朝日新聞より 東京新聞埼玉版より
「いま一番タイムマシンに近いのは、カラオケだと思う」。なにかの広告のキャッチコピーだったと思うが、なるほどそうかもしれない。歌えば、その曲が流行した当時の出来事、学校や家族の様子まで思い出せる。さながら懐かしい時間へとさかのぼるタイムマシンである▼カラオケもこのコロナ禍ではなかなか楽しめないご時世だが、なにも歌わずとも聴いているだけでその効果は十分にある。この曲も聴けば、高度成長期の日本へ連れていってくれそうだ。<森と泉にかこまれて>▼一九六七年の大ヒット曲「ブルー・シャトウ」。歌はもちろんグループサウンズの先駆者「ジャッキー吉川とブルー・コメッツ」。リーダーのジャッキー吉川さんが亡くなった。八十一歳▼バックバンド専門だったブルコメが自ら歌うようになったのはある歌手が地方公演に遅刻、代わりに、しかたなく歌ったところ、評判になったのがきっかけと聞く▼スパイダースの「フリフリ」(六五年)とともにグループサウンズの起源とされる「青い瞳」(六六年)はジャッキーさんによる「ダッタタターン」というドラムから始まる。あの迫力あるドラムもやはり今の日本のロックにつながる音の一つである▼ブルコメを聴き、気の重い「今」の時間から遠ざかる。<森トンカツ、泉ニンニク>。しつこく歌い、家族にいやがられたことも思いだした。