人生の目的は音楽だ!toraのブログ

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中山七里著「アポロンの嘲笑」を読む~福島第一原発事故に基づくエンタメ小説~もう一つの事故を防げ!

2018年01月04日 07時51分13秒 | 日記

4日(木)。昨日は品川に年始参りに行ってきました。午後1時過ぎに品川駅の近くを通る時、箱根駅伝の復路走者の力走に出会いました。トップと2番手は通過した後でしたが、第3位以降の頑張りを垣間見ました。今年も青山学院が総合優勝でしたね

ということで、わが家に来てから今日で1191日目を迎え、お姉ちゃんがもらってきたプレゼントを見て、食べられるものかどうか考えているモコタロです

 

     

      見た目はチョコレート・セットみたいだけど ハンドクリーム・セットらしいね

 

                     

 

「ハーメルンの誘拐魔」に続いて、中山七里著「アポロンの嘲笑」(集英社文庫)を読み終わりました 著者のプロフィールは昨日のブログをご参照ください

舞台は東日本大震災が起こった2011年3月の福島県です。大地震の5日後=福島第一原発の1号機が水素爆発を起こしてから4日後の3月16日と、それからの数日間を描いています

3月16日午後、福島県石川警察署に、加瀬邦彦が金城純一を殺害したという知らせが飛び込んできた 加瀬と金城はともに福島第一原発で働く親友だったが、加瀬は金城家で口論になり揉み合ううちに純一を包丁で刺してしまったとを認めている 刑事課の仁科は加瀬を確保し署に戻るため車に乗り込んだ。その時、大震災の余震が起き、加瀬は車から逃走する なぜ彼は犯行を認めながら逃走を図ったのか? 仁科はその疑問を解くため、加瀬の生い立ちを調べる一方 彼の行方を追究する。一方、公安警察が 殺された金城と加瀬の行動を探っていた やがて加瀬がある場所を目指して逃走していることが分かる。加瀬はどんな目的でその場所に行こうとしているのか? なぜ公安が動いているのか? そもそも「アポロンの嘲笑」とは何を意味しているのか。最後に予想外の真相が明らかになる

 

     

 

この作品は、「小説すばる」の2013年5月号から翌年の3月号にかけて連載され、同年9月に単行本として刊行されました つまり、大震災と原発事故の2年あまり後から3年後にかけて書かれたことになります

この文庫本の「解説」を村上貴史氏が次のように書き出しています

「グラスにウィスキーをストレートで注ぎ、そこに1滴の水を落とす。すると、味も香りも豊かに開く。この小説はそんな具合に豊かな一冊だ」

この文章を読んで、思わず唸りました 東日本大震災と その後の福島第一原発事故という現実に起きた事象(ストレート・ウィスキー)を下地に、まったく異なる要素(1滴の水)を加えて極上のエンターテインメント小説に仕上げた小説だ、ということを表現しています その「1滴の水」が何なのかは物語の中盤になって明らかになります。そこで、なぜ公安警察が登場したのかが分かるようになっています さきにご紹介した「ハーメルンの誘拐魔」と同様、中山氏は当面する社会問題を正面から見据え、無能な為政者を告発するとともに、読んで面白い作品に仕上げています

標題の一部となっている「アポロン」は物語の終盤で次のように出てきます

「不意に邦彦はアポロンの存在を思い出す。裕未から借りたギリシャ神話の本に出てくる神々の一人だ。太陽神アポロンは同時に弓矢の神でもあった。その矢は自分を軽視し侮辱する傲岸不遜な相手に死をもたらしたという 人間はある時からアポロンを軽視したのではないか。太陽の力に代わる原子力を手に入れた瞬間、太陽神を侮辱したのではないか

つまり筆者は「太陽に代えて原子力至上主義に陥った人間が、大震災を契機に原発事故を引き起こし、右往左往するサマを嘲笑している」と皮肉っているのです

「ハーメルンの誘拐魔」を読み終わった後、すぐに読み始めましたが、一気読みでした あらためて東日本大震災を振り返るとともに、日本のエネルギー行政の在り方について思いをはせる意味でも、ご一読をお薦めします

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