7日(水).昨日の日経朝刊コラム「文化往来」に「債務超過の日フィル、公益法人認定を申請」の見出しの記事が載っていました 記事を要約すると、
「日本フィルは11月1日、公益財団法人の認可申請を行った。新公益法人になれば引き続き税制上の優遇措置が受けられるが、債務超過の解消など財務改善が求められる 日本フィルは2011年度末で約1億4,000万円の債務超過があるが、今年度末には4,200万円にまで圧縮する計画である 債務を無くした上で300万円の基本財産がなければ申請できないのが原則だが、昨年後半以降収益が改善しつつあるため、当初来年7月に申請する予定だったのを繰り上げて申請することとした」
認定されれば、日本オーケストラ連盟に加入する正会員25団体のうち、新公益法人を目指しながらもまだ申請に至っていないのは、神奈川フィルなど5団体を残すだけになるとのことですが、「債務超過」と「安定した収益の確保」の両面で苦戦を強いられているのではないか、と懸念します また、すでに新公益財団法人に移行したオーケストラであっても、毎年、安定した財務経営が継続しなければ認可の取り消しもありうるので油断できません 日本は残念ながら、欧米のように”寄付文化”が根付いている訳ではないので、普段の”営業努力”が求められます。しかし、著名な演奏家を招いて魅力的なプログラムを組んで”定期会員”を増やすにはそれなりの経費がかかります ”在京のオーケストラはどれを聴いてもほとんど変わらない”と言われないためにも、各オーケストラが独自性を発揮して、それぞれのカラ―を打ち出して欲しいと思いますが、”言うは易く行うは難し”でしょう しかし、それをやらなければ、これからの生き残りは難しいのも事実だと思います
閑話休題
昨夕,銀座ヤマハホールでミューズたちの饗宴を聴きました ミューズたちは,フルート=パク・ジウン,ピアノ=須藤千晴,ソプラノ=小川里美の3人です 自席は1階K列14番,中央右通路側です.会場はほぼ9割方埋まっている感じです
プログラムの最初はフルート&ピアノによる演奏で①シューマン(パク・ジウン編曲)「献呈」,②ショパン「ノクターン第20番」,③ショッカー「後悔と決心」,④ルフェーブル「バルカローレ」,⑤クラーク「サンデー・モーニング」,⑥ラヴランド/フェッケ「ユー・レイズ・ミー・アップ」,⑦韓国民謡&ショッカー「アリラン」,そしてフルートのソロで①クラーク「グレート・トレイン・レース」です
パク・ジウンがピンクのドレス,須藤千晴がグリーンとブラックを基調とするドレスで登場します 最初にシューマンの「献呈」をストレートに,かつロマンティックに演奏します 次いでショパンのピアノ曲をフルート用に編曲した「ノクターン第20番」を穏やかに演奏します
ここで,ナビゲーターの坂田康太郎が登場して,パク・ジウンの略歴を紹介しインタビューします
「パクさんはソウル・フィルの首席フルート奏者ですが,室内楽などでも活躍されています.日本は初めてですか?」
「20回くらい来ています」(笑)
「パクさんのお持ちのフルートはヤマハの”パク・ジウン・モデル”だそうですが,どうですか?」
「細かいところまで特別に注文を付けて作ってもらったので,素晴らしいです!」
「そのフルートは18金の純金製で,相当重いと聞いていますが,重い方が良い音が出るけれど,演奏がしにくいそうですね」
「その通りです」
そうですか,純金製ですか・・・・・・・・いざとなったら溶かして売れば・・・・・・
次のショッカー「後悔と決心」,ルフェーブル「バルカローレ」,クラーク「サンデーモーニング」,ラヴランド「ユー・レイズ・ミー・アップ」は,ライト・ミュージックあるいはジャズっぽい曲です.「サンデーモーニング」ではフルートの音が輝いていました
次いで,パクが再登場して「プログラムにはありませんが,アリランを歌う前に韓国の古い民謡(母が子を思う歌)を演奏して,続けてアリランを演奏します.この民謡は韓国でも滅多に演奏しませんし,日本ではこれが初めてです」とアナウンスして演奏に入りました.聴いていると,メロディーが日本の子守唄に近い曲想で,親近感を感じました 盛大な拍手です
次にフルートのソロでクラーク「グレート・トレイン・レース」を演奏しました この曲は”トレイン”とあるように汽車が走る模様を表現した曲で,タンギングが難しそうな超絶技巧曲ですが,パクは難なく鮮やかに演奏しました
休憩後の前半は須藤千晴のピアノ・ソロで①ドビュッシー「月の光」,②同・前奏曲集第2巻より「花火」,③同「喜びの島」が演奏されました 彼女の弾くピアノはオーストリア製の”ベーゼンドルファー・インペリアル”です.通常のピアノは88鍵ありますが,このピアノは97鍵あるそうで,低音部が充実しているとのことです ヤマハホールでなぜヤマハを弾かないのか・・・・・と考えてみたら,確かヤマハがベーゼンドルファーを買収したというニュースをいつか聞いたことがあるあるな,と思い出しました
ベーゼンドルファ―で聴くドビュッシーは,確かに響きが豊かで,とくに低音部がよく響いています
次いでソプラノとピアノによる①サティ「あなたがほしい」,②フォーレ「月の光」,③ショパン「別れの曲」,④プッチーニ「つばめ」より”ドレッタの夢”です
ソプラノの小川里美が黒のドレスで登場,”おとなの女”という雰囲気を出しています 最初の「あなたがほしい」を聴いた時,ああ,この曲はサティが作ったのか,と思いました 一度聴けば,ああ,あの曲ね!という誰でも知っている曲で,いかにも”フランス”,”パリ”という雰囲気の曲です 小川里美は表情豊かに”大人の女”の歌を歌い上げました 次いで,フォーレ「月の光」,ショパン「別れの曲」,プッチー二「つばめ」から”ドレッタの夢”を曲想に合わせて歌い分けました 小ホールということもありボリューム感のある彼女の声に圧倒されます
ここで小川里美の紹介があり,東京音大・同大学院を卒業して,奨学金を得てザルツブルクやミラノに留学,そして,1999年度ミス・ユニバース日本のチャンピオンだったことが紹介されると,会場のあちこちで”おーっ”という驚嘆と賞賛の声が上がりました
最後にフルートとピアノの伴奏によりソプラノのソロで,カッチー二の「アヴェ・マリア」が美しい声で歌われ,そしてピアニッシモからフォルティシモまですべての音域を駆使して歌う超難関アリア,ベッリーニ「ノルマ」から”清らかな女神よ”を歌いあげ会場を震わせました まずピアノの序奏があり,次いでフルートがメロディーを奏で,いよいよソプラノが歌われるわけですが,私はこの冒頭部分が大好きです
会場一杯のブラ―バの声と拍手に応えて,アンコールにヘンデルの「リナルド」から”私を泣かせてください”を歌いました
終演後,”勝手知ったる何とか”で,いつものようにピアノ運搬用の大型エレベーターで降りようと,もう一人の中年男性(知らない人)とともに廊下の奥の方に移動しました 誰も後からついてきません.エレベーター前で待っていると,エレベーターの扉が開き,何と,いま歌い終わったばかりのミューズたちが揃って出てきました どうやら,そのエレベーターは歌手の移動に使うため一時占有していたようです.いずれにしても,ミューズたちを身近に拝顔することができて,とてもア・ミューズでした
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