人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

エルデーディ弦楽四重奏団でモーツアルト「弦楽四重奏曲第22番」、ベートーヴェン「弦楽四重奏曲第11番”セリオーソ”」他を聴く / 「音楽の力」は恥ずべき言葉~坂本龍一氏の主張

2020年02月03日 07時19分41秒 | 日記

3日(月)。わが家に来てから今日で1952日目を迎え、トランプ政権は1月31日、対人地雷の使用を朝鮮半島だけに限るとした オバマ前政権が決めた方針を撤回したため、今後はどこでも対人地雷が使えるようになる いうニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     どこまでも世界を悪い方向に牽引しようとするトランプ政権は いずれ地雷を踏む

     

         

 

昨日の朝日新聞 文化・文芸欄に「『音楽の力』は恥ずべき言葉 坂本龍一、東北ユースオケ公演を前に」という見出しの記事が載っていました 超訳すると、

坂本龍一は被災3県の子どもたちから成る『東北ユースオーケストラ』を結成、2014年に音楽監督に就任して以来、演奏会を定期的に開いてきた その坂本が、「『音楽の力』は一番嫌いな言葉だ」と言う 「ニューヨークが同時多発テロで緊張状態にあった時、音楽に癒されたことはある しかし、『この音楽には、絶対的に癒やしの力がある』みたいな物理的なものではない。音楽を使ってとか、音楽の社会利用、政治利用は本当に嫌いだ」と語る。なぜそうした考えに至ったのか訊くと、坂本は、ナチスドイツがワーグナーの音楽をプロパガンダに利用し、ユダヤ人を迫害した歴史を挙げた 「当時を経験していないのにトラウマでね。音楽には暗黒の力がある。ダークフォースを使ってはいけないと子どもの頃から戒めていた」と語る。「災害後によく『音楽の力』という言葉が聞かれるが、テレビなどで目にすると、大変不愉快だ。音楽に限らずスポーツもそうだ。プレーする側は『勇気を与えたい』とか言っている。少年たちも大人の真似をして『勇気を与えたい』とか言っている。恥ずべきことで悲しい 音楽の感動というのは、基本的に個人個人の誤解だ。感動するかしないかは、勝手なこと。ある時にある音楽と出会って気持ちが和んでも、同じ曲を別の時に聴いて気持ちが動かないことはある 音楽に何か力があるのではない。音楽を作る側がそういう力を及ぼしてやろうと思って作るのは、言語道断でおこがましい」と主張する。では坂本は何のために音楽を奏でるのか訊くと、「好きだからやっているだけ 一緒に聴いて楽しんでくれる人がいれば楽しいが、極端に言えば、一人きりでもやっている」という答えが返ってきた

坂本氏の発言の中にある「ある時にある音楽と出会って気持ちが和んでも、同じ曲を別の時に聴いて気持ちが動かないことはある 音楽に何か力があるのではない」というのは、その通りだと思います 以前、このブログにも書いたことがありますが、私は 音楽をはじめとする芸術は「それが無くても生きていける」もので、実は何の役にも立っていないものだと思っています その「何の役にも立っていない」ものに貴重な時間と なけなしのお金をかけて全精力を注ぐことこそ 最も尊い 生き甲斐であるとも思っています 坂本氏が「好きだから音楽活動をやっている」ように、私は「好きだからコンサートに行き、映画を観、本を読んで」います そういう意味では、坂本氏の主張はよく分かります さて、あなたはどうお考えでしょうか

 

         

 

昨日、晴海の第一生命ホールでエルデーディ弦楽四重奏団のコンサートを聴きました    プログラムは①ドホナーニ「弦楽四重奏曲 第3番 イ短調 作品33」、②モーツアルト「弦楽四重奏曲 第22番 変ロ長調 K.589 ”プロイセン王第2番” 」、③ベートーヴェン「弦楽四重奏曲 第11番 ヘ短調 作品95”セリオーソ” 」です

エルデーディ弦楽四重奏団は1989年に東京藝大出身者により結成されたクァルテットで、メンバーは第1ヴァイオリン=蒲生克郷、第2ヴァイオリン=花崎淳生、ヴィオラ=桐山健志、チェロ=花崎薫です。このうち花崎夫妻は、薫氏が大阪フィルの首席チェロ奏者を、淳生さんが古典四重奏団のヴァイオリン奏者を務めています

 

     

 

自席は1階6列25番、右ブロック左通路側です。会場は6割程度の入りでしょうか。テレビ収録があるようで、カメラとマイクが設置されていました

1曲目はドホナーニ「弦楽四重奏曲 第3番 イ短調 作品33」です この曲は、ハンガリー出身のエルンスト・フォン・ドホナーニ(1877-1960)が1926年に作曲した作品です 第1楽章「アレグロ・アジタート・エ・アパッシオナート」、第2楽章「アンダンテ・レリジオーソ・コン・ヴァリアツィオー二」、第3楽章「ヴィヴァーチェ・ジョコーソ」の3楽章から成ります

この曲は初めて聴きますが、同年代に同郷のハンガリーで活躍したバルトーク(1881年生まれ)やコダーイ(1882年生まれ)とは曲想が全く異なり、ブラームスの流れを受け継ぐ後期ロマン派の印象を受けます 3楽章の中では第1楽章が長大です。私は第3楽章がアイロニカルで面白く聴けました

 

     

 

休憩後の1曲目はモーツアルト「弦楽四重奏曲 第22番 変ロ長調 K.589 ”プロイセン王第2番” 」です この曲はウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756‐1791)が1789年から1790年にプロイセン王フリードリヒ・ヴィルヘルム2世のために作曲した3曲の弦楽四重奏曲のうちの1曲です 王がチェロの名手だったことからチェロのパートが活躍するように書かれています 第1楽章「アレグロ」、第2楽章「ラルゲット」、第3楽章「メヌエット:モデラート」、第4楽章「アレグロ・アッサイ」の4楽章から成ります 

蒲生氏がプログラム・ノートを書いていますが、この作品はモーツアルトの弦楽四重奏曲の中で唯一「ラルゲット」(やや遅く)という表示記号を使用しています 通常は「アンダンテ」(歩くような速さで)を使うところです この楽章はゆったりしたチェロの独奏から始まるので、チェロを歌わせることを意識して「ラルゲット」のテンポを指定したのでしょうか 花崎薫氏のチェロが美演でした

超ベテランぞろいということもあってか、全曲を通して 落ち着いた優美な演奏が聴けました

モーツアルトの「プロイセン王」セットというと、私はプロイセン王第1番(弦楽四重奏曲第21番K.575)が好きで、ヴェラー弦楽四重奏団のLP(1966年録音)が愛聴盤でした これはCD化されたので現在はCDで聴いています 第1楽章「アレグレット」の冒頭を聴いてすっかり虜になりました

 

     

 

最後の曲はベートーヴェン「弦楽四重奏曲 第11番 ヘ短調 作品95”セリオーソ” 」です この曲はルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)が1810年に作曲、1814年にウィーンで初演されました 第1楽章「アレグロ・コン・ブリオ」、第2楽章「アレグレット・マ・ノン・トロッポ」、第3楽章「アレグロ・アッサイ・ヴィヴァーチェ・マ・セリオーソ」、第4楽章「ラルゲット・エスプレッシーヴォ~アレグレット・アジタート」の4楽章から成ります 「セリオーソ」(厳粛な)というのはベートーヴェン自身が命名したものですが、出版に際して外されました なお第3楽章には「セリオーソ」の表記があります。この曲は、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の中で最も演奏時間が短い作品ですが、それだけにベートーヴェンの魅力が凝縮されています

4人の演奏で第1楽章に入りますが、冒頭の緊張感に満ちた音楽こそ「セリオーソ」ではないか、と感じます また、第4楽章のフィナーレでは、取ってつけた様な明るいメロディーが疾走しますが、いつ聴いても「セリオーソ」には合わないと思ってしまいます

4人の演奏は誰かが突出することなく落ち着いて聴けます アンコールにモーツアルト「弦楽四重奏曲第23番ヘ長調K.590"プロイセン王第3番」の第3楽章「メヌエット(アレグレット)」を演奏し、大きな拍手の中、コンサートを締めくくりました

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「男はつらいよ 50 お帰り ... | トップ | 「寅さんの人生語録・改」を... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (soprano-motoko)
2020-02-03 08:55:25
モコタロちゃんへ
おはようございます。今日のコメント、いいですね。「いいね」押しました。

toraさまへ
おはようございます。同感です。
熊本地震の時に、電気の復旧は早くて助かりました。
電気の力がありがたかったです。携帯電話の充電とか今は電気がないと困ります。
お水が暫くなくて、ガスは復旧に一番時間がかかりました。

お風呂の情報とか県外の方から頂いたけど、ちっとも嬉しくなかったです。
お風呂に入りに行っている間に地震が来たら困るし、移動に時間やガソリンが要ります。生きるか死ぬかの時に、お風呂なんてどうでもいいです。

熊本出身の音楽家の方が復興の演奏されて、「熊本城がくずれるのを見て悲しかった」と言われたけど、熊本城より「自宅がなくなった」「自宅にいられないから避難所にいるのに」と思いました。
そういう被災者の気持ちが分からずに演奏されても嬉しくなかったです。
被災した時は、音楽よりもお水や食べ物の方が嬉しかったです。
返信する
音楽の力 (tora)
2020-02-03 13:18:33
motokoさま コメントありがとうございました。
モコタロが「いいね」をありがとう、と言っておりました。動画第3弾はしばらくお待ちいただきたいそうです。
コメントは、働きながらソプラノ歌手としてご活躍されているmotokoさんの、被災者の視点からの貴重なご意見だと思います。
motokoさんのご指摘のとおり、災害に遭ったら、まず第一に必要なのは食糧であり、水道、ガス、電気です。心に余裕のない時に音楽は人の心に届きません。
音楽家の方々が「音楽家として何かできないか」と考えることは貴重で、素晴らしいことだと思います。その時に考えたいのは、コンサートを開くことではなく、一市民として水や食料を届けたり、ボランティアとして復旧活動に貢献したりすることではないでしょうか
返信する

コメントを投稿

日記」カテゴリの最新記事