人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

新国立オペラでモーツァルト「フィガロの結婚」を観る 〜 ヴィート・プリアンテ、大隅智佳子、ダリオ・ソラーリ、臼木あい、脇園彩、妻屋秀和、吉原圭子にブラボー! / 岩波ホール再開

2021年02月08日 07時19分51秒 | 日記

8日(月)。昨日の朝日朝刊 東京面「コロナ禍の首都を歩く 19  @神保町」は「改修し再開 岩波ホール満席」という見出しで、6日に上映を再開した岩波ホールを紹介していました 超訳すると、

「岩波ホールは老朽化で改修する予定だったところにコロナ禍があり、昨年は半年近く休館した 4か月余りの改修工事を経て今月6日に上映を再開した。改修後、座席の間隔を広げて見やすくした 192席あるが、感染症対策のため105席で再出発した。同ホールは創立53周年。国内外の優れた映画の紹介に力を入れ、日本の映画文化を牽引してきた 基本的に1つの映画を6,7週間続けてじっくり上映する。『これが岩波ホールが推す映画』と明確に打ち出す姿勢が、国内外から尊敬を集めてきた 現在、北海道室蘭市を舞台にした坪川拓史監督『モル二エの霧の中』(214分)を上映中だ。支配人の岩波律子さんはロビーで観客を見送り、『体に食べ物が必要なように、心には文化が必要です。これからもみなさまなの心の支えになるような映画を上映したい』と力を込めた

岩波ホールは1年以上行っていないと思います 近いうちに 行ってみようかな

ということで、わが家に来てから今日で2321日目を迎え、池江璃花子が、競泳ジャパン・オープン50メートル自由形決勝で24秒91を記録し第2位に入り、白血病からの復帰以来初の表彰台に上がった  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

       コロナ禍で気が滅入っている日本で 久々に明るいニュースだ  頑張れ 池江選手!

 

         

 

昨日、新国立劇場「オペラパレス」で新国立オペラ、モーツァルト「フィガロの結婚」の初日公演を観ました キャストは、アルマヴィーヴァ伯爵=ヴィート・プリアンテ、伯爵夫人=大隅智佳子、フィガロ=ダリオ・ソラーリ、スザンナ=臼木あい、ケルビーノ=脇園彩、マルチェリーナ=竹本節子、バルトロ=妻屋秀和、バジリオ=青地英幸、ドン・クルツィオ=糸賀修平、アントーニオ=大久保光哉、バリバリ―ナ=吉原圭子ほか。合唱=新国立歌劇場合唱団、管弦楽=東京交響楽団、指揮=沼尻竜典、演出=アンドレアス・ホモキです

私が新国立オペラの「フィガロの結婚」を観るのは、2003年、2005年、2007年、2010年、2013年、2017年に次いで今回が7回目(演出はすべてアンドレアス・ホモキ)です ステージ上は衣装ダンスと引っ越し用の段ボール箱が数個だけのシンプルな舞台ですが、それが反ってロングランに繋がっているのかもしれません 私は素直ではないので、余計な舞台経費が掛からないから安上がりの舞台で助かっているのではないか、と思ってしまいます

今回、新国立劇場から送られてきたチケットは2階3列15番、センターブロック左通路側のA席です 初日公演とはいえ、同じ演出の7回目、コロナ禍による緊急事態宣言下の公演ということでか、満席までは遠い客入りですが、それでも結構入っている方だと思います

 

     

 

元理髪師で今はアルマヴィーヴァ伯爵の召使いフィガロは、伯爵夫人の小間使いスザンナとの結婚を控えている 初夜権を一旦放棄したもののスザンナに気がある伯爵は その権利の復活を企んでいる  一方、夫の愛が冷めていくことを嘆く伯爵夫人は、フィガロ、スザンナと結託し、思春期の小姓ケルビーノを巻き込んで伯爵の鼻を明かそうと企む    伯爵はまんまと策略にかかり、夫人に平謝りして大団円を迎える

 

     

 

2階席の3列目なのでオーケストラピット内が良く見えます コンマスはグレブ・二キティンです。あれっ?と思ったのは、フルートに見たことのある白髪の紳士がスタンバイしていたからです。数年前まで新日本フィルの首席を務めていた白尾彰氏です 他のオケのOBでも実力があれば声がかかるのでしょう

沼尻竜典の指揮で序曲の演奏に入ります 終始 軽快なテンポで進み「ラ・フォル・ジュルネ(狂おしき1日)」の幕が開きます

アルマヴィーヴァ伯爵を歌ったヴィート・プリアンテは、ナポリ生まれのバリトンですが、長身で威厳があり余裕のある歌唱力と相まって伯爵に相応しい役柄だと思いました が、もう少し色気があっても良かったかもしれません

伯爵夫人を歌った大隅智佳子は、コロナ禍の影響で来日出来なくなったセレーナ・ガンベロ―二の代演として起用されましたが、第2幕冒頭の「カヴァティーナ」、第3幕の「レチタティーヴォとアリア」をはじめ、美しくも力のあるソプラノを披露し聴衆を魅了しました

フィガロを歌ったウルグアイ出身のダリオ・ソラーリは、前回の新国立オペラ「トスカ」でスカルピアを好演し、今回は来日できなかったフィリッポ・モラーチェの代演として急きょ出演が決まりました これが悪役スカルピアを歌った同じ歌手か!と思うほど演技の切り替えが見事で、第1幕のアリア「もう飛ぶまいぞこの蝶々」、第4幕のレチタティーヴォとアリア「女の邪悪な正体を見極めろ」をはじめ、よく通るバリトンで歌い上げました

スザンナを歌った臼木あいは、2019年「紫苑物語」で千草を歌って以来の新国立オペラへの登場ですが、独特の美しい声質で、演技力にもそつがなく、聡明なスザンナにピッタリのソプラノでした

ケルビーノを歌った脇園彩は、新国立オペラの2019年「ドン・ジョバンニ」ドンナ・エルヴィーラで好演し、2020年「セヴィリアの理髪師」ロジーナで絶賛されたメゾソプラノですが、今回はズボン役で、第1幕のアリア「自分で自分が分からない」、第2幕のアリア「恋とはどんなものかしら」をはじめ、思春期の少年の揺れるを想いを見事に歌い上げました

マルチェリーナを歌った竹本節子は、もうこの役はこの人しかいない、というほど板に着いた演技力です

バルトロを歌った妻屋秀和は、新国立オペラを代表するバスと言っても良いほど、どんな役柄もそつなく歌い演じる歌手ですが、この公演でも存在力が抜群でした

バリバリ―ナを歌った吉原圭子は、小柄なこともありこの役柄がピッタリで、第4幕冒頭のカヴァティーナ「ピンをなくしてしまった」は、少女の不安な心理を見事に歌い上げていました

沼尻竜典指揮東京交響楽団は、歌手に寄り添いながら、モーツアルトの目まぐるしく変化する世界を描き出していました 特に 伯爵夫人の「カヴァティーナ」と「レチタティーヴォとアリア」の傷心に寄り添った荒木奏美のオーボエは特質に値します

 

     

 

このオペラを観ていて、いつもワクワクするのは第2幕の約20分もの間 音楽が途切れないフィナーレです 隣室(本公演では衣装ダンス)からケルビーノと入れ替わったスザンナが登場すると、伯爵は夫人を疑ったことを夫人とスザンナに責められる(伯爵=不利) ⇒  そこに事情を知らないフィガロが現れ、さらに庭師のアントーニオが「窓から人が飛び降りた」と言いつけに来る(フィガロ=不利) ⇒  フィガロは機転を利かせて言い逃れる(伯爵=不利) ⇒  今度はマルチェリーナがバルトロとバジリオを連れて現れ、貸金契約に基づくフィガロとの結婚を要求する(フィガロ=不利)。ここで舞台上の登場人物は8人(本公演では7人)になり、この間 重唱に次ぐ重唱が歌われ、ステージ上は混とんのまま幕が降りる・・・という超ロング・フィナーレです

2人が3人になり、3人が4人になり、4人が7人になり、と登場人物が次々と増えていき、「フィガロ・スザンナ・伯爵夫人グループ」 対「伯爵・マルチェリーナ・バルトログループ」の形勢が目まぐるしく変わっていきます オペラ史上これほど複雑で興奮に満ちたフィナーレがあっただろうか

今回はコロナ禍の下での公演ということで、同じ演出家による公演とはいえ これまでの6回の公演とは異なる点がありました それは歌手同士のソーシャルディスタンスを取る必要から、本来笑いをとれるシーンで笑いが起こらないといった事象に表れていました 例えば、①第1幕のスザンナとマルチェリーナが慇懃無礼な挨拶や嫌味なお世辞を歌にのせて交わすシーン、②同じ第1幕のスザンナを口説きに来た伯爵と、ケルビーノを隠そうとするスザンナと、傍観者的なバジリオが入り乱れてあたふたするシーン等です しかし、これは今回限りのことだと思います

前述の通り、今回の公演は歌手陣のパフォーマンスが押しなべて良かったので、初日公演としては大成功だったのではないかと思います


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