「ネタ帳の薄さは、知識の薄さ」と大先輩たちはいう。
そんな大先輩たちのネタ帳は、ネタが書かれたルーズリーフ紙がファイルの留め具のリングからはみ出して、
留められないくらいパンッパンになっている。
(ネタが多すぎて)「あ~あ、またリングが壊れちゃった」
その一言に憧れたものだった。
ネタ帳は、バスガイドにとってとても大事なもの。
ちなみに、私は今では使わなくなったネタ帳も、1冊も捨てないで大切に保管してある。
それくらい努力して、思い入れて作った、自分だけのネタ帳。とても大事なものだ。
このネタ帳には、暗黙の御法度がある。
自社のガイドどうしで、気の知れた先輩や同僚の間では
ネタ帳を見せ合ったりすることはあったが、
けして他社ガイドに見せてはいけないというきまりだ。
それゆえに、他社のガイドがどんなネタでご案内しているのか
ちょっと気になったり、ネタ帳を見てみたいと思ったりしてしまうが
誰も見たことはないだろう。
当時の私は、栃木県への乗務が多かったので、栃木のネタ帳は
他の県に比べて、ほんの少しだけ厚くなっていた。
””最小の努力(準備量)で、最大の効果(お客さま満足度)をあげる””
これが、当時の私の一番大切にしていたモットー。
だから、ネタ帳が厚くなることはほぼない。
鬼怒川温泉の旅館での宿泊。
その日、私の忘れ物癖のせいである事件が勃発。
旅館で朝を迎えて、ドライバーと朝食後、バスへ向かい出発の準備。
準備が終わると、旅館のロビーで、お客さまを待ちながら、「今日は何をご案内しようかなぁ」とか
「最初に行く滝の高さは何メートルだったかな」などの数字や年号、
細かい部分をコーヒーを飲みながら、自分のネタ帳でチェック。
飲み終わって、バスに向かう前に、お手洗いを済ませる。
同じ出発時間の他社のガイドさんも同じ行動なので、お手洗いで一緒なり「おはようございます!」「今日はどこですか?」なんて雑談しながら、隣の鏡でメイク直し。
いつもと同じ、宿泊乗務2日目爽やかな快晴!
放射冷却のせいかなぁ・・・冷たい空気がここちよい朝だった。
さぁ、今日もがんばろ!気合を入れてバスに戻る。
あら?あれ?
ネタ帳がいつの間にか手から離れて無くなっている!!
あ!お手洗いに忘れた。鏡の前にネタ帳を置いてメイクを直したことを鮮明に思い出し
出発時間ぎりぎり、急いでロビー脇のお手洗いの鏡の前へ。その間約5分。
ない(@_@。ネタ帳がない。。。
やられた(涙)
時すでに遅し・・・
一緒にメイクを直したガイドさんを乗せたバスの後ろ姿を見送った私。
つづく・・・・