うたのすけの日常

日々の単なる日記等

もう仔猫とは言えない

2014-11-06 03:05:19 | 日記





もう既に家へ来て4カ月?が過ぎた。風貌はまだ幼げだが、来月には可哀そうだが去勢しなくてはならない。このことは全て娘と孫が仕切っているので、その点は気楽ではある。しかしこの数か月みなが出払ってしまうと一日中猫と付き合わなくてはならぬ。
なにしろ勝手気ままは猫の本性、まして子ども故その奔放さは半端ではない。一例を挙げれば、あたし共の居室の障子は無残な姿である。はやく成長して落ち着いてくれるのを待つしかない。
 階下のリビングの壁紙は剥がされ、その壁紙はおもちゃ代わりと化している状態である。かみさん曰く、あと少しの辛抱と。 


元寇の役

2014-11-05 08:42:13 | 一言

 中国漁船のサンゴ密漁、まさに軍団の襲来の規模で伊豆諸島周辺や小笠原諸島の領海まで出没している。数百の船団の領海侵犯はどうもサンゴの密漁が主目的ではなく、中国政府の日本にたいする尖閣に端を発した軍事行動ではないだろうか。日本漁民や沖縄島民、そして小笠原の東京都民をも恐怖に落とし入れている。日本の首都に対する侵犯行為と見て取れるのではないだろうか。
 そして季節外れの台風の接近である。国土交通相がこの事態にいち早く反応を示し、「台風で漁船が小笠原諸島に避難してきた場合でも上陸させない」と述べている。まさに正論である。
 元寇の役の再現は何が何でも防ぐことが緊急の課題である。


あすか共和国の興亡 十八

2014-11-03 04:41:20 | あすか共和国の興亡

 突如アナウンサーの声が途切れる。扉の開けられた玄関から、自動小銃を構えた覆面に黒ずくめの男たちが飛び込んでくる、数名を残し二手に別れ二階と右手の厨房へと敏速に動く。同時に戸外で立て続けに銃の発射音がけたたましく鳴り響く。広間に女性子供たちの悲鳴が起きる。

 

覆面1 動くな、騒ぐな。(いきなり天井に向かって銃を連射する、悲鳴が再びあがる。外交官の兵士は覆面の男の一喝で銃を捨て両手を挙げる)残念だが客人は来ない、門前でお帰り願った。女子供それにあすかの部外者は直ぐ表へ出るんだ!

覆面2 表で仲間が門外に誘導する、手早く動け。そうだそうだ、その調子だ。

沢田  きさまたちは何者だ、昭島すまん(沢田、昭島に寄る)油断した。

覆面1 動くな、喋るな、きさまたちは手を下ろすんじゃない。

 

夫人たちは男たちに急かされながらも、それぞれの子供たちの手を握り立ちすくむ。

 

秋田  官房長官!(昭島に駆け寄ろうとするが覆面の男に阻止される)

昭島  大統領!(絶叫する昭島の喉元に銃口が突き付けられる。夫人たち悲鳴をあげる)翔太  (覆面の男の隙をみて翔太が井沢に縋り付き泣き叫ぶ)先生、行きたくないよ…

井沢  翔太、(翔太を抱こうとするが、覆面の男軽々と翔太を抱え上げ井沢を突き放す)

 

一同昭島たちと言葉も交わす事も出来ず、嗚咽しながら振り返り振り返り広間を後にする。厨房から男たちに小突かれながら料理人やウエイターたちが表へ出される。やがて覆面の男たちと昭島たち七人は静まり返った広間に対峙する。

 

覆面2 とんだ愁嘆場を見せやがる。

覆面1 奴らの体を調べろ。

沢田  拳銃は所持していない。

覆面1 口をきくなと言ってある。(覆面の男たちが手荒く昭島たちの体を調べる)銃は所持してないようだな、不用意だったな。しかし賢明だった、余計な犠牲者を出さずに済んだからな。

島本  婦人や子供たちはどうした!(覆面2いきなり島本を蹴る)

覆面1 よし、手を下ろせ。口をきくことを許す。

昭島  ここをあすか共和国と知って襲ったのか。婦人や子供たちは、

覆面1 あすか共和国?ほざくな、世迷い言はいい加減にしろ。

覆面2 お前たちの言うあすか共和国の大統領一行並びに家族は、銘々それぞれの家庭に戻した、今から普通の生活に戻る。平穏な日常に帰ったのだ、余計な心配はすんな。

井沢  大統領は?ここが大統領の…

覆面2 秋田智子は子息と一緒に秋田会長の家へ送り届ける。秋田次官もそこにおられる。

覆面1 人質全員それぞれの肉親の元に無事送り届ける。

昭島  それがお前たちの目的か。警視庁の特殊部隊か。

覆面1 (昭島に答えず)あとはお前たちの処遇だ。

島本  貴様たちは何者だ名乗れ(島本、言うなり覆面1にとびかかり覆面を剥ぎ取る、覆面2、島本を銃の台尻で殴り島本仆れる。沢田と仆れた島本驚愕の声をあげる)

沢田  あなたは…

島本  よるか駐屯地の…

沢田  ゲリラ対策部隊の隊長…

覆面1 (素顔を暴かれた事に狼狽しながらも威厳を崩さず)そうだ。貴様たちよくも「よるか師団」の顔に泥を塗ってくれたな、自衛隊を世間の笑い者にしてくれたな。だがそれはいい、責めまい。俺たちは屈辱に耐えるのには馴れている。しかし貴様たちのとった行動を見逃すわけにはいかない。自分たちの夢を見るのは勝手だ、政府を批判するのも結構、世界を盾に日本の改革だと宣うのも自由だ、しかしきさまたちの行動は身勝手だ。ここは日本だ、この地は日本人のものだ。だれも自由勝手にいじくり廻す事の出来ぬ日本人全体のものだ。日本を変えるというなら日本人として行動しろ。その気魄を持て。金の強奪が失敗したからといって、変わり身も素早く外国をダシに、女子供を操り英雄気取りで闊歩するのは許すことは出来ない。甘ったれるな!

沢田  隊長殿、それは違います。

島本  隊長殿、自分たちは夢かも知れませんがそれを追ったのであります、日本の新生を願って。決して英雄気取りなぞ…

沢田  自分たちは決して自衛隊をないがしろにはしていません、私心を捨て日本の将来を見据えて事を起こしたのであります。止むに止まれぬ行動であります。

島本  隊長殿、事は成就したのであります。微かではありますが、光はみえたのです、日本の将来に明るい展望が開かんとしているのです。どうかこのまま撤退して下さい。

覆面2 黙れ島本、理屈はどうにでも後からつけられる、いいか、制服は政治に関与しない、それが鉄則だ。許せん!それより隊長の覆面を剥ぐなんて余計な事をしたな。

覆面1 まあいい、ここへきてはもう多くは語るのは止そう。貴様たちの処遇については部内で激論があったが、結論はアメリカ大使館へ全員身柄を亡命させるため移送する手筈だった。だがそれも儚い夢となるのか…沢田、島本、貴様たちは元自衛隊員だ、覚悟は出来てるだろうが、残りは民間人だ。強盗犯とはいえ殺人者ではない…

覆面2 隊長、秘密の漏洩は許されません。自分がやります。

     

覆面2の血走った声に昭島たちに驚愕のどよめきが走る。

 

昭島  俺たちを殺すのですか。

覆面2 止む得んだろう。俺たちに身元は無い、その無い身元が知れては国の存亡に関わる。

沢田  隊長殿、仰せの通り自分たち二名は元自衛隊員であります。自分の身は自分で処します。しかし彼らは…

覆面1 わかっている。

覆面2 隊長、恩情は許されません。長官のお立場はどうなります。我々は一心同体であります。全員この場で射殺します、命令を下さい、命令を…

 

覆面の男たち一斉に銃を構える。沢田島本を除き、皆恐怖に顔をひきつらせ身を寄せ合う

そこへ二階や厨房へ散っていた覆面の男たちが戻る

 

覆面3 火器弾薬全て奪取。建物爆破の準備完了。爆破定刻5分前であります。 

 

表から数人の覆面の男たちが駆け込んでくる、その場の緊迫に息を飲む。

 

覆面4 部外者は全員門外に誘導退去完了。各国大使には丁重に接し、穏便にお帰りいただきました。

覆面5 女子供は家族別に車両にて各家庭への送還作戦無事完了。 

覆面1 ご苦労、撤退準備。

覆面2 隊長、ご決断下さい。命令を!

 

広間に重苦しい空気がじょじょに充満していき、覆面の男たちの構えた銃は微動だにもしない。舞台溶暗。途端にすざまじい轟音が鳴り響き、幾条もの閃光が暗黒の舞台を縦横に走り何回となく点滅を繰り返すうち火炎が渦巻き、そしてもとの暗黒に戻る。静寂の中、ニュースの声が流れる。バックに荘重な悲壮感こもる音楽が奏でられる。

 

「ここでただ今入りましたニュースをお知らせいたします。今夜七時あすか市あすか町一丁目一番地あすか共和国の大統領官邸に国籍不明の武装集団が押し入り官邸を爆破、炎上させました。死者負傷者は出ておりません。大統領一行並びに家族は、直前に難を逃れ、日本国内にあるそれぞれの肉親の家に避難しました。なお国籍不明の男たちの行方はわかりません。政府は直ちに記者会見をし、官房長官より次のような談話が発表されました。政府と致しましては、閣議であすか共和国承認の決議をし、通告直前の出来事でした。爆破炎上した大統領官邸の惨状を目の当たりにして、唖然たるおもいであります。しかし事件はあくまであすか共和国の国内問題でありまして、日本政府の関与する余地は全く御座いません。また許されません。成人男子を除くあすか共和国大統領一行は政府に政治亡命を求め、政府はこれを認め保護、大統領並びに閣僚要人の諸氏と腹蔵なき協議を重ね、両者に於いてあすか共和国の自然解体を確認しました。よってあすか共和国の国土は日本国に復帰、ここに一連の事件は単純明快な解決をみたわけであります。まことに世界に誇る欣快な終結であります。ニュースを終わります」暗転

 

                                    (10)

 

舞台溶明 瓦礫の山と化した秋田邸の跡地に秋田智子が婉然と立っている。その姿とはうらはらに鎮魂曲が呻くように流れている。

 

秋田  昭島様ほか皆様の消息が不明なのが、いま一番気掛かりでございます。皆様には一連の夢を見させて頂いたことに、心より感謝致しております。若者たちの自信に満ち溢れ、昂揚した姿はいまは私の瞼の裏に、かげろうのようにたゆたうだけになってしまいました。若者の強さしなやかさの裏側に、儚い脆さが限りなく秘められていたのを悲しく思い知らされました。人間の営み、国家盛衰の歴史の蓄積、その背後に潜む、獣たちの弱肉強食の世界を凌ぐ無残を目の当たりに見せられました。粛然といま、無情の虜と堕ちた自分に涙しております。しかし展望はもたされました。 私はこの屋敷跡を瓦礫をこのままに保存し、あすか市に市民公園として使用して頂きたく寄贈いたすつもりです。うたたかの夢と消えましたが、隆盛の極みの華やかさ、亡国の儚さに寄り添った美しさを、私は脳裏から消し去ることは出来ません。あすか共和国の誕生の地、崩壊の地としての証しをこのまま未来永劫にこの地にとどめておきたいのです。将来、マヤ遺跡、ボンペイの史跡、アンコール・ワットの寺院遺跡と並び、人類栄枯盛衰の栄華と悲劇の綾なす聖地と讃えられ、世界遺産と称され、あすか共和国の名を世界史の一頁にとどめることでしょう。そしてこの瓦礫の山は黙せども、世界平和と日本の正しき進路を指針し繁栄を示唆する礎となるでしょう。                             

 

                         幕

 

 


あすか共和国の興亡 十七

2014-11-02 10:02:21 | あすか共和国の興亡

 

会場にどよめきが走る。大統領始め閣僚たちは紅潮した顔で握手を交わす。そして一カ所に集まりなにか協議を始める。

 

昭島  ここで一旦質疑を中断させて頂き、ただ今の日本政府の発表に関してあすか政府の対応を発表します。承認免罪の件に結論が出ない事は遺憾ではありますが、大筋で歓迎であります。特に生活路線全てが確保出来たことに安堵しております。あすか政府といたしましても国境の日本国民の自由往来になんら制限は設けません。国境には扉も設けません。なお今後さらに両国間で煮詰めなければならぬ事が多々あるので、早急に事務レベルでの協議を開催することを日本政府に提案します。以上であります。質問を続けて下さい。しかし残念ではありますが約束の時間がすので、最後の質問とさせて頂きます。ご了承下さい。

質問  先ず当面のあすか国民の、生活基盤が確立された事にお祝いもうしあげます。その事に関してですが、あすか共和国は食糧自給率は0との発表です。今後その点についていかなる方針がお在りなのでしょうか。

原田  私農林水産大臣からお答えいたします。私秋田家に永年お手伝いとして勤務致しております原田まりです。若干生鮮食糧品に欠ける恨みは御座いますが、先ず当面約一月分の食糧備蓄はございます。しかしその後は日本政府のご好意に甘えて、輸入に頼らざるを得ません。将来的には品目によって自給自足を目指しております。

昭島  つきましてはこれに関連しまして国土庁長官より、補足の説明を致させます。

神宮司  国土庁長官、神宮司真利子で御座います。ただいま農林水産大臣より、将来的には食糧の自給自足をとのお話がありましたが、この地あすか市は、戦後日本政府の指導の元官民一体となりましての開発が進められた新興都市でありますが、まだまだ手付かずの侭の丘陵地帯が広大な広がりを見せております。水の豊富なそして緑豊かな丘陵が延々と続いております。幸いここに大統領ご一家は膨大な父祖伝来の土地をお持ちです。未来は明るうございます。開拓事業を資金の調達のメドさえつけば、日本は元より海外からの開拓移民も受け入れ、事業を推進させます。様々な農産物の産出が可能となります。将来の輸出も視野に置き展望は大きく開きます。しかしこの事は、日本とあすか共和国の間に友好関係が一日もはやく築かれることが、大前提であることは言うまでも御座いません。

昭島  それでは残念ではありますが、記者会見を終了させて頂きます。終了に当たりましてあすか共和国大統領からのお知らせがあります。

秋田  (今は威厳さえ感じる堂々たる物腰で立つ)あすかは日本を除く世界の大多数の国々から承認を頂きました。自ら独立の尊厳を維持し、世界平和を希求しそれに貢献する事を改めてここにあすか共和国朝野を挙げて宣言します。さて、前途多難な独立の存続ではありますが、一筋の光明が前途に兆しております。それは我が国に続々と寄せられる各国のご好意であります。いの一番に大統領直々に親書をお寄せ下さり承認されたアメリカ合衆国。それに諸手で協賛されたイギリス。外人部隊の派遣の検討をして頂いたフランス共和国。この小国に不可侵条約を締結せんと、率先して手をさしのべられたロシヤ連邦。ドイツ連邦共和国からはイタリア共和国と連携して、我が国と「あ独伊三国同盟」を締結せんとの打診を頂きました。オーストラリア連邦からはコアラの寄贈のご好意が御座いました。そして隣国大韓民国大統領は食糧の無償供与を表明され、先刻在日大韓民国大使館よりその第一便として、米、唐辛子、キムチが積まれた貨物船が釜山港を出港したとの連絡が御座いました。次ぎにこれは余談ではありまかが、北朝鮮からは衝撃的な申し入れが…内容は極秘ですが、丁重にご辞退しました。(会見場に呻きとも取れる嘆声が起きたが、すぐに歓声に変わり拍手が沸き起こる)世界的規模の支援のもと、あすか共和国は確実に独立の一歩を踏み出しました。今後は日本政府の一日も早い承認を願って止みません。(深々と頭を垂れる)

 

舞台溶暗 テレビ局、記者団も去り、静けさの戻った広間に一際大きく昭島の声が響く。

 

昭島  沢田、あすか署の署長に、直ちにあすか国に対する通信機器の盗聴を止めるよう通告するんだ。島本、お前はNTTに盗聴設備を直ちに外し、今後あすか共和国に対しての盗聴には関与も協力もしないという誓約書を提出させろ。郵政省にはあすか共和国に関する郵便物の検閲をしないとの確約を取れ、以上の経緯を新聞紙上に公表させろ。いいな、もし違約行為があった場合は国際世論に問題提起し国際法廷に提訴するとな。

 

舞台暗転の中。総理官邸の一室からか総理と官房長官のやりとりが流れる。

 

総理  見たか聞いたか、北朝鮮がミサイルを提供するだと匂わしやがった。小賢しい真似しやがる大嘘もいいとこだ、脅しをかけやがって。

官房長官 あの昭島ってのが主犯格の男ですよ、揺さぶりをかけてんですよ。なかなかの策士ですな野郎は、

総理  だから俺はT大出は嫌れえなんだ、小利口ぶって先々と手を打ってあすか共和国の既成事実を作っていきやがる。おまけに盗聴を止めろなんて差し出がましい指図しやがる、飛んでもねえってんだ、そんな事一々聞いてたらこちとらおまんまの食い上げだな。野郎たち何様のつもりでいやがるんだ、言いていほうでい抜かしやがってからが。ええっ!(怒り心頭に達している)

官房長官 まあまあ総理、怒ったら負けですよ。耳寄りな情報がさっき入りましてね、

総理  何だ、

官房長官 へえ、警視庁の特殊急襲部隊のベテランが十四人、退職願いを出して消えちまったそうです。

総理    それを先に早く言えってんだ。うふふっ、そういう事か。てえ事はなんだな、

官房長官 そういう事です。

総理  清水港二十八人衆勢揃いってとこか、防衛庁本腰だな。警視庁もやるじゃねえの。猶予はならねえ、さっきのテレビ見たろう。あすかの国土庁長官、神宮司とかいったな、なかなかいい女だ。うちの国土庁の大姐御より上いくな。まあそれは置いといてだ、あすか丘陵開拓云々と抜かしやがった。あすこは俺っちの縄張りだぜ、こりゃ侵略だ。ぜってい許せねえ。

官房長官 ごもっともで、いよいよ性根の据え所ですぜ。総理はあくまで知らぬ半兵衛を決め込んでくだせえよ、くれぐれも。ようござんすね。浮足立っちゃあ元の木阿弥、取らぬタヌキの皮算用になりかねねえ。しめっくりはあっしがつけます。

総理  わかってらな、だが防衛庁、抜かりなくやるだろうな。

官房長官 (呆れ声で)これだ、またいつもと変わねえ取り越し苦労を。それより総理、二十八人衆の骨を拾ってやっておくんなせえよ。

総理  命を落とす者がいたら靖国に忠魂碑を建ててやるぜ。

官房長官 それがいけねえってんですよ、参拝だけでも騒ぎなのに、今どき忠魂碑なんて、そんな事いうからマスコミに叩かれんですぜ。懲りねえんだから。

総理  ほうっとけ、あっはははっ、それより石神って広報官、てめえの事ゴッドストーンて吐かしやがった。何かぃ、そんじゃ俺はスモール……ううっ、何とかかい。

 

                                     (9)

 

舞台溶明 あすか共和国建国から一カ月後あすか邸の広間。舞台は一段と明るさを増し、華やいだ雰囲気が充満し、弾くような燦きが横溢している。それもその筈今夜はあすか共和国建国祝賀会が催される夜。正面にはあすか共和国建国祝賀会と大書された横断幕が掲げられている。着飾った秋田大統領が満面笑みを浮かべ、女性閣僚たちいずれも華やかな衣装を纏い広間を行き来する。内閣広報官石神ルミコがドレスの裾をひるがえし、軽やかな動きでウエイターたちに次々とを指示を与え一人しきりに時間を気にしている。重厚な、ときには軽快な音楽が会場の興奮を弥が上にもかき立てる。広間の中央には、フランス外人部隊の兵士が、スマートな礼服で微動だにせず直立している。祝賀会開催の定刻なのか、スタンバイしていたテレビのカメラが動きだし、アナウンサーの高揚した声が会場の模様を逐一描き始める。

 

「もう間もなく開催の時間です。大統領始め閣僚たちが賓客を迎えるため威儀を正して玄関脇に居並びます。今夜のあすか共和国の要人たちの衣装は日本橋三越の好意によって誂えられたものであります。そしてこの世紀のイベントは電通が総力を挙げて企画からすべて無償で参加しております。料理飲み物一切は帝国ホテルの提供によるもので、料理人ウエイター共々帝国ホテルから派遣されております。あっ、今、井沢文部省補佐官に引率された少年少女たちが、あすか国旗と日の丸の小旗を手に、可愛い揃いのセーラー服姿で螺旋階段を躍るように降りて参りました。申し遅れましたが護衛として起立する外人部隊の兵士はフランス大使館のアイデアで、大使館の外交官が扮しているものです。なお手元に配られました資料によりますと、今夜の招待客には、あすか国を承認された国々の元首は身辺警護の問題から敢えて招聘状は送らなかった由であります。しかし日本国在任の大使領事は夫人同伴で、すべて招聘に応じておられるそうであります。従ってあすか政府は、賓客の安全を確保するため日本警備保証会社のベテラン、屈強な警備員を配置しております。しかし残念と申すのでしょうか、未だ日本政府は世界の動向に背を向けあすか共和国の承認に至らず……」


あすか共和国の興亡 十六

2014-11-01 04:31:12 | あすか共和国の興亡

 

昭島 ですから我々はこうして世界各国の記者団をお招きしてお話しているのです。今後は定例記者会見を持ち、具体的にあさか共和国の姿を世界に顕示する方針であります。テレビ放映は補助的なものとご理解下さい。

 

テレビのアナウンス「ここでただ今入って参りましたニュースをお知らせします。本日早朝防衛庁長官が辞表を提出しました。総理はこれを受理しましたが、その後長官は防衛庁にも私邸にも姿を見せず、その行方は杳として掴めておりません。辞表は防衛庁次官によって届けられましたが、その際小瓶にアルコール漬けされた小指が二本添えられていたそうです。 それに関して官房長官がコメントを発表しております、『なにも一本でいいのに二本も詰めるとは長官らしい』以上。なお後任その他についてはいまのところ情報は入っておりませんが、防衛庁長官の更迭は現内閣にとって三人目という事になります」

 

記者会見場のやり取りが行われている間、総理と官房長官の会話が流れる。

 

官房長官 総理、奴さんどこえ消えちまったんでしょう。

総理  なんか情報が入ってねえのかい。

官房長官 いまんところね、(にんまりとして)それより総理、防衛庁の警務隊から極秘情    報がへえってます。

総理  なんだって?

官房長官 明け方自衛隊のですね、ゲニラ対策の特殊部隊の腕っこきが、十四名姿をくらましたそうです。完全装備で、

総理  なんだと!

官房長官 驚くには当たりませんでしょう、総理の読みの通りでしょうが。泳がしておきやすぜ、あっしが総理に代わって泥は被りやす、奴らの動きを陰で助けやす。

総理  (満足気に)そうかい。

官房長官 奴ら今もテレビで言いていほうでえ抜かしてやがる。

総理  いいって事よ、飴しゃぶらせておけってんだ、今に吠え面かかせてやる。なんだな、こうなると防衛庁が頼みの綱ってわけだ。

官房長官 そういう事で。

総理  なんたって国の面子ってもんがあるんだ、餓鬼のままごとといつまでほうって置くわけにやぁいかねえ。

官房長官 その通りで。それよかアメリカの大統領からなんか言ってきやしたかその後。

総理  あはははっ、言って来たよ、ホットラインで。案の定決まり切った経済問題で、ああだこうだってイラクまで持ち出しやがった。こっちが鵜呑みにすりゃあ、あすかの承認はエイプリルフールのジョークでとぼけるときやがった。

官房長官 それで何と。

総理  決まってるじゃねえか、こっちもとぼけてやったな昨日の筋書きどおり、のらりくらりのおとぼけ戦術よ。舐められてたまるかってんだ。いっそあすかを承認するてったら奴さん慌てるだろうな。あはははっ、

官房長官 それじゃ。

 

質問  あすか国民の国籍問題ですが、現実に照らしてみても皆さんは現在日本人であり、    それぞれのご家族も日本国籍を有しており、ご伴侶が日本国内に生活手段を持ち、    日本国に対しての納税義務者であるわけです。また保有されていると思われる資産、    動産不動産も日本国内にあり、日本の法律に依って保護され、有形無形の権利も法    治国家としての日本国に保証されているわけです。今後いかに対処されるのかお答    え頂きたい。

山内  (得たりと言った笑顔を浮かべ)明快にお答えできます。あすか国民は日本国籍を持つ者の家族ですよ。必然的に私たちは日本国籍を持ち、日本人として有形無形の権利義務を履行する責務を負うものです。その上で国籍はあすか共和国にも有ります。端的に絞って申せば二重国籍者です。ご理解頂けますかしら、卑近な例を上げればフジモリ前ペルー大統領がいい例だと思いますわ。フジモリさんはペルー国籍でありながら、同時に日本国の戸籍簿に本籍地が登録されている日本国籍者でもあるわけです。従って日本政府は日本の国内法に依って、ペルー政府の身柄引き渡しを拒否し、ペルー国会からの召喚状のフシジモリ前ペルー大統領への召喚要請さえ拒否しております。このことは、皆さんよくご存じですよね。以上です。 

 

会見場に異様な雰囲気が醸し出され、ざわめきが寄せては返すといった状態が続いている。

 

質問  すみませんが、ここで視点を変えて素朴な質問をさせて頂きます。よろしいでしょうか、最前からの質問に対して回答される皆様は澱みなく、それもなんら手元に資料の用意もなく答弁される、その事自体驚きなのに時間的に突発的な事件からいくらもたっていない。それなのにこの答弁、どう我々記者団は推測したらよろしいのでしょうか。冒頭の質問にもあったように、あさか共和国建国の裏側になんらかの事前工作、地下工作、きつい推測になりますが、国際的な謀議があったのではないかといった疑問です。即ち日本をおとしめる謀略があったのではないかという事です。いかがでしょうか。

 

会見場に呻きに似たどよめきが走る。

 

石神  (満面に笑みを浮かべて記者団を睥睨するかのように立ち上がる)私たちは昨日から一睡も致しておりません。あすか共和国を建国するについて建議し激論を交わし、衆議一決、皆様にお答えする国是をみたのです。なんらためらいもなく日本国民としての、そうです、恥です。その恥を気後れすることなく払拭するために建国に奔(はし)ったのです。日本人である皆様を前に失礼極まる発言ですが…建国自体も無謀そのものです。しかし止むに止まれぬという言葉があります。恥が私たちを煽ったのですよ。

質問  内閣広報官、具体的に恥とは?

石神  その前に断言します。国際的な謀略といったご質問は笑止です。私たちにも日本人の血が脈々と流れているのですから…では、改めてお答えします。皆さんは現在の日本の現状をどうみております?政治、経済、人心、世相、あなた方が毎日書かれる記事に溜め息が出ませんか、苛立ちを感じませんか。あらゆる新聞雑誌テレビ・ラジオ所謂マスコミ記事、識者と言われる方々の論評全て、飽きることなく一国の指導者、与党野党の政治家を隈無く酷評し糾弾しております。しかし、その政策なりを変えさすことは出来ないでいる。ただ喚いているだけ、そして諦め悪循環は続き、世相は荒れ放題、自分勝手の人間が巷に溢れ人心は荒み少年は非行に走り、国民は戸惑ってただ息を呑むけでお手上げ状態。この日本に未来がありますか、希望を持てますか、政治面経済面社会面それらの記事を書きながらペンを持つ手が怒りに震えませんか、悲しみの涙で紙面が濡れませんか。子供たちにこの現状のままの日本を預けることに心の痛みを感じませんか。(改めて会場を見渡し皮肉っぽく薄笑いをしながら)それとも諦め半分馴れ合い気分で記事をものにしているのですか。私たちはキレました。そして日本からの独立を謳ったのです。よろしいですか、あすか共和国はこうした日本の恥を拭い、日本丸という船の舵取をする指導者の破廉恥振りを冷静に見守り、正しい航路を進んで頂きたく警鐘を鳴らし続けるのです。

 

記者団から一斉に拍手が起き、しばしの間鳴り止まず、外人記者は「ブラボー」ト歓声を挙げ、床を踏み鳴らす者もいる。

 

質問  只いま感銘を受けましたお話の中に日本の子供たちのお話が出ましたが、あすか共和国の子供たちの教育問題はどうなるのですか。

高梨  文部大臣高梨美沙子です。それは一つに日本政府の共和国への対応次第です。私たちは決して日本の教育現状に満足しているわけではありませんが、当面子供たちは日本への留学を希望しております。子供たちには集団生活が必要ですし、また通い慣れた地域でもありますし。その上で日本の教育制度、教育基本法といった面からも、いろいろ日本の文部省に意見を申し入れるつもりでおります。根本的な教育改革を進言する事も念頭に入れております。

 

テレビのアナウンス「記者会見の時間者残り少なくなってまいりましたが、ここで先ほど総理官邸で行われました、官房長官の記者会見での発表をお送り致します。『ただ今官邸におきまして臨時の閣僚会議が持たれ、あすか共和国問題について当面次ぎの方針で当たる事を決定しました。あすか共和国の承認問題、また銀行の現金輸送車襲撃事件の免罪は、現時点では結論には達していません。ただし早急に国内法に照らし、或いは国際事例をつぶさに研究し、国際法は勿論法曹界の識者の意見をくまなく取り入れ、遅からぬ段階で結論を出す事に意見の統一をみました。日本国とあすか共和国との国境は今後とも封鎖はしない。あすか国民の日本国への出入国を原則として認め検問は行わない。また日本国民のあすか国への出入国に一切の制限をしない。因ってあすか共和国児童の、日本国内の学校への留学通学は人道的教育的見地からも認める。あすか政府ならびに国民の日本領土内での、あらゆる物品の購入の自由を認める。ただし決済は円に限る。また水道下水ゴミ処理については先の都知事の従来通りという方針に従い、政府としては一切関与しない。電気ガス電話放送受信についてはあすか共和国とそれぞれの供給会社との協定に、原則として介入しない。郵便物の集配は大局的見地から黙認する。あすか共和国からの119番通報はこれを受理するが、110番通報は紛争を避けるために受理しない。以上です』」