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今日の筆洗

2016年12月25日 | Weblog

 明治期、サンタクロースの当て字が「三太九郎」だったと聞いて苦笑する半面、その命名センスにちょっと感心もする。第一、覚えやすい。子どもに受け入れやすい軽妙な名が陽気でおおらかな、その人物の印象まで表現しているようだ▼この当て字もその特徴を表している。「風炎(ふうえん)」。そのまま読めばよい。山を越え、平地へと吹き下ろす乾燥した高温の風。もとは、ドイツ語の「フェーン」。フェーン現象のそれである。気象学者で中央気象台長も務めた岡田武松(一八七四~一九五六年)がその字を当てた▼高温の風だから、「炎」なのだろうが、その風が忌まわしい「炎」を呼んだ原因という。新潟県糸魚川市中心部の大火である。心からお見舞い申し上げる▼鎮火まで約三十時間。延焼は百五十棟、約四万平方メートルに及んだ。フェーン現象による強い南風が木造住宅の密集地に炎を広げてしまった。地元の消防力では限界もあっただろう。「空襲のようだった」。恐怖の声も痛々しい▼わが家や家族だんらんの安らぎがとりわけ恋しい年の瀬である。そこに家を失い、ぼうぜんとする人がいる▼<寝られずやかたへ冷えゆく北下(おろ)し>向井去来。「北おろし」とはフェーンではなく山から吹き下ろす北風のことだが、被災した人の肩や体、心まで冷え込んでしまうことを心配する。支援、応援の温かい「風援」に期待したい。