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日本の奇祭31「野沢温泉の道祖神祭り」

2014年09月22日 | 日本の奇祭

一年を通して日本全国の各市町村で何らかのお祭りが必ずあります。

故郷を思うとき、まず思い出されるのが祭りではないでしょうか?

 

ただ世の中には、地元の人には普通で真剣なんだけれど、

外部の人から見ると摩訶不思議な世界に見えてしまう祭りがあります。

これを世の人は「奇祭」と呼びます。

 

奇祭とは、独特の習俗を持った、風変わりな祭りのことと解説されています。

 

これを、人によっては「とんまつり(トンマな祭)」

「トンデモ祭」とも呼んでいるようで、

奇祭に関する関連書物も数多く出版されています。

よく取り上げられるのは、視覚的にインパクトがある祭り

(性器をかたどった神輿を担ぐ祭りなど)がよく話題になりますが、

ほかにも火を使った祭りや裸祭り、地元の人でさえ起源を知らない祭りや、

開催日が不明な祭りなど、謎に包まれた祭りはたくさんあるようです。

 

これから数回に渡って奇祭を特集していきます。

その多彩さに驚くとともに、祭りは日本人の心と言われるゆえんが、

祭りの中に詰まっていることが理解できるでしょう。

 

特に言う必要はないと思いますが、

以下にふざけて見えようと馬鹿にしているように見えようと、

れっきとした郷土芸能であり、

日本の無形民俗文化財だということは間違いありません。

 

今回は、長野県の野沢温泉の道祖神祭りです。

 

野沢温泉の道祖神祭り(野沢温泉/長野県下高井郡野沢温泉村)

 

道祖神とは?

 

 

小正月に正月飾りや締め飾りなどを焼く

「どんど焼き」ともいわれる行事は各地で行われています。

その歴史は古く、平安時代に宮中や公家の宮廷行事として記録に残っています。

 

道祖神は、「どうろくじん」「さいのかみ」「さえのかみ」などとも呼ばれ、

災厄の侵入を防ぐ神とされ、石像などに刻んで村堺や辻などに祀っています。

また、子供の成長や子宝祈願などの対象として、

ほぼ全国に広く祀られている民間信仰の神です。

 

中部地方から関東地方を中心とする地域では、

この神を石像などに刻んで村堺などに祀り、

この祭りとして小正月に火祭りを行うことが一つに特徴となっています。

その内容は各地で多彩な内容を持ちますが、

長野県の北信地方では、初子の祝い・厄年の祓い.

良縁祈願などの性格を持つとともに、

火をめぐる攻防戦を伴う道祖神祭りが伝承されています。

とりわけ野沢温泉の道祖神祭りは壮大な規模で行われることで知られています。

この祭りがいつ始まったかは定かではありませんが、

道祖神碑には「天保十巳亥年」と刻まれていることや

河野家に残されている「文久三年道祖神小豆焼帳」などから

江戸時代後期にはすでに盛大に行われていたことが推察できます。

 

かつて野沢温泉道祖神祭りは、横落のさかきや旅館の前庭と、

寺湯の河原の二ヶ所で行われ、前者を「上のどうろく神」と呼び、

後者を「下のどうろく神」と言っていました。

これが天正元年に警察から火災予防のため

「人家から離れること百間以上たること」という達しがあり、

上下の組が一緒になって行うことになりました。

そして場所は上組の片桐家所有地の馬場ノ原に移り、

火元は寺湯の河野家から出すことになりました。

 

このように全村一致のもとに円満に和合し豪壮な社殿造り、

華麗な初灯籠、清楚で可憐な木造道祖神製作など行事内要は、

以前の様式のまま執り行うようになり、

競技的・美的・全村一致の協力の信仰的要素はますます盛大になって

近郷にない卓越した民俗行事として存続しています。

そして日本を代表する道祖神行事の一つとして

平成5年12月に国の重要無形民俗文化財に指定されました。

 

祭りに組織

 

 

野沢温泉の道祖神祭りは、

地区を代表する野沢組惣代が総元締めとなり、

経験者から選ばれた山棟梁と社殿棟梁などの役員の指揮のもと

「三夜講」と呼ぶ厄年の男たちが祭りを執行します。

 

男の厄年を迎える数えで42歳・41歳・40歳の3つの年代が

「三夜講」と呼ぶ組織を編成し、この同じ仲間で3年間行事を行います。

ここに25歳の男の厄年が毎年加わり、

また、42歳にあたる者が幹事役を勤めます。

3年間行事を勤めると、次の三夜講に引き継ぎます。

祭りの準備を含め一週間以上も自分の仕事を犠牲にして祭りに携わることは、

野沢の男となるという気持ちが宿命的なものとして受け止められています。

この厄年行事を勤めることにより、

初めて村の大人の仲間入りができ一人前として認められるとされています。

 

野沢温泉の道祖神祭りの日程

 

1月13日 午後1時~ ご神木引き

1月14日 深夜まで  社殿組み立て

1月15日 昼過ぎ   社殿完成

      19:00   火もともらい

      19:30   灯籠到着

      20:00~  花火、道祖神太鼓

      20:30   火もと到着

      20:30~  野沢組惣代の火付け、初灯籠の火付け、子供の火付け

      20:50~  大人の火付け

      22:00頃  終了

 

 

この神様は「八衢比古神」(男)と「八衢比賣神」(女)と伝えられています。

容姿が非常に見苦しいため婿にも嫁にも行けずにいたこの二神が結ばれたところ、

めでたく男子が出生したという、縁結びと子宝の神であるとされています。

 

 

男女一対の神様は、各家庭などでそれぞれ素朴な味わいのある手作りで、

神棚などに1年間どこの家でも祀られています。

1月15日の道祖神祭には、会場にある大きなたらいに自分の家の神様を納め、

他の家から来た気に入った神様を持ち帰ります。(これが縁結び)

お札や書き初めなどのご供養は野沢温泉の火祭りで各家のお札や書き初め、

お守り、過疎末などは、1月14日または15日午前中までに会場へ持ち込みます。

 

 

前年に長男が誕生した家では、

子供の成長を祈って初灯籠を作り、火祭りに奉納します。

灯籠作りは、灯籠棟梁の指揮に従って親戚や友人たちが集まって作られます。

灯籠の高さは5間(約9m)、中心柱は下段がミズナラ、

上段が杉を使い、最上部にオンベ(御幣)、その下に傘、

この傘の周囲に赤色の垂れ幕を回らし家紋をつけます。

傘の下には風鈴に、丸灯籠、白扇、ようらくを吊るします。

次には絵を描いた菱灯籠、そして竹ひごを柳の枝のように垂らし、

中央に万灯籠をつけます。

一番下には竹の輪を二重に吊るし、

親戚や友人たちから寄せられた書き初めをたくさん下げます。

 

灯籠作りは秋のうちに行われ、1月11日に「灯籠丸め」と称して

家の前に灯籠を組み立て完成の祝宴が開かれます。

 

1月15日の夕方、親戚や友人がその家に集まり灯籠送りの宴を開いた後、

たいまつの火を先頭に灯籠が会場へと運ばれます。

火祭りの攻防戦の末、社殿が最高潮に燃え上がったとき灯籠を燃やします。

 

御神木里引き

 

 

社殿を作る木材は前年の秋に山から切り出されます。

ご神木引きは、社殿の中心となる5本のうち2本を25歳の厄年と

42歳の厄年が二組に分かれて日影ゲレンデから温泉街を通り

会場まで三時間余りをかけて引き出します。

長さ20mもあるブナの大木を引く沿道の家からはお神酒を奉納され、

その都度大声で披露し道祖神の手締めが行われ、

見守る人々にお神酒が振る舞われます。

 

社殿造り

 

社殿造りは、14日の朝から深夜までと、15日の午前中行われ、昼頃完成します。

社殿造りはすべて手作業で、危険が伴うので、

この時ばかりは酒も断ち完成まで黙々と作業が行われます。

 

社殿は昔ながらの作り方で、針金や釘などはいっさい使われていません。

社殿に厄年が乗る部分の高さは10数m、広さは8m四方もあります。

 

 社殿の組み立ては、14日深夜まで及ぶ。

 

 1月15日昼すぎようやく社殿が完成する。

 

火元もらい

 

午後7時

 

厄年の代表者が河野家に火をもらいに行き、火もともらいの儀式が行われます。

いろりを囲んで道祖神の歌を歌ったりかなりの量の神酒を飲まされます。

火祭りで使われる火は古式にのっとり、代々伝わる火打ち石で採火されます。

 

午後8時

 

火は、大きなたいまつにつけられ、

厄年代表者らは道祖神歌を歌いながら火祭り会場へと向かいます。

 

火祭りの攻防戦

 

午後8時30分

 

いよいよ、激しい攻防戦が始まります。

火付けは最初、祭りの主催者である野沢組総代、

次に灯籠の奉納者、その次は子供たち、そして、大人の火付けとなります。

 

社殿正面前に燃え上がる火もとからたいまつに火をつけ社殿正面へ攻撃します。

火付けをするのは一般村民、それを防いで社殿を守るのが25歳の厄年、

社殿の上に上がっているのは42歳の厄年。

 

午後10時すぎ

 

約1時間半にわたる攻防戦の末、双方の手締めにより社殿に火が入れられます。

次第に社殿が燃え上がり、大きな炎が空高く燃え上がり火祭りは終わります。

 

燃え上がった社殿が、やがて燃え落ちるまで見逃せません。

 

燃え落ちた社殿は翌日まで燃えていて、

翌朝餅などを焼いて食べる人がたくさんいます。

ここで餅を焼いて食べると

風邪を引かずに1年間健康で暮らせると言われています。

 

【交通アクセス】

電車:JR長野新幹線「長野」駅下車、直行バスで1時間15分。

   JR篠ノ井線「長野」駅でJR飯山線に乗り換えて

   「戸狩野沢温泉」駅からバスで20分。

   JR北陸線「直江津」駅でほくほく線に乗り換え、

   「十日町」でJR飯山線に乗り換え、

   「戸狩野沢温泉」駅から、バスで20分。

車 :東京方面から
   練馬ICから藤岡JCT経由で豊田飯山IC→野沢温泉 約3時間30分
   練馬ICから藤岡JCT経由で塩沢石打IC→野沢温泉 約3時間20分

   名古屋方面
   中央道→長野道→豊田飯山IC→野沢温泉 約3時間50分

   大阪方面
   名神→東名→中央道→長野道→豊田飯山IC→野沢温泉 約5時間50分

   金沢方面
   北陸金沢東ICから上越JCT経由で豊田飯山IC→野沢温泉 約3時間

いかがでしたか。

祭りには底知れない魅力と気分を高揚させる何かがあります。

長年にわたって受け継がれてきた祭りには、

理屈では割り切れない人々の思いが詰まっているように思います。

たかが祭り、されど祭りといったところでしょうか?