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今日の筆洗

2021年07月07日 | Weblog
 一九六〇年、最後の四割打者テッド・ウィリアムズ(レッドソックス)の引退試合での話である。八回裏、ウィリアムズが本塁打をかっ飛ばす。ファンは大喜びだが、ウィリアムズはうつむいたままホームイン。観客の声援や拍手を無視した▼この出来事についてウィリアムズのファンだった作家ジョン・アップダイクはこう書いた。「神とはファンからの手紙に返事など書かないものだ」。それでいいのだと▼その選手を子どものころから見てきた。やはり観客の声援に愛想良く手を振るタイプではなかったが、それを補って余りある魅力的な打撃と、勝利への熱があった。中日ドラゴンズのかつての強打者、大島康徳さんが亡くなった。七十歳▼豪快なスイングに加え、追い込まれれば右へおっつける打撃もできた。ただのがむしゃらな選手ではない。だからわれわれは期待した。モッカ、谷沢が倒れても大島がいる。一九八二年シーズンの最終盤、巨人との首位決戦で角投手から放った渋いサヨナラ打が忘れられない▼家がたまたま近くで犬の話をよくさせていただいた。野球の話は遠慮した。アップダイクと同じでその会話は畏れ多かった▼がんで余命一年と宣告されながら五年。一発逆転をあきらめない打席と納得できぬ判定に対し審判にしつこく食い下がる姿が浮かぶ。外野スタンドから大声を上げる。ナイスファイト。