないですか。見ているお母さんたちの会話が聞こえるようだ。

「元気がいい娘じゃのう。あんたとこの嫁にどうじゃ?」

「あんな、歌ばかり歌っている娘はダメじゃ」

「いい腰してるわ。元気な孫産めそうじゃないかい」

 以上のようなビデオを紹介したのは、もう読者の方が気がついているように、Koplo(コプロ)というのは、別にストリップショーのようなものではないということだ。それに、若い男だけが熱狂して踊っているわけではない。北朝鮮のマスゲームかサッカーの応援じゃあるまいし、全員が一丸となって熱狂なんかしていない。じっと見ている人もいるし、雑談している人もいるし、踊りたい人は踊っているし、ご祝儀を出したい人はステージの下に集まる。わたしはこれらのビデオを見て安心した。

 安心したけれど、では、このようなコプロのバンド・歌手・芸人が迎えられるのはどうしてだろう? いろいろ屁理屈はつけられる。農村漁村の互酬経済であるとか、昔からの旅芸人の名残であるとか。「その1」で紹介したPro Media Production などビデオ製作会社からのアップロードでは、ダンドゥットばかりでなく各種の芸能の催しが見られる。結局、こういうのが受け入れられる土壌があるということだが、深い理由はわからない。単に熱いから家の中でテレビなんか見ていられない、というのが正解だったりして。

 バンドの編成、サウンドを見てみよう。

MONATA LIVE APSELA 2014 - SODIQ BONGKAR

 人気バンド。リーダーがヴォーカルも取る(ギターを持っていることも多い、あんまりほんとうに弾かないけれど)。見た目はロックバンドと変わらない。

Dian Marshanda(with OM Sonata) - Inting Inting Es 一連のplaylistで、代表的なコプロバンドと、歌のうまい歌手が見られる。(画質も音質もかなり良い)
Lilin Herlina(with OM Pallapa) - Tresno Sudro
Via Vallan (with OM Sera) - Nang Neng Nong Neng などなど。あとはお好みで、youtubeのサジェスチョンを見てくれ。

 まず気づくことは、ドラムスが置かれているが、実際には叩かれていないことが多い。パーカッションは、向かって右端のタンバリン&シンバル、クンダン(もしくはタブラ、もしくはボンゴ)、それにドラマーがスティックを持たずにタブラなどを叩く。パーカッションが三人から四人いるわけだ。リズム・ギター、リード・ギター、ベースが必ずいる。キーボードは二台(二人)。それにスリン。以上である。

 サックス・プレイヤーがいるOMも多いようだが、ほとんどまともに吹いていない。つまり、管楽器はスリンだけになっている。スリンとリード・ギターはおもに前奏・間奏に活躍し、歌の間休んでいるようなもの。装飾音やハーモニーをつけるのはほとんど全部シンセになっている。それぞれのバンドにより、ギタリスト、キーボード・プレイヤーの個性があるが、前奏部分はオリジナルの前奏をほとんど忠実に再現しようとしている。なぜ、こんなに几帳面なのか不思議だ。

 結果として、ダンスバンドになっている。歌手よりもOMのほうが客を呼ぶのだろうか? 観客にとっても、知っている曲をバンドがやってくれればよく、歌手はオマケという感じだろうか。(もちろん、上のリンクのような、いい歌手もいっぱいいるが)

 歌手兼ダンサーのコスチュームは、これはコスプレだ。女性が女性の衣服を着るのを女装とは言わないが、女装コスプレの感覚に近い。派手派手の衣装はインド映画の影響らしいが、最近はUSAのR&BやJ-POPのアイドルのようなコスチュームも多い。願わくは、はやく黒いスパッツをやめて食い込みの深いぱんつにして欲しい。

**********

 最初の曲は元の歌詞を変えて歌っているが、元の歌詞は以下のものらしい。覚えていっしょに歌えれば、楽しくコプロが見られる。ちゃんとした意味のわかる方、教えてください。

Ngamen Lagi 歌詞のテロップが出るのでいっしょに歌って覚えよう!

Mak anakmu ngamen mak
(皆の衆、聞いてくれ、うちの子は)
ngamen neng kos kosan
(小遣いばかりせがんで)
sopo ngerti nasib mujur
kenal perawan lagi kabur
bar sedolah metu bengi kerjo lembur

Mak perawan saiki mak
(まったく近頃の娘は…)
akeh seng imitasi
bocah jek bayi ndek wingi
kenalane papi papi
pamit sekolah jebule kencan lagi
(学校さぼってまたデート)

Kencan lagi kencan lagi
Kencan kencan kencan kencan lagi
Kencan lagi kencan lagi
sambil kencan minum pil extasi
(デートばっかり、ドラッグのエクスタシ錠飲んで)

Ngepil lagi ngepil lagi
ngepil ngepil ngepil ngepil lagi
(ラリって、ラリって)
ngepil lagi ngepil lagi
Asyik ngepil di tangkap polisi

(ブタ箱にはいってもラリってヘロヘロ)

Ngona-ngono salahe sopo
Paling-paling nyalahne wong tumo
Nduwe anak perawan ora di jogo
(子供なんてものは、金ばっかり食うもんだ)
(=だから、お恵みください。?)

ngamenという単語、グーグルの翻訳でもよくわからないが、おそらく、amen(物乞いのことば、お恵みを)に接頭辞 ng- がついた、門付芸人・歌手などを指す単語ではないかと想像するが、どうでしょうか? 詳しい方ご教授を。

 最後におまけで、大道芸の痕跡を残す芸を。歌はバックの歌手が担当し、ダンサーは踊るだけ。5分30秒あたりから、ダンサーがマイクを持ち、客席に降りる。これは、割礼のお祝いのステージなので、見ているのは女性も多い。

live Singa Dangdut PUTRA SKAR KUMBANG ( Penari Ular ) 

 Koploには男性歌手も多いのは、ビデオを見ていればわかるが、プレイヤーはほぼ全部男性だ。女性のプレイヤーはいないのだろうか?

 その疑問を解くため、次にqasidah (イスラム宗教歌)へ行こう!



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