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日本の奇祭28「長崎くんち」

2014年07月28日 | 日本の奇祭

一年を通して日本全国の各市町村で何らかのお祭りが必ずあります。

故郷を思うとき、まず思い出されるのが祭りではないでしょうか?

 

ただ世の中には、地元の人には普通で真剣なんだけれど、

外部の人から見ると摩訶不思議な世界に見えてしまう祭りがあります。

これを世の人は「奇祭」と呼びます。

 

奇祭とは、独特の習俗を持った、風変わりな祭りのことと解説されています。

 

これを、人によっては「とんまつり(トンマな祭)」

「トンデモ祭」とも呼んでいるようで、

奇祭に関する関連書物も数多く出版されています。

よく取り上げられるのは、視覚的にインパクトがある祭り

(性器をかたどった神輿を担ぐ祭りなど)がよく話題になりますが、

ほかにも火を使った祭りや裸祭り、地元の人でさえ起源を知らない祭りや、

開催日が不明な祭りなど、謎に包まれた祭りはたくさんあるようです。

 

これから数回に渡って奇祭を特集していきます。

その多彩さに驚くとともに、祭りは日本人の心と言われるゆえんが、

祭りの中に詰まっていることが理解できるでしょう。

 

特に言う必要はないと思いますが、

以下にふざけて見えようと馬鹿にしているように見えようと、

れっきとした郷土芸能であり、

日本の無形民俗文化財だということは間違いありません。

 

今回は、長崎県の長崎くんちです。

 

長崎くんち(長崎諏訪神社:長崎県長崎市)

 

長崎くんちまたは長崎おくんちは、

長崎県長崎市の諏訪神社で10月7日から9日までの3日間開催される祭礼です。

国の重要無形民俗文化財です。

 

「龍踊」「鯨の潮吹き」「太鼓山」「阿蘭陀万才」など、

ポルトガルやオランダ、中国など南蛮、紅毛文化の風合いを色濃く残した、

独特でダイナミックな催し物を特徴としています。

 

 

地元では一般的に「くんち」と呼ばれますが、

お諏訪様(諏訪神社)への敬意を表し「おくんち」という人もいます。

「くんち」には「宮日」「供日」という字があてられることがありますが、

その名称は旧暦の重陽の節句にあたる9月9日(くにち、

九州北部地方の方言で「くんち」)に行ったことに由来するという説が有力です。

 

博多おくんち、唐津くんちと並んで日本三大くんちと呼ばれています。

 

くんちは、前日(まえび、10月7日)、中日(なかび、8日)、

後日(あとび、9日)の3日に分けて行われます。

諏訪神社に祀られている三体の神体が、

前日に諏訪神社の本宮から大波止に設けられた御旅所に下り、

後日には再び本宮に上るという神事が行われます。

 

各踊り町は諏訪神社本宮で演し物を奉納した後、旧八坂町の八坂神社、

御旅所、長崎市公会堂などの踊り馬場でも奉納を行います。

その後旧市街の各企業や民家の入口前で演し物の一部を披露します。

 

中日、後日にも各所で奉納踊りが行われ、同時に庭先回りも行われます。

庭先回りで踊り町が訪問する企業や民家は、

玄関に幔幕を張って踊り町を迎えます。

 

長崎くんちは、諏訪神社の氏子にあたる長崎市内の各町が、

演し物と呼ばれる様々な演目(奉納踊り)を奉納するものです。

長崎市にある59の町が5~7町ごと7組に分かれて年ごとに奉納します。

その年の当番に当たった町を踊り町と呼びます。

すなわち一つの町を見ると、7年に一度、踊り町が回ってくることになります。

 

 

それぞれの踊り町には、その町のシンボルである巨大な笠鉾があり、

これを先頭に境内に進み、様々な演し物を神前に奉納します。

笠鉾の構造は、一番上に「飾り」がつき、

まわりに「垂れ」(もしくは「さがり」)と呼ばれる布が張られ、

飾りと垂れの間で周囲を「輪」が囲んでいます。

真ん中には「心棒」と呼ばれる太い竹が通してあり、

担ぐための「担ぎ棒」と「握り棒」がついています。

思い飾りとバランスを取るために、

心棒の下の先には一文銭が2500~3000枚くくりつけてあります。

直径2m弱、高さ3m、重量140キロ前後です。

笠鉾の担ぎ手は各踊り町の者ではなく、笠鉾を専門に担ぐ者がいます。

担ぎ手には6つの組みがあり、「笠鉾組合」も存在します。

担ぎ手に小旗で指示を出す指揮者は「笠鉾棟梁」と呼ばれています。

 

踊り町ごとに得意とする演し物があります。

川船、龍踊りなど多くの演し物は複数の町が奉納するため

ほぼ毎年~数年ごとに見られますが、

コッコデショや鯨の潮吹きなどの一部の演し物は

一つに町しか行わないため7年に一度しか奉納されません。

 

長崎くんちには、本番の10月以外のも幾つかの行事があります。

小屋入りといわれる演し物の稽古始めとされる6月1日の行事もその一つです。

踊り町が諏訪神社や八坂神社を詣で、練習の無事と本番での成功を祈願します。

午後からは打ち込みと呼ばれるくんち関係者へのあいさつ回りを行います。

庭先回りと同様に、周辺の企業や家庭では幔幕が張られます。

 

10月1日には、くんちの始まりを告げる「事始神事」と、

三基の神輿を担ぐ神輿守町の清祓いが行われます。

事始神事では、当年の踊り町の役員らが大祭の始まりを神前に報告し、

御神輿守清祓いでは、諏訪、森崎、住吉三社の神輿を担ぐ関係者が清祓を受け、

大祭期間中の安全を祈願します。

 

10月3日には、くんちで使用する衣装や道具を公開します。

夕方から開始される行事で、庭先回りと同様に企業や家庭は幔幕を張ります。

 

10月4日には、本番の衣装を着けその町内で町内の人間に対し披露する

リハーサルの人数揃(「にいぞろい」もしくは「にぞろい」)が行われます。

 

そして、10月6日の夜に非公式に行われていた行事が裏くんちです。

桟敷席と違って無料で座れる長板に

前日から徹夜で張り込みを行う者が暇を持て余し、

勝手に演し物の真似事を行ったことに由来します。

定番行事となっていましたが、

実行委員会により長坂の徹夜張り込みが禁止され

整理券制となったためその伝説は途絶えました。

 

 

演し物は大きく分けて、踊り、曳物、担ぎ物、通り物に分けられます。

踊り:町ごとに本踊り、阿蘭陀万才など様々な種類の踊りを行います。

曳物:下に車輪のついた山車を引き回すものです。

   ほとんどは船をモチーフにしたもので「船」とも呼ばれます。

   龍船、川船、唐人船、御座船、鯨曳(俗に鯨の潮吹き)などです。

担ぎ物:大勢の担ぎ手が担ぐ龍踊、太鼓山や鯱太鼓などの演し物です。

通り物:大名行列やアニオーサンの行列、媽祖行列など趣のあるものです。

 

 

長崎くんちは掛け声にも特徴があり、

アンコールに意味で使われる「モッテコーイ」や所望する、

もう一度やれから来たといわれる「ショモーヤレ」、

その他には、笠鉾が回る時に掛けられる「フトーマワレ」(太く回れの意)、

笠鉾が見事に回った時に掛けられる「ヨイヤー」などがあります。

 

 

くんちで奉納される演し物の代表格に龍踊りがあります。

現在、籠町、諏訪町、筑後町、五嶋町が奉納していて、

毎年のように見ることができますが、

踊り町によって内容や登場する龍の種類や演出は異なります。

 

 

基本的に龍が玉を追いかける「玉追い」、

とぐろを巻いた龍が自分の体に隠れた玉を探す「ずぐら」、

体の下をくぐって再び「玉追い」の流れになっています。

 

 

龍踊りは、玉持ち1名、龍衆10名、シンバル、銅鑼、太鼓、長ラッパ、

爆竹などを鳴らす囃子方多数で構成されています。

 

 

長崎市の秋の祭り「おくんち」で奉納される演し物の一つに

「コッコデショ」があります。

担当の町は樺島町で、有名な出島と長崎奉行があった江戸町の隣の町です。

龍踊りのように多数の町が所有し、毎年いずれかの町が披露するのとは違い、

樺島町のみが行う演し物で7年に1回しか行われません。

コッコデショとは「ここでしょう」という意味からきているという説もあります。

 

 

コッコデショは四角い座布団のような形をした巨大な飾りと太鼓が載り、

総重量1tにもなる神輿で、総指揮1名、指揮1名、長采3名、

棒先4名、太鼓山4名、担ぎ手36名で構成されています。

 

太鼓山の男の子たちのさわやかな高い声と

びりびりと太く響くような担ぎ手の男たちの声が重なります。

大きな神輿を大人数で勢いよく回転させたり、

大きな神輿を空に投げて受け止めたり、

ちりめんの法被を勢いよく空中に放り投げたりという演技は豪快で迫力があり、

興奮のあまり倒れて救急車で運ばれる観客もいるほどです。

 

樺島町は、港町であることからか、

ちりめんの祭着には「波」の模様が書かれています。

鉢巻きとして頭に巻く手拭いに刻印された町のシンボルマークは、「縄」です。

総指揮、指揮、長采は、くるぶしまでの長さのちりめんの着物を

祭り用のU首Tシャツとステテコを着た上に着て鉢巻きを締めます。

棒先、采振り、担ぎ手もまたU首Tシャツとステテコを着て、

その上から赤い褌を締め、黒い菱形の腹掛けをつけ、

波の模様の描かれたちりめんの法被を着ます。

足元は真っ白い地下足袋を履きます。

太鼓山は、U首Tシャツとステテコを着た上に長めのちりめんの着物を着て、

水色の紐で着物の袖を縛るようにします。

そして赤くてコックのような帽子のように細長い、

しかし天辺から折り返すように長く赤い布が背中に垂れるという

形のものを頭に被ります。

この赤い被り物は、担ぎ手が神輿を持ち上げるたびにひらひらと動き、

神輿の華やかさを添える働きをします。

 

長崎くんちも「男」の演し物であるため、

女性はコッコデショを担いだり乗ったりしてはならないという決まりがあります。

ただし神輿も太鼓山部分から四方に垂れ下がる花柄のちりめん布の飾りは、

女性が描いたものです。

 

【交通アクセス】

電車:JR長崎駅~路面電車に乗り換えて「諏訪神社前」電停下車、すぐ。

車 :長崎自動車道「長崎IC」より長崎出島道路を経由、

   「長崎芒塚・出島IC」より約10分。

 

いかがでしたか。

祭りには底知れない魅力と気分を高揚させる何かがあります。

長年にわたって受け継がれてきた祭りには、

理屈では割り切れない人々の思いが詰まっているように思います。

たかが祭り、されど祭りといったところでしょうか?



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