22日(月)。娘は先々週も先週も出張だったのに,昨日からまた出張で大阪に出かけました.まだ前回の大阪出張のお土産が食べきれずに置いてあります ということで,わが家に来てから256日目を迎え,おねーちゃんの前回の大阪土産を吟味するモコタロです
おねーちゃんの大阪”おみや”だけど いったい何やねん?
閑話休題
昨夜9時半過ぎ,何気にテレビを点けたら,大好きなシューマンのピアノ協奏曲の第3楽章のメロディーが流れてきました それはEテレの「クラシック音楽館」という番組で,当ブログの読者Nさんからいただいたチケットで聴いた4月22日のNHK交響楽団第1807回定期演奏会のライブ録画でした(サントリーホール).フランスの若手ピアニスト,シャマユが軽快にアレグロ・ヴィバーチェを弾いていました それにしても,この曲は何回聴いても良い曲ですね
次に後半のプログラム,ブルックナーの交響曲第4番”ロマンティック”の演奏に入る訳ですが,指揮者のミヒャエル・ザンデルリンクがタクトを上げて曲を開始しようとした時,彼は迷惑そうに顔をしかめてタクトを一旦下ろし,最初からやり直しました 私は,ここで当日のことを思い出しました.あの時,会場のどこかでケータイの着信音が鳴ったのですその時の様子は4月23日のブログに書きましたので興味がある方はご覧ください
も一度,閑話休題
20日(土)午後2時から新日本フィルの定期演奏会を、午後7時からミロ・クアルテットの「ベートーヴェン・サイクルⅤ」を聴きました 昨日、新日本フィルの模様を書いたので、今日は「ミロ・クアルテット・ベートーヴェン・サイクルⅤ」の模様を描きます 弦楽四重奏曲全曲を一気に演奏するベートーヴェン・サイクルもこの日が最終日 プログラムはベートーヴェン①弦楽四重奏曲第14番嬰ハ短調、②同第16番ヘ長調、③同第13番変ロ長調から第6楽章「アレグロ」です
自席はRb2列6番,通し券だったので5回とも同じ席でした 会場は文字通り満席です.大きな拍手の中,ミロ・クァルテットの面々が登場します
1曲目の第14番嬰ハ短調・作品131は古今の弦楽四重奏曲の頂点にある曲だと言われています 7つの楽章から成りますが,切れ目はなく連続して演奏されます.この曲も他の弦楽四重奏曲と同じように”多様性”の魅力に溢れた曲です
第1楽章はフーガ形式による静かな音楽です.ワーグナーは「最も憂鬱な音楽」と表したそうですが,私には憂鬱というよりは思索にふけっているような音楽に聴こえます 第2楽章に入ると軽快なメロディーが流れ,救われるような気持ちになります 第3楽章は極めて短く第4楽章につなぎます.主題と変奏で変化に富んだ音楽が展開されます.続いて演奏される第5楽章は,アイロニカルでユーモアさえ感じさせる曲想のプレストです
そして第6楽章のアダージョに入りますが,ヴィオラが物悲しいカヴァティーナ風の旋律を歌い上げます そして最後の第7楽章の厳粛な気分の緊迫感漲るフィナーレを迎えます
休憩後は最初に第16番ヘ長調が演奏されます.この曲の最終楽章(第4楽章)に「ようやくついた決心」という副題が付けられており,「これでいいのか?」「そうでなければならぬのだ!」というテーマが中心動機になっているのですが,私はこの曲の第1楽章冒頭を聴いた時に「これでいいのか?」という言葉を思い浮かべました
この曲が長調であること(ヘ長調)から,明るい曲想が続くわけですが,「ベートーヴェンはなぜこんなに明るく振舞っていられるのか?」と思ってしまうほど開放感に満ちた音楽を書いています と言うのは,この曲を作曲した1826年には面倒を見ていた甥のカールがピストル自殺未遂事件を起こしているからです また彼自身も肺炎や黄疸の症状を抱えて健康的に不安を抱えていたからです ただ,その後カールはウィーンを離れ軍隊に入ることとなりベートーヴェンの元を離れることになったことから,ベートーヴェンも吹っ切れたのかも知れません
ベートーヴェン・サイクル最後の曲は第13番変ロ長調の第6楽章「アレグロ」です もともと第6楽章は「大フーガ」が置かれていましたが,初演のあと,大フーガの難度の高さと奇妙さについての噂が広まり,出版社が楽譜の売れ行きに不安を抱き,ベートーヴェンの友人たちに頼んで別のフィナーレを書くようベートーヴェンを説得したのです 「新しい作品には別途謝礼を支払う,大フーガは別途単独で出版する」という提案までしたとのことで,ベートーヴェンはこれを受け容れたのです
ミロ・クァルテットが再度登場,第6楽章「アレグロ」が開始されます.何と軽快で身軽な音楽なのでしょうか.長い旅から帰って重い荷物を肩から下ろしたような,安心した境地にあるベートーヴェンを思い浮かべ,私は涙さえ浮かべました.作品番号で言えば第16番作品135が最後ですが,実質的に最後の作品はこの第13番の第6楽章「アレグロ」なのです
ベートーヴェンは1824年(54歳)の時に第9交響曲を作曲して以降,弦楽四重奏曲だけを作曲,第12番から第16番と第13番第6楽章「アレグロ」の作曲に集中しました その最後の曲がこれほど軽く明るいことに驚くと同時に,ベートーヴェンはこれで良かったのかも知れないな,と思いました
演奏後,大きな拍手に応え,第1ヴァイオリンのダニエル・チンが英語で語ります
「今夜でわれわれのベートーヴェン・サイクルも終了します.今回,素晴らしいホールでベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲を演奏するという貴重な機会を与えてくださったサントリーホールにお礼を申し上げます われわれの演奏を聴くために会場にお越しいただいた皆さまにも感謝いたします」
そして,ベートーヴェン自身も気に入っていたという弦楽四重奏曲第13番変ロ長調から第5楽章「カヴァティーナ」を穏やかに演奏しました 何という静けさを称えた音楽なのでしょうか 演奏が終わっても誰も拍手をしません.私の心は感動で満たされ,涙がこぼれそうになっていました.しばらく”しじま”があり,おもむろに4人の弦が下ろされた後,拍手とブラボーが彼らに押し寄せました 演奏者も感動の面持ちで,ヴィオラのラジェスは指で目頭を押さえています 私は心の中で彼らに叫んでいました「ありがとう!」 今回のミロ・クァルテットのベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲演奏会の中で最高の演奏でした
鳴り止まない拍手に,ヴィオラのラジェスが,
「オーケー(会場・笑).ベートーヴェン・サイクルはこれで終わりですが,サイクルは巡回します.アンコールも巡回して元に戻ります」と言って会場を沸かせ,弦楽四重奏曲第6番変ロ長調から第3楽章「スケルツォ」を明るく元気溌剌に演奏し,拍手喝さいを浴びました
チェンバーミュージック・ガーデンのベートーベン・サイクルを全曲通して聴いたのは今回が初めてでしたが,聴き終った今,自分が演奏した訳でもないのに充実感があります 来年のサイクルが楽しみです
6月1日(月)から昨日の21日(日)までの3週間は本当にシンドイ21日間でした 昨日の「チェンバーミュージックガーデン・フィナーレ」公演の模様は明日書くことにしますが,この間,18回のコンサートを聴き,そのうち12回はサントリーホール(大・小)に通いました きつかったのは3週連続で土曜日に2公演入っており,翌・日曜も公演があったことです 一言で言えばコンサート漬けで「休む暇がない」3週間でした.ただ聴くだけなら誰でも出来ますが,私の場合は翌朝にブログにアップするという”仕事”があるので,そちらの方がきつかったと言えるかも知れません.幸い今週は緩やかな日程なので,本来の仕事をこなしつつ,次のピークまで身体を休めたいと思います
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