人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

大林宣彦監督「時をかける少女」&「青春デンデケデケデケ」を観る ~ ベンチャーズの「パイプライン」「ダイヤモンド・ヘッド」「急がば廻れ」「キャラバン」等がふんだんに流れる

2020年07月27日 07時22分11秒 | 日記

27日(月)。一昨日の朝日新聞朝刊第1面の鷲田清一氏のコラム「折々のことば」は吉田秀和氏の言葉を紹介していました 次のような内容です

「きれいな音であればあるほど、それが何か悲しくひびくのはどうしたわけだろう」(吉田秀和)

モーツアルトのクラリネット協奏曲は、響きが「あんまり平静」なので、「明るい長調の光の中で起こる出来事」なので、よけい痛切に響くと、音楽評論家は言う それに共振するのは、「自分がどこから来たか?」という問い。一度かぎりで消えゆく音。それは「私」という存在の寄る辺なさとその寂寥に、どこか「安らぎ」をすら伴いつつ人を侵すのか 『私の時間』から。

この文章を読んで、私が真っ先に思ったのは、小林秀雄が「モオツァルト」の中で触れているアンリ・ゲオンの「tristesse allante」(疾走する悲しみ)という言葉です 小林は次のように書いています

「モオツァルトのかなしさは疾走する。涙は追いつけない。涙の裡に玩弄するには美しすぎる。空の青さや海の匂いの様に、『万葉』の歌人が、その使用法をよく知っていた『かなし』という言葉の様にかなしい」

小林秀雄がここでコメントしているのはモーツアルトの「弦楽五重奏曲 ト短調 K.516」の第1楽章「アレグロ」ですが、吉田秀和がコメントしているのは「クラリネット協奏曲 イ長調 K.622」です つまり、後者は調性としては「明るい」ト長調で書かれているのに、短調のようなかなしさを感じさせるので、よりいっそう寂寥感を覚えると言っているのです こういう音楽が書けた作曲家はモーツアルト以外にいたでしょうか

ということで、わが家に来てから今日で2126日目を迎え、北朝鮮メディアは開城(ケソン)市で7月19日、3年前に韓国に脱北し、その後不法に北朝鮮に戻った男の新型コロナウイルス感染の疑い事例が発生したため、24日からケソン市を完全封鎖したと報じた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     北朝鮮は「感染者ゼロ」じゃなかったの? 脱北者の出戻りというのも何だかなぁ

 

         

 

昨日、池袋の新文芸坐で大林宣彦監督「時をかける少女」と「青春デンデケデケデケ」の2本立てを観ました

「時をかける少女」は大林宣彦監督による1983年製作映画(105分)です

高校生の芳山和子(原田知世)は、ある土曜日、学校の実験室で白い煙と共に立ちのぼったラベンダーの香りをかいだ瞬間、意識を失い倒れてしまう それ以来、昨日経験したことが今日繰り返されるという、時間を移動してしまうような不思議な現象に悩まされるようになる 知子は、この特別な超能力について幼馴染みの同級生・深町一夫(高柳良一)に相談すると、彼は、意識を集中して倒れた土曜日に戻ることを念じるようアドヴァイスし、本当の正体を明かす しかし、その後和子はすべての記憶を消されてしまい、数年後に彼に出逢っても気が付かないのだった

 

     

 

この映画は筒井康隆の同名SF小説を映画化した青春ファンタジーです この映画は、本作が映画初主演となる原田知世のフレッシュな魅力がすべてと言っても良いくらい彼女の存在感が強い作品です この時、彼女は15歳でしたが、高校生の初々しさを醸し出している一方、終盤では大学の研究生をそれらしく演じていて、演技力の幅広さに驚きます

エピローグで歌われる主題歌が、当時日本中で流行ったのを思い出します

 

         

 

「青春デンデケデケデケ」は大林宣彦監督による1992年製作映画(135分)です

香川県観音寺市で高校入学を目前に控えた1965年の春休み。僕=ちっくんこと藤原竹良(林泰文)は、ヴァイオリンで「ホフマンの舟歌」を弾いて「眠くなるなぁ」と思いながら過ごしていたが、ある日、昼寝の最中にラジオから流れてきたベンチャーズの「パイプライン」の「デンデケデケデケ~」という音に電撃的な衝撃を受け、高校に入ったらロックバンドを結成しようと心に誓う 浄泉寺の住職の息子・合田富士男(大森嘉之)=ベース、ギターの得意な白井清一(浅野忠信)=リードギター、ブラスバンド部の岡下巧(永堀剛敏)=ドラム、そして僕=サイドギター兼ボーカルの4人のメンバーが揃った 夏休みに各自がアルバイトをしてお金を稼ぎ、念願の楽器を購入し、バンド名も「ロッキング・ホースメン」と決定した その後、機械いじりが得意でアンプを作ってくれた谷口静夫(佐藤真一郎)が名誉メンバーとして加わり、河原で合宿したりして腕を磨いていく 学内での活動も認められ、女子生徒の人気の的にもなった そして、スナックの開店記念パーティーで念願のデビューを果たし、それぞれの家族を喜ばせる バンドの最後の演奏となった高校3年の文化祭も大成功の裡に終了した 仲間たちがそれぞれの家業を継いで働こうとしている中、僕だけが東京の大学へ行こうとしていながら不安定な気持ちのままでいた そんな中、バンドの仲間たちが「終身バンド・リーダー」として表彰し 励ましてくれた 数々の思い出を抱いて、僕は東京に向かうのだった

 

     

 

この映画は、1960年代中ごろの四国の田舎町を舞台に、ベンチャーズに憧れ、ロックバンドに情熱を燃やす高校生たちを描いた青春ドラマです 第105回直木賞を受賞した芦原すなおの同名小説を原作として映画化した作品です

理屈抜きで面白い映画というのがあります。その意味で、この映画は「どこが?」とか、「何が?」とか理屈を言う前に、とても面白かったです 第一に、主人公をはじめとする登場人物が個性的で魅力に溢れています とくに住職の息子・合田富士男(大森嘉之)のキャラが飛び抜けて楽しくぶっ飛んでいます 他の仲間より見た目が大人で、人生経験が豊富で、仲間のためにおせっかいを焼くのを生きがいにしているようなところがあります

タイトルどおり、この映画では当時のロック音楽がふんだんに聴かれます とくに 低音弦をスライドさせてトレモロ・ピッキングを行う「トレモロ・グリスダウン奏法」によって演奏される「パイプライン」、「ダイヤモンド・ヘッド」、「急がば廻れ」、「キャラバン」などのベンチャーズ・サウンドが全編を通して聴かれ、とても懐かしい思いをしました 当時の私にとっては、ビートルズよりもベンチャーズの方が素直に音楽が耳に入ってきました

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