徳川時代の徳川宗家の正室は、御台所(みだいどころ)と云われていたようです。昭和初期の我が家の台所は、土間ではありませんでしたが、日のあたらない片隅に位置していましたから、御台所と台所のあまりの違いに、子供ながら釈然としない思いがありました。
この頃の台所は出世したな!と思うのです。家族団らんの居間の一部として位置する場所を、堂々として与えられているのです。「対面キッチン」です。
ところで、台所は料理を作る場所、家庭の工場です。家族や自分の為に、栄養のバランスのとれた栄養価の高いものを、そしておいしいものを、安価でつくれます。それには、台所は常に賑やかで、そして汚れます。
時代のムードは美しく装って、ピカピカのキッチンを歓迎します。ママたちはキッチンを汚すのを嫌うようになります。料理をつくらなくなります。できるだけ、キッチンを汚さないような、料理しかつくらないようになります。栄養とおいしさは遠のくでしょう。加工されてすぐに食べられるもの、、台所を汚さない食品のみかテーブルにのらなくなります。。食費の予算は同じですので、栄養価の低下と食品の質の低下はまぬかれません。家庭で一番大切な食が、素敵な台所のために片隅に追いやられることを危惧しています。