10日(日)。昨日は台風11号接近の影響で珍しく涼しかったので、またしても性懲りもなく川崎まで出かけ、ミューザ川崎で昭和音楽大学のコンサートを聴きました これはフェスタサマ―ミューザの一環として開かれた公演です いつものように、チラシの束に「ほぼ日刊サマーミューザ朝刊」が挟み込まれており、8日(金)の東京ニューシティ管弦楽団のコンサートの模様が写真入りで紹介されていました
さて、この日のプログラムは①コープランド「エル・サロン・メヒコ」、②ガ―シュイン「ラプソディー・イン・ブルー、③ベルリオーズ「幻想交響曲」で、②のピアノ独奏は細川千尋、指揮は齋藤一郎です
自席は1C8列32番、センターブロック右通路側です。会場は1階席を中心に、出演学生の関係者と思われる聴衆をはじめクラシック音楽好きが詰めかけました
学生オケのメンバーが登場します。やはり女子学生が圧倒的に多く、男子学生は全体の約2割の16人ほどです オケは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、後ろにコントラバスといったオーソドックスな態勢をとります。中には学生とは思えない老けた、もとい、演奏に熟達したメンバーもチラホラ見受けられます 指揮者の斎藤一郎が上下赤の衣装で登場し聴衆をア~ッと驚かせます 数十年前にテレビで一世を風靡した青春ドラマ「これが青春だ!」に出てくる”ジャージ姿”の高校教師のようです
1曲目のコープランド「エル・サロン・メヒコ」が威勢よく始まります ストラヴィンスキーほどではないにしても、変拍子が続くので相当指揮が大変そうです。コンサートのオープニングには相応しい賑やかな曲です
舞台右袖にあったスタインウェイがセンターに運ばれ、次のガーシュイン「ラプソディー・イン・ブルー」に備えます。ピアノ独奏の細川千尋が、長い髪を白のヘアバンドで束ね、白のフリルのドレスで登場します プログラムの略歴を見ると、昭和音大大学院卒で、2013年のモントルー・ジャズ・フェスティバル・ソロ・ピアノ・コンペティションで、日本人女性で初めてファイナリストになった、とありました
さて、この曲はクラリネットのソロで始まりますが、このソロが決まっていました この曲は、冒頭がうまくいくかどうかで半分は決まってしまうような曲ですが、すでに半分は成功したようなものです そして細川のピアノ・ソロが入ってきますが、これがまた、素晴らしい演奏です この曲はジャズとクラシックが融合した曲で、ピアノのソロによる演奏シーンが多いのですが、細川千尋は、いま作られたばかりの曲を初めて演奏するかのように、即興的に演奏します 耳を傾けて聴いていると、この人には”自分自身”がある、と感じます ジャズの本場アメリカのコンペで最終選考に残るには、やはり強烈な個性、自己主張がないとダメなのでしょう。この人にはセンスがあります
会場一杯の拍手に、彼女自身の作曲による「thanks」という曲を演奏しました 「私をここまで育ててくれてありがとう。応援してくれてありがとう」という彼女の気持ちが込められた清々しくて良い曲でした ホソカワ・チヒロというピアニストを記憶しておこうと思います
休憩後は、ベルリオーズの「幻想交響曲」です。斎藤一郎は前半に着ていた赤の”ジャージ”を脱ぎ捨て、黒のタキシードで登場します 赤の衣装のまま出てくると思ったのは幻想でした(あっ、座布団を投げないでください。ここは国技館ではありません)。
この曲でもクラリネットが活躍しましたが、トランペットも良かったし、フルートも良かったし、打楽器の皆さんも良かったと思います 私はこの曲では第2楽章の「舞踏会」が大好きで、聴きながら足で拍子をとっていました それは演奏が素晴らしかったからです。そして、第3楽章の「野辺の風景」のイングリッシュホルンと、舞台裏のオーボエとの会話も素晴らしかったですね さらに第4楽章の「断頭台への行進」は、ファゴットが堪らなく良かったです 弦楽器の皆さんも力強い演奏で良かったですよ。あらためて、この日出演された昭和音楽大学の学生の皆さんに大きな拍手を送ります
学生オーケストラを聴いていていつも思うのは、「今は学生という立場を謳歌して楽しい毎日かも知れないけれど、卒業したらどうするのだろう」ということです。私にも大学生の息子がいるので(理科系ですが)、他人事ながら心配になります 卒業して大学院に進む人もいるでしょう。海外の音楽大学に留学する人もいるかもしれない。あるいは運よく音楽の先生になれる人もいるかもしれない しかし、オーケストラの団員になったり、すぐにソリストとして活躍できる人はいないのではないか、これは昭和音大に限った話ではない、と率直に思います
学生たちの親御さんの立場に立ってみれば、子どもの頃から音楽教室に通わせ、さらに音楽高校、音楽大学まで通わせ、持てる財力をすべて子供に注ぎ込んだあげく、卒業後の将来は何も保証されていない これほど投資効率の悪い子育てはありませんよね。それでも学生本人は好きでやっているのですから、途中で止めろと言う訳にもいきません いったいどうしたら良いのでしょう。日本は本当に文化国家なのでしょうか そういう疑問を抱きつつも、toraはこれからも音大生とご家族の皆さんを応援します
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