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今日の筆洗

2022年05月12日 | Weblog

フィリピンで独裁体制を築いたマルコス政権が倒れた一九八六年の革命。八三年にマニラ空港で起きた民主派指導者アキノ氏暗殺への人々の怒りが下地となった▼亡命先の米国から戻り、航空機を降りた直後に凶弾に倒れたが、日本などの同行記者が機内にいた。タラップに向かうアキノ氏の姿や機外に出た後の銃声をとらえた映像を分析し、事件の謎に迫ったTBSの番組『報道特集』のコピーのテープがフィリピンに出回った。英語の吹き替え版も登場し、秘密上映会も開かれたという▼八六年の革命では、政権に反旗を翻した軍の部隊がテレビ局を占拠し、独自の放送が始まった。街頭で政権打倒を叫んだ人々の姿は各国に中継された▼テレビ時代の革命から三十六年。先の大統領選でマルコス氏の長男が勝った。交流サイト(SNS)を武器に戦ったという▼父の治世の経済成長や治安を美化するメッセージを発信。人権弾圧は「反対派の捏造(ねつぞう)」といった情報も飛び交い、当時を知らない若い世代に支持が広がった。不利な質問から逃れるためか、テレビのインタビューや候補者討論会は避けた▼マルコス氏の長男は現職ドゥテルテ氏の路線を継ぐという。司法手続きを経ない殺害もいとわぬ強権的麻薬犯罪対策は庶民に支持されたが、批判した放送局の電波は止められた。自由を求めた革命の記憶は風化してゆくのだろうか。