8日(火)。昨日の朝日夕刊に「夢膨らむバルーンホール~宮城・松島」という記事が載りました 要約すると、
「宮城県松島町に風船のように空気を膨らませたコンサートホール『アーク・ノヴァ』がお目見えした 音楽祭が13日まで開催中。ポリエステル製で高さ18メートル、幅30メートル、長さ36メートルで、空気を送り続けて支えており500人ほど入れる 建築家の磯崎新氏とイギリス人彫刻家アニッシュ・カプーア氏が造った 音楽祭が終わると、ホールは折りたたんで移動する。被災地での音楽祭は断続的に3年間続ける。次の場所はまだ決まっていない」
写真を見るとまるでチョコレート・ドーナッツみたいな感じです。空気を送り続けて支えるということは、東京ドームのミニバージョンといったところでしょうか?一番気になるのはどういう音響なのかということですドーム型ということは屋根が丸いということで、音は乱反射しないのだろうか、などと勝手に心配してしまいます 超一流の磯崎新さんの”作品”ですから、音も丸く収めるのではないかと思ったりしますが
(10月7日付朝日新聞夕刊より)
閑話休題
荻原浩著「誰にも書ける1冊の本」(光文社文庫)を読み終わりました 荻原浩は1956年埼玉県生まれ。1997年に「オロロ畑でつかまえて」で小説すばる新人賞を受賞、2005年に「明日の記憶」で山本周五郎賞を受賞しました。「神様からひとこと」「ひまわり事件」などの著作があります
主人公は1957年北海道生まれで、大学進学を機に上京し広告代理店に勤務したのちに32歳で独立し小さな広告会社を経営しています 40歳で小さな文学賞を受賞しましたが、創作は2冊までで3冊目はなかなか出せません 入院している父親の様態が悪化し、北海道の函館に駆け付けた主人公は、母親から手書きの原稿の束を受け取ります。それは父親の自伝的な手記でした。主人公は、誕生から死に至る父親の一生を手記でたどることを通して自らの人生を振り返ります
父親は手記に次のような言葉が書いています
「ここに記したのは悔恨ではない。同情を買う気もない。ただ知ってほしいだけだ。かつてあった事実を。
息子よ、娘よ。
人生は、何をなしたかではない。何をなそうとしたかだ」
主人公は手記を見て次のような言葉を書いています
「私は原稿に戻る。早く次のページを繰ろうとする手をなだめながら。読み終えてしまったら、死んだ父親をまだこの世につなぎ止めている最後の細い糸まで切れてしまう気がしていた。
私も思う。あったかもしれない、いまと違う人生を」
主人公は、父親の手記を読みながら、どこまでが本当のことで、どこからが作り話なのか、と悩みますその悩みを通して父親との距離を埋めていき、第3作を書く決心をします
誰もがいつかはこれまでの人生を振り返るでしょう。そして静かに語るのです。
「私も思う。あったかもしれない、いまと違う人生を」
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