一年を通して日本全国の各市町村で何らかのお祭りが必ずあります。
故郷を思うとき、まず思い出されるのが祭りではないでしょうか?
ただ世の中には、地元の人には普通で真剣なんだけれど、
外部の人から見ると摩訶不思議な世界に見えてしまう祭りがあります。
これを世の人は「奇祭」と呼びます。
奇祭とは、独特の習俗を持った、風変わりな祭りのことと解説されています。
これを、人によっては「とんまつり(トンマな祭)」
「トンデモ祭」とも呼んでいるようで、
奇祭に関する関連書物も数多く出版されています。
よく取り上げられるのは、視覚的にインパクトがある祭り
(性器をかたどった神輿を担ぐ祭りなど)がよく話題になりますが、
ほかにも火を使った祭りや裸祭り、地元の人でさえ起源を知らない祭りや、
開催日が不明な祭りなど、謎に包まれた祭りはたくさんあるようです。
これから数回に渡って奇祭を特集していきます。
その多彩さに驚くとともに、祭りは日本人の心と言われるゆえんが、
祭りの中に詰まっていることが理解できるでしょう。
特に言う必要はないと思いますが、
以下にふざけて見えようと馬鹿にしているように見えようと、
れっきとした郷土芸能であり、
日本の無形民俗文化財だということは間違いありません。
今回は、熊本県の八代妙見祭・香川県のひょうげ祭り・岩手県のおめつき祭です。
八代妙見祭(八代神社:熊本県八代市)
八代妙見祭は毎年11月22日~23日の2日間行われ、
11月22日は神幸行事(お下り)・御夜、
11月23日は神幸行事(お上り)・演舞が行われます。
この祭りは八代神社(妙見宮)の秋の例大祭で長崎諏訪神社おくんち、
福岡筥崎宮放生会とともに「九州三大まつり」といわれており、
熊本県指定重要無形民俗文化財に指定されています。
23日の早朝には、八代妙見祭の神幸行列(お上り)の一行が出発地の
塩屋八幡宮に笠鉾や奴、鉄砲隊、神馬、獅子、ガメなどが集まってきます。
行列の一行は、塩屋八幡宮に参拝して、
7時30分になるとラッパが吹かれ、神幸行列(お上り)が開始されます。
神幸行列(お上りの各地の到着時間は次の通りです。
塩屋八幡宮7時30分出発、8時30分出町公園、9時JR八代駅前、
11時八代神社、13時10分砥崎の河原、13時10分~17時頃すべてが終了します。
出発地から最後の会場である「砥崎の河原」までは約6㎞あります。
【交通アクセス】
電車:JR鹿児島本線「八代」駅下車、徒歩20分。
車 :九州自動車道「八代IC」から国道3号経由で2㎞、約10分。
ひょうげ祭り(浅野地蔵:香川県高松市)
ひょうげ祭りは、香川県や高松市の民俗文化財に指定され、
「新池」築造の恩人である祭神矢延平六の遺徳を偲び、
旧暦の8月3日に近い9月上旬の日曜日に香川町浅野地蔵で催されます。
讃岐では、ふざけて踊ることを「ひょうげる」といい、
この祭が平六を祭った神輿の供養をして仮装した大名行列が、
「ひょうげ」ながら歩くことから、そのような呼び名になったと言われています。
浅野の農民達は平六を慕い彼の功績を高く評価しながらも、
藩主の下した国外追放の罪について表向きは反対できないもどかしさから、
このような面白おかしい仮装行列によって藩主に抵抗したとも言われています。
祭りの前夜祭は平六の冥福を祈りつつ、
鐘や太鼓を鳴らしながら獅子舞を奉納したり、本祭の用具を整え、
太鼓を鳴らしながら池の宮神社から新池までの約2㎞を
行列が練り歩く本祭が翌日行われています。
大名行列はシュロで作った髭、飼料の紙袋などを縫い合わせた袴や陣羽織、
サトイモの茎で作った刀を腰に差した侍で編成され、
神輿を担ぐ若い衆の顔は、歌舞伎役者まがいの厚化粧、
額や頬には大きく丸い紅と顔一杯の隈取、頭には手拭を被り、
身には野良着の着物に細い薬の帯。先頭の烏帽子代わりのザルを被り、
手には飯しゃもじ、足は下駄と草履を片方ずつ履いており、
傘持ちは破れた番傘をさしかけ、手振り足ぶり面白おかしく練り歩きます。
行列が新池の堤防に到着すると、
神職は祝詞をあげ悪魔払いの矢を秋空に向けて放つと同時に、
若い衆の担ぐ神輿が水しぶきをあげて池に投げ込まれ、
見物人から歓声と拍手が起き、
祭りは最高潮に達しフィナーレを迎える約3時間の祭礼風景です。
【交通アクセス】
電車:JR「高松」駅からことでんバス塩江線または日生ニュータウン線で、
「川東」バス停下車、徒歩約5分。
車 :駐車場有り(無料)
香川支所駐車場から新池まで無料バスあり。
おめつき祭(石巻市雄勝町名振地区)
祭りの名前は「おめつき」=「思いつき」で、
即興の寸劇をやることからつけられ、
石巻市雄勝町名振地区で行われるこの土地ならではの催しです。
時事問題を題材に、住民が面白おかしく即興の寸劇を演じ、
皆の笑いを取る祭りです。
1994年(平成6年)に宮城県の無形民俗文化財に指定されており、
震災後は規模を縮小して実施しています。
祭りの起源は、1781年(天明元年)に名振地区で大火があり、
この惨禍を繰り返さないよう、
天明3年に火伏せの神である静岡県の秋葉の神を勧請し、
その碑を名振の東西両端に建立し村内安全を祈願しました。
祭礼はそれに起源する火伏の祭りだそうです。
祭礼で演じられる芸能の「おめつき」は、
思いつきであり「俄狂言」のことで例祭の名称もこれによります。
祭りは、東・中・西・小浜の四組に分かれた契約講が、
毎年1月24日に輪番で担当する「亭前」により行われます。
当日は丁印を先頭に、後に続く山車の「舞台」の笛、
太鼓で道中囃子をかなでながら、東の秋葉社に碑に向かいます。
碑の前で神事を行い「里中安全」の神符が集落の三ヶ所の入口に立てられます。
丁印と舞台は東端を出発し、囃子舞を従えて集落内を巡行します。
巡行に従って、四組の定められた旧家の庭先で「おめつき」が演じられます。
それぞれの演技組は仮装を凝らし、内容には一応の形式があり、
用意された小道具が示され、見物客との即効的な掛け合いがあり、
謎解きがされて「落ち」となります。
内容は漁況や政治といった時事問題が主題とされますが、筋立てや狂言回し、
それに、小道具には男根、女陰があるなど性的に誇張されており、
また、それを取り入れていることが定めにされています。
巡行の途中で舞台は担ぎ手により激しくもまれ、
一部は故意に破損されてしまい、翌年の亭前へ祭具の引き継ぎがされますが、
破損箇所の吟味で口論におよぶやり取りがあり、
総代が仲裁に入り手打ちとなります。
本祭礼は年の始めに、
集落内の安全を祈願する祭祀に山車として舞台が巡行することと、
芸能の即効劇が組み込まれているのが特徴です。
おめつきの性的な要素は、正業である漁業の豊漁を祈願する予祝儀礼です。
しかも、即効芸能で演じられているのは、
全国的にも例が少なく、特殊な祭祀として貴重なものです。
【交通アクセス】
電車:JR石巻船「石巻」駅から車で約60分。
車 :三陸自動車道「石巻河北IC」から車で約35分。
いかがでしたか。
祭りには底知れない魅力と気分を高揚させる何かがあります。
長年にわたって受け継がれてきた祭りには、
理屈では割り切れない人々の思いが詰まっているように思います。
たかが祭り、されど祭りといったところでしょうか?