草にも風が出てきた豆腐も冷えただろう<o:p></o:p>
今日いちにち無事に暮れようとしています。夏も終わりの季節、夕暮れともなれば涼風が庭草にそよぎます。今宵の酒のつまみは豆腐ですか、釣瓶の豆腐もさぞかし冷えたことでしょう。<o:p></o:p>
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風がすずしく吹きぬけるので蜂もとんぼも<o:p></o:p>
蜂もとんぼも陽盛りの暑さには、きっと息も絶え絶えになるのではないのか、山頭火はやさしくそう考えるのです。そんなとき涼しい風が空気を揺らして吹きました。とんぼが軽やかに回転して風に乗って息を吹き返します。蜂ももちろん、しっかりと花にとりつきその姿を花びらに隠します。<o:p></o:p>
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ふるさとの水をのみ水をあび<o:p></o:p>
山頭火、故里の二字にこだわります。山であれ川であれ、家並みにしろ道筋にしろ。遊吟漂泊の身にあっては、訪ねるに辛い面もありますが、避けては通れない場所といえます。息が途切れるほどの切なさ愛しさがこみ上げてくるのです。山頭火の故里賛歌といえます。<o:p></o:p>
汲み上げて飲む水は、また一入といったところでしょう。<o:p></o:p>
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誰にあげよう糸瓜の水をとります<o:p></o:p>
優しさがじわあっと滲んできます。そして幾分気にもなります。誰にあげよう、贈ろうというのですか。さし当たってヘチマコロンでしょう、しゃがみこみ細工を施した成果に山頭火は微笑みます。<o:p></o:p>
糸瓜のつるを茎の根元あたりを鋏で切り、差し込んだ瓶には透明の液体が溜まっています。微かに鼻腔に独特の香りが匂います。<o:p></o:p>
自家製の化粧水です。<o:p></o:p>
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