人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

東京藝大学生オーケストラでショスタコーヴィチの「第5交響曲」を聴く

2012年05月25日 06時38分06秒 | 日記

25日(金)。昨夕、東京藝大奏楽堂で東京芸術大学・学生オーケストラによる第46回定期演奏会を聴くため上野に行きました 上野駅の公園口を出て,東京文化会館のわきの道を通り抜け,噴水広場に出ると随分景色が様変わりしていました パークサイド・カフェとスターバックスが広場を鋏むように店を構えています 噴水も威勢よく吹き上がっていました

会場の東京芸術大学の構内にある奏楽堂に着くと,全自由席とあって長蛇の列が出来ていました それでも,後方ながら1階23列25番の通路側席が取れました 会場は8~9割の入りといったところ.学生オーケストラの演奏ということもあって,若い聴衆が多いようです.コンマスは女子学生です

この日のプログラムは①モーツアルト「交響曲第32番ト長調K.318」、②ハイドン「トランペット協奏曲変ホ長調」、③ショスタコーヴィチ「交響曲第5番ニ短調”革命”」の3曲。指揮は尾高忠明(東京芸大教授)。トランペットは東京芸大准教授の栃本浩規です.

 

                    

 

1曲目のモーツアルト「交響曲第32番ト長調K.318」はマンハイムーパリの大旅行からザルツブルクに帰ってきた後の1779年4月26日に完成しました

尾高忠明のタクトが振り下ろされ,威勢のいい音楽が奏でられます 3つの楽章が切れ目なく演奏されますが,明らかにオペラの序曲と思われる曲想です.尾高は”これぞモーツアルト”という適切なテンポで音楽を進めます

この曲が終わり,管楽器を中心にメンバーの入れ替えがあったとき,会場の3列目位の天上から吊るされた集音マイクが左右に大きく揺れました.さては地震か と思ったのですが,足元に揺れは感じません.この奏楽堂は残響時間を調整するため天上の上げ下げを調節できるようになっています.その操作をやったのかも知れません

2曲目のハイドンのトランペット協奏曲は,1796年にトランペット奏者アントン・ヴァイディンガーのために作曲したもので,1800年3月28日に,彼のソロで初演されました トランペット協奏曲と言えばハイドンと言われるほどの”代名詞的”な曲です

トランペットのソロを吹く栃本浩規は東京フィル,NHK交響楽団などで活躍した人で,今年4月から東京芸大准教授に就任しました

この曲も軽快なテンポで開始され,トランペットが気持ちよさそうにメロディーを奏でます 第2楽章の途中,やや不安定な部分もありましたが,細かいところは抜きにして十分楽しませてもらいました

ショスタコーヴィチは,1936年に共産党機関紙「プラウダ」紙上で「ブルジョワ的,形式主義的だ」,「芸術は社会主義リアリズムに沿って作らなければならない」と批判されます 彼は翌年,「苦悩を克服して歓喜へ至る」というベートーヴェン的な伝統に則った曲想により第5交響曲を作曲します.大衆に分かりやすい音楽により彼は名誉挽回をはかります

尾高のタクトにより第1楽章冒頭,低弦の唸りが響き渡ります.チェロ,コントラバスセクションは底力があります 第2楽章の冒頭でもその能力が発揮されます.管楽器も素晴らしいパフォーマンスです

私は3人の奏者に注目してトライアングルを描くように観ていました まず,髪をポニーテールにしているコンマス,メンバー表によると石田紗樹さん.第2楽章のソロが冴えていました 次はチェロの首席の女性.この人もポニーテールです.指揮者の真ん前に座って演奏しているので自然に目に入ります.安定感があり表情も豊かです もう一人は一番後ろの真ん中で構えるティンパ二の女性です.とくに第4楽章フィナーレの連打は”見もの聴きもの”でした.立ち上がると背丈は低いのですが,その演奏は胸がすくような気持ちの良いものでした

かつて,宇宿允人(うすきまさと)が存命中,フロイデ・フィルを率いていましたが,ティンパ二は斉藤さんという女性でした.この人の演奏を観て聴いてから,「ティンパには女性の方が断然いい」と思うようになりました

尾高は学生オーケストラの潜在能力を最大限に引き出して,聴衆に作曲家のメッセージを伝えてくれました 素晴らしい指揮者です.彼は新国立劇場のオペラ部門の芸術監督を務めていますが,人間的にも素晴らしい人だと思います

この日の演奏会は大成功でした.曲の魅力もありますが,何より演奏が素晴らしかったです これで入場料1,500円です.信じられないほどコスト・パフォーマンスが高いコンサートです.学生オーケストラを馬鹿にしてはいけません.プロではない彼らは真摯に楽譜に向き合います.機会があれば,是非また聴きに出かけたいと思います         

6月~7月の間,東京芸大のコンサートは次のようなものがあります.良い音楽を割安で聴くチャンスです.お薦めします

(1)6月21日(木)19時開演.芸大フィルハーモニア演奏会①ラフマニノフ「パガニーニの主題による変奏曲」,②同「交響曲第2番」尾高忠明指揮.江口玲ピアノ.全自由席3,000円.

 

                    

 

(2)6月30日(土)15時開演.芸大チェンバーオーケストラ演奏会①バッハ「ブランデンブルク協奏曲第3番」,②同「2つのヴァイオリンのための協奏曲」,③メンデルスゾーン「弦楽のための交響曲第9番」,スーク「弦楽のためのセレナード」.ヴァイオリン独奏:玉井菜採,松原勝也.全自由席1,500円.

 

                    

 

(3)7月5日(木)19時開演.芸大ウインドオーケストラ公演①ワーグナー「タンホイザー序曲」,②ウェーバー「クラリネット協奏曲第2番」ほか.クラリネット:ベルリンフィル首席クラリネット奏者・フックス.入場無料.

 

          

 

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