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2010年4月22日配信
記事の紹介です。
銀行に新たな負担強いるIMFの2本建て課税案、効果に疑問の声も
2010年 04月 22日 16:09
[ロンドン 21日 ロイター] ベンジャミン・フランクリンははからずも「この世の中で、死と銀行への課税ほど確かなものはない」と言ったが、国際通貨基金(IMF)が銀行に対する2本建ての課税を提案したことで、欧米の銀行は年間350億ドルの税負担を強いられかねない状況に追い込まれた。
IMFが提案したのは、金融セクター救済コストをカバーする目的で金融機関の負債に課税する「金融安定貢献税」と、金融機関の利益と報酬に応じて課される「金融活動税(FAT)」。
銀行が金融危機を招いたとの批判が広がるなか、米政府が1月に世界の銀行に対する課税を提案して以来、課税を支持する声が高まっている。欧米各国は危機救済に要した納税者の資金を少しでも取り戻そうとしており、銀行への課税強化はもはや避けられないムードとなっている。各国政府にとって、今後2カ月のうちに税体系や課税方法を決定することが大きな課題となる。
キーフ・ブリュエット・アンド・ウッズのアナリスト、アンドリュー・スティンプソン氏は「米国型の課税が欧州でも導入されれば、190億ユーロ(255億ドル)の税が徴収され、正常化した後の銀行の利益を6―10%押し下げる可能性がある」と推測する。
もっとも、銀行によってその割合は1%から21%まで大きな開きが予想され、デクシア(DEXI.BR: 株価, 企業情報, レポート)を筆頭に、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)(RBS.L: 株価, 企業情報, レポート)、クレディ・アグリコール(CAGR.PA: 株価, 企業情報, レポート)などが最も大きな影響を受けると見込まれている。
ドイツ銀行(DBKGn.DE: 株価, 企業情報, レポート)やBNPパリバ(BNPP.PA: 株価, 企業情報, レポート)など、バランスシートが大規模な銀行も大きな影響を受ける一方、スペインやイタリアの銀行など預金量の多い銀行は影響が軽微で済みそうだという。
IMFが提案した2種類の税のうち、利益と報酬に対する「FAT」は銀行関係者にとって予想外で、反発の声も広がっている。
BNPパリバのアナリスト、イアン・ゴードン氏は「FATは厄介で、課税ベースが広い範囲にわたることになる。あまりにネガティブな結論を導き出すのは時期尚早だ。2本建てのアプローチは予想していなかった」と述べている。
アナリストは、FATは高リスクの活動を抑制する効果を示すよりも、健全な銀行に負担を強いる可能性があり、金融機関にとって歓迎せざるものだと批判する。もっとも、金融機関の過剰な利益や報酬に対する批判が高まっていたことを考えれば、さほど意外なことではないとの声もある。
FATによる影響については、その税率や課税方法にも左右されるが、たとえば英国が2%の税率を課した場合、税額は国内総生産(GDP)の0.1―0.2%に上る可能性がある。
IMFは「金融安定貢献税」について、税額はGDPの2―4%に達する可能性があると試算している。当初は同一の税率で導入され、いずれリスクを反映した形に修正していく方針。アナリストは、それにより欧州の銀行が負担するコストは130億ユーロから500億ユーロになる可能性があると予測している。
一方、英国の法律事務所、スローター・アンド・メイのパートナー、ジャン・パトニス氏は、IMFの提案には、銀行のリスクテイクをけん制する効果はほとんど期待できないと指摘、むしろ課税によって利益が圧迫された結果、銀行はさらなるリスクテイクを追求することになりかねないとの懸念を示した。
IMFの提案に対し、真っ先に銀行課税を提案した英国は歓迎の意を表明したが、日本やカナダなど金融危機の影響をさほど受けなかった国は、提案に反対する姿勢を示している。カナダ政府高官は、20カ国・地域(G20)の間でIMFの提案への幅広い支持が得られるかどうかは疑わしい、との考えを示した。
(Steve Slater記者; 翻訳 長谷部正敬)
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