30日(木)。わが家に来てから33日目を迎えたモコタロです
”押し倒し”でおいらの勝ちだぜ! ン? 寄り倒し?
閑話休題
昨夕、NHKホールでズービン・メータ指揮イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートを聴きました これは「NHK音楽祭2014」の一環として挙行されたものです。プログラムは①シューベルト「交響曲第6番ハ長調」、②マーラー「交響曲第5番嬰ハ短調」です
自席は2階C10-6番、センターブロック左通路側席です。会場は9割方埋まっている感じです 公演に先立って、奥田佳道氏によるプレ・トークがありました
「指揮者のズービン・メータは今年78歳を迎えました。本日指揮するイスラエル・フィルも創立78年を迎えます イスラエル・フィルの前身であるパレスチナ交響楽団が誕生したのは1936年でした。本日の演奏曲目はシューベルトの交響曲第6番とマーラーの交響曲第5番ですが、シューベルトの方は、名曲にも関わらず演奏会で滅多に取り上げられません シューベルトが20~21歳の時に作曲されましたが、その頃、尊敬するベートーヴェンは現役のバリバリでした。また、イタリアのロッシーニが人気を博している時代でもありました この第6番にはベートーベンとロッシーニの影響が垣間見られます。さて、それはどの部分でしょうか。お聴きになってご判断ください 一方、マーラーの第5番は、本日のメイン・プログラムです 第4楽章『アダージェット』はヴィスコンティ監督の映画『ヴェニスに死す』で全編を通して流れていました ”世界一の弦”と評価されるイスラエル・フィルの魅力が十分生かされる演奏になると思います。5つの楽章から成りますが、マーラーは第1・第2楽章を第1部、第3楽章を第2部、第4・第5楽章を第3部として書きました。第1楽章冒頭でトランペットを吹くのはメルターさんです。また第3楽章でホルンの独奏をするのはコックスさんです。彼はヨーロッパ各地で開かれる演奏会ではひっぱりだこの人です それではお楽しみください」
ステージの客席側には端から端まで色とりどりの生花が飾られています まるでウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートのようです。ステージの左右、会場のそこかしこにテレビカメラがスタンバイしています 大きな拍手の中、オケのメンバーが登場します。態勢は左奥にコントラバス、前に第1ヴァイオリン、右にチェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対向配置をとります。弦楽器に日本人らしき女性が2~3人見受けられます。プログラムに掲載されているメンバー表には日本人の名前はないので客員奏者でしょう
シューベルトの交響曲第6番は数年前にスダーン指揮東京交響楽団で聴いて以来ですが、ここ数日はナクソスのCDで予習しておいたので、メロディーはかろうじて頭に入っています メータがゆったりとした足取りで指揮台に向かいます。タクトが振られ第1楽章が始まります。この楽章はハイドン風とでも言いましょうか。シューベルト特有の同じメロディーが執拗に繰り返されます ”弦のイスラエル~”と言われ、もちろん弦楽器の音色は美しいのですが、フルートもオーボエも素晴らしい演奏をします ”弦”だけではありません。第3楽章「スケルツォ」は極めてベートーヴェン風だと感じました 最後の第4楽章は前半がややロッシーニ風だと思いました プレ・トークの解説の通り、シューベルトは当時の先端を行く作曲家たちから影響を受けているようです メータは楽章間は、あまり間を置かず、次に進めます。緊張感を持続するためでしょう
演奏が終わると、私の席の後方で「ボー!」の掛け声が聞こえました。間違いなく東京交響楽団サントリー定期で私の後方席の中年男性会員です 「ブラボー」の「ボー」しか聴こえないので、私は彼のことを「ノーブラの某さん」と呼んでいます。休憩時間に顔を確認しました 私が行くコンサートで時々お見受けします。嗜好が似ているのかも知れません
休憩後は、待ちに待ったマーラーの交響曲第5番です。メンバーが拡大してフル・オーケストラになっています コンマスが代わりました。メータが登場し、トランペットに合図を送ります。メルター氏が”葬送のテーマ”を高らかに奏で、大交響曲の始まりを告げます このトランペットは非常に安定感があります。第2楽章ではうねる様な弦が印象的です 第3楽章はさながらホルン協奏曲です。冒頭からコックスのホルンが会場の隅々まで響き渡ります この人は相当肺活量があるのではないか、と思います。並みのホルン奏者が3人かかっても負けないかも知れません
そして、”弦のイスラエル・フィル”の腕の見せ所、第4楽章「アダージェット」に入ります。冒頭は聴こえるか聴こえないかという微かな弦の響きが立ち上がり、美しいハープが加わります。何と深みのある美しい響きでしょうか この美しいメロディーを聴きながら、以前(相当昔)ここNHKホールでロシアの巨匠スヴェトラーノフ(故人)がN響を指揮してこの曲を演奏した時のことを思い出しました 第4楽章が始まるのとほぼ同時に会場右側の客席の上空から白い蝶が飛んできて、ステージ右サイドのチェロ側の上空を飛び、管楽器の上空を横切り、第1ヴァイオリンの方に移動していきました。驚いたことに、この楽章が終わるとほぼ同時にステージから客席の方に戻ってきて、どこへとなく消えていったのです 指揮をしていたスヴェトラーノフは気が付かなかったでしょうが、楽員たちは上空を見上げていました。あの蝶々は何だったのでしょうか?きっと長調だったのでしょうね
第4楽章が静かに収束しようとするとき、静寂を破ってホルンが第5楽章の幕開けを告げます この楽章を聴くとマーラーが語ったと言われている「やがて私の時代が来る」という言葉を思い起こします 勇壮で奇想天外で予測不能な音楽を聴いていると、「そう、あなたの時代が来た」と叫びたくなります。マーラーの音楽にはすべてがある。混迷の時代こそマーラーは聴かれる音楽だ
第5楽章がフィナーレを迎え、最後の音が鳴り終ると会場割れんばかりのブラボーと拍手 がステージに押し寄せました。メータはトランペットとホルンを真っ先に立たせ、ついで他の管楽器奏者を立たせます。そして弦楽器の首席と握手をしますが、なぜか第1ヴァイオリンの2人の首席とは握手をしません これは何か訳があるに違いない、と思って拍手をしていると、4回目のカーテンコールでメータはタクトを持って登場しました。これはアンコールの合図です 客席に向かってヒンズー語訛り(メータはインド出身)の英語でアンコール曲を紹介し演奏に入ります。曲はマスカー二のオペラ「カヴェレリア・ルスティカーナ」から間奏曲です。この曲は弦楽器の魅力がたっぷり味わえる曲です。これほど芳醇な演奏を聴いたことはありません。これぞ世界一の弦楽でしょう 会場が興奮の坩堝の中、メータはここで初めて第1ヴァイオリン首席二人と握手をしました。これ以上アンコールはありません、という合図です
この日のコンサートは10月31日(金)午後7時30分からFM「NHK音楽祭」で、11月16日(日)午後9時からEテレ「クラシック音楽館」で放送されます。是非お楽しみください
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